「出会ったばかりのイケメンと即ホテル」からの血まみれ逃走劇に発展!先入観ぶっ飛びスリラー『ストレンジ・ダーリン』
今年の“夏スリラー”は『ストレンジ・ダーリン』で決まり!
ガツンとぶっ飛ばされるようなスリラーが観たい? それならば、世界中で話題を呼んだ『ストレンジ・ダーリン』を逃すテはない。35mmフィルムのザラリと美しい映像で構成された中規模作品だが、なんと撮影監督を務めたのは俳優のジョヴァンニ・リビシ(『ロスト・イン・トランスレーション』や『パブリック・エネミーズ』などに出演)。一体どんな作品なのか、この時点で気になる人も多いだろう。
シリアルキラーが町を恐怖に陥れる中、モーテルの前に停まった一台の車。
中には、今夜出会ったばかりの男女の姿が。「あなたは、シリアルキラーなの?」
「まさか」一夜の過ちが、予測できない凶悪な連続殺人へのスパイラルとなっていく。
――あのスティーヴン・キングが「巧妙な傑作」と称賛したという本作だが、公式のあらすじが超ざっくりしていることからも分かるように、物語の内容に踏み込むことはできない。海外メディアでも「そんなことをしたらせっかくの作品が台無し」とか、「劇場で観る映画好きにフルボッコにされる」的なコメント(※意訳です)をするに留めているところがほとんどだ。
とはいえ今年の最注目スリラーの1本であろう本作を紹介しないわけにもいかないので、鑑賞に支障のない範囲で見所を少しピックアップしてみよう。ただし、少しでも前情報を入れずに映画館に飛び込んだほうが楽しめることは間違いないので、ここでUターンしたほうがいいかも……?
予習<非推奨>な衝撃展開! 一体何が起こっている?
まずは6つの章立てになっていることが冒頭にドドーンと示されるのだが、その始まり方からしてトリッキー。なぜか<第3章>から始まるのである。しかし、「どういうことやねん!」と心の中で突っ込むヒマもなく、2台の車が激しいチェイスを繰り広げる。
逃げる女性は必死だが、追う男性はなんだか正気ではない様子。囚人服か病衣か、真っ赤なセットアップ姿の女性は森の中を逃げ惑うも、かなり負傷しているようで痛々しい。這々の体で老夫婦が暮らす民家に逃げ込んだところで第4章……をスキップして、なぜか<第5章>に!
あえて時系列をバラバラにすることで観客は混乱する以前に、一体なにが起こっているのか興味津々で目が離せなくなる。もちろん安直なシャッフルなどではなく計算された構成で、フィルムならではの彩度高めのパキッと美しい画作りもあっての効果。俳優たちの演技力によるところも大きく、凡百のインディー・スリラーではないことはすぐに分かる。
ここからどんどんヤバい展開に転がっていくのだが、そのヤバさの方向が予想を大きく上回る場外ホームラン級なので、今度は面食らって口ポカーンな状態に。「え? え?」とテンパっているあいだにも物語はどんどん転がり続け、まるで映画を観始める前までの自分が他人のように思えてくるというか、先入観の恐ろしさを身をもって体験することになる。
ウィラ・フィッツジェラルドの熱演に拍手!あの人気ドラマにも出演
さて気になるキャストだが、スリラーが苦手でも海外ドラマが好きならば主演のウィラ・フィッツジェラルドには見覚えがあるだろう。『救命医ハンク セレブ診療ファイル(ロイヤルペインズ 〜救命医ハンク〜)』(2014年)の終盤シーズンに出ていたし、最近では『ジャック・リーチャー ~正義のアウトロー~』(2022年)のシーズン1で準主役の警官役を演じていた、ベソかきフェイスがデフォルトの実力派だ。そして追う男を演じたカイル・ガルナーも様々なドラマ作品のほか、リメイク版『エルム街の悪夢』や2022年版『スクリーム』などに出演している不穏フェイスの持ち主である。
なにはともあれ監督のJT・モルナーは、本作で世界中にその名を知らしめただろう。いかにも斬新な設定! というわけではないのに、ちょっとした“反転”のアイデアによって、スター俳優も大規模セットもない低予算のスリラーを超一級のエンタメ作品に、それも退屈する瞬間がビタイチ無い傑作に仕上げてみせたのだから。そんな本作の制作に至る過程やジョヴァンニ・リビシが参加したいきさつなどについては、公式サイトのプロダクションノートをぜひ確認しよう。
35mmフィルムのぼんやりザラリと美しい映像のおかげで白昼夢を見たような感覚に陥る、そして暑気払いにも最適なスカッと恐ろしい『ストレンジ・ダーリン』は、7月11日(金)より全国公開。