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3つのギリシア悲劇を再構成し、一つの国が没落していく姿を描いた『テーバイ』を上演 船岩祐太(構成・上演台本・演出)のメッセージが公開

SPICE

『テーバイ』

2024年11月7日(木)~24日(日)新国立劇場 小劇場にて、2024/2025シーズン演劇『テーバイ』が上演されることがわかった。

1年間という期間の中で、参加者が話し合いや試演を重ねて作品理解を深めながら、より豊かな作品づくりをおこなっていく「こつこつプロジェクト」。この度、2021年6月から2022年2月まで行われた第二期の作品のうち、船岩祐太が構成、上演台本、演出を進めた『テーバイ』が2024/2025シーズンの演劇公演として上演されることとなった。

ソポクレスによる、知らずのうちに近親相姦と父親の殺害に手を染めたテーバイの王オイディプスの物語『オイディプス王』、テーバイを追放され放浪の途にあるオイディプスの神々との和解とその生の終幕を描いた『コロノスのオイディプス』、そしてオイディプスの娘であるアンティゴネが兄弟の埋葬をめぐり、テーバイの王・クレオンと激しく対立する『アンティゴネ』。

同じ時系列の神話をモチーフとしながらも独立したこの3作品を、船岩は「こつこつプロジェクト」の中で一つの戯曲として再構成し、現代における等身大の対話劇として創り上げた。古典と現代社会との接点を見つめ続け、単なるギリシア悲劇三作品のダイジェストではなく、オイディプスやアンティゴネに加えて、三作に共通して登場するクレオンにフォーカスすることで「国家と個人」を巡る人間ドラマへと進化。三作それぞれの作中では、一介の脇役に過ぎなかったクレオンが、なぜ王座に座り、国を亡ぼすことになったのか…。法と平和を理想に掲げる統治者が、恐怖と防衛心にさいなまれるさまを描きだす。

(上段左から)植本純米、加藤理恵、今井朋彦(下段左から)久保酎吉、池田有希子、木戸邑弥

豊かな時間をかけ、トライアンドエラーを繰り返し、作品としての強度を増していった本作。植本純米、加藤理恵、木戸邑弥ら、「こつこつプロジェクト」から参加したメンバーに加えて、今回の上演に向け、今井朋彦、久保酎吉、池田有希子ら新たなキャストも迎え、さらなる進化を遂げる。

【あらすじ】
神々はまわりまわって 結局この王座を俺にあてがった
それは神々が結局はおれのような男が統治者にふさわしいと思ったからだ
テーバイの王オイディプス(今井朋彦)は国を災いから救うべく、后イオカステ(池田有希子)の弟クレオン(植本純米)に頼り「先王ライオスを殺害した犯人を追放すること」という神託を得る。しかし、そこで明かされていく真実は、オイディプス自身がライオス王を殺した張本人であること、そして実の母親とは知らずにイオカステを后とし、子をもうけているという恐ろしい運命であった。絶望のなかでオイディプスは自らの目を突いて盲目となり、放浪の旅に出る。
オイディプス追放後、クレオンが統治するテーバイではオイディプスの息子であるエテオクレスとポリュネイケスが王権をめぐり対立、戦いへと発展してしまう。さらにポリュネイケスの埋葬をめぐりオイディプスの娘アンティゴネ(加藤理恵)とクレオンは激しく対立。法と平和を司る統治者としてクレオンは厳しい決断を迫られる…。
構成・上演台本・演出 船岩祐太からのメッセージ

船岩祐太

劇場が「上演する場所」だけでなく「創る場所」として何ができるのかを模索する「こつこつプロジェクト」。絶賛模索・展開中のこの企画の目的・意義は多様な受け止め方があるかと思います。「こつこつ」とは【地道に働くさま。たゆまず務め励むさま。】を表す言葉のようですし、長い時間をかけて何かを積み上げていく事が命名の根本にあるようですが、私はこの音の響きから雛鳥が卵の殻を少しずつ割っていく様を想起します。多様な作品の卵が上演を前提としてしまうと孵化することを躊躇っているように思いますが「まずは卵から出ておいで、その後の事は飛べるようになってから考えよう」と優しく微笑みかけてくれる懐の広い企画であるように思います。
この地味ではありながらも壮大な試みの中で「一つ、こいつを飛ばしてみるか」という事で『テーバイ』が2024/2025 シーズンのラインアップの末席に加えていただいたこと、非常に光栄に思っております。
「作り手が通常の一か月の稽古ではできないことを試し、作り、壊して、また作る場にしたい」という小川芸術監督の言葉を、額面通りに受け取り選んだ演目はソポクレスのそれぞれ独立した戯曲『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』を一本にしてしまおうという試みです。原典を手元に企画の趣旨に賛同してくれた多くの俳優たちの視点を擦り合わせながら、ああでもないこうでもないと作っては壊し、そして作ったものが今回の上演作品である『テーバイ』になります。
古典作品を題材にする喜びは現代と古典の接点の発見にあると思っているのですが、この作品を「こつこつ」している最中にも現代の方が目まぐるしく変容していきました。しかし、時代の変貌を物ともせずに変わらぬ人間の形相を照らしだすギリシア悲劇の大きさを度々目の当たりにしました。稽古場はさながら遺跡発掘現場のようで「こつこつ」と鏨をたたくハンマーの音と発見の歓声が鳴り響いていました。
試演から少し時間がたってしまいましたし、現代の方もまた大きく動いています。新しい視点を得て、観客の皆様とギリシア悲劇から透けて見える現代や変わらぬ人間の形相を共有できるのを楽しみにしています。

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