鈴木農政、1ヶ月。小泉農政とどう違うのか
ニュースキャスターの長野智子がパーソナリティを務める「長野智子アップデート」(文化放送・月曜日15時~17時、火~金曜日15時~17時35分)、11月27日の放送にノンフィクション作家の常井健一が出演した。「鈴木農政、1ヶ月」をテーマに、小泉進次郎氏のあとを受けた鈴木憲和農水大臣の1ヶ月間を振り返った。
長野智子「まず鈴木憲和大臣はどのようなタイプの政治家なんでしょうか?」
常井健一「一言でいうと『小泉進次郎さんと真逆』のタイプです。小泉さんは発信力があってテレビ向きでスピード感がありました。ですが農家からの信頼は薄かった。一方で鈴木さんは派手さがないけど農家には安心感を持たれるタイプなんですね。この違いは鈴木さんの大臣就任後から現れていまして。これまで小泉さんの大臣室を連日訪れていたベンチャー起業家や芸能人といった人たちの姿が消えて、メディアジャックが落ち着きました」
長野「はい」
常井「景色が変わった、というのが率直なところで。国会審議を見ていても、以前より地に足のついた議論が与野党で行われているように見えます。ただしおもしろい事実があって。鈴木憲和という政治家を最初にメディアに認知させたのは、ほかならぬ小泉進次郎さんなんです。10年前、小泉さんが自民党の農林部会長だったときに同い年で後輩の鈴木さんを部会長代理に抜擢したと」
長野「ああ~」
常井「当時、担当していた農協改革の知恵袋として農水官僚出身の鈴木さんを頼ったんですね。ここが出発点だった。一言でいうと鈴木農政は、小泉農政をやみくもに否定するものではなく、農家の実情に応じた現実的な路線にシフトしていく、といった過渡期なのではないかとみています」
長野「小泉さんの農政は非現実的だったということかな(笑)」
常井「対比でいうと、改革派に対する鈴木さんは農協の守護神や族議員の象徴というふうに言われます。でも現場に聞くと少し違って。確かに鈴木さんは、TPPに加盟するとき最後まで反対して、農協との距離が近いように見えるんですけど。実際にはやはり上から目線だとか、土のにおいがしないというように、農業団体から警戒されている部分がある」
長野「へえ~!」
常井「鈴木さんは東京生まれです。開成高校から東大法学部、霞が関に行った、典型的なエリートなので、農家の感覚にどこまで寄り添えるのか。山形2区の選挙では何度も苦戦してきた。地元の市長選も見ていると、米どころなのに盤石な地盤があるとは言い難い状況なんです。鈴木さんは以前から『稼げる農業』というのを打ち出していて。農協のコスト意識に注文をつけるタイプなんです。守旧派の族議員というイメージは表層的では、というのが私の見方です」
長野「この短期間に3つの発言で注目されましたね」
常井「『米価にはコミットしない』『需要に応じた生産』『お米券の配布』。どれもマスメディアにはネガティブに扱われましたね」
長野「あまりにも石破さんと違いすぎて驚いた、というのもありますね」
常井「改革は後退した、猫の目農政だ、という具合に言われています。ただ農政関係者を取材すると実態は、むしろ逆で。小泉農政、石破政権のときの小泉さんによる5ヶ月間が脇道にそれていただけで、鈴木農政のほうがよっぽどオーソドックスだ、という声が与野党ともに支配的なんです」
さらに常井が小泉農政と鈴木農政の違いを解説した。