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MAD MEDiCiNE[ライブレポート]来世でも巡り会うためのMerry HAPPY END「マドメドの曲があなたにずっと寄り添っていけますように」

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MAD MEDiCiNE[ライブレポート]来世でも巡り会うためのMerry HAPPY END「マドメドの曲があなたにずっと寄り添っていけますように」

2025年1月7日(火)、恵比寿LIQUIDROOMにてMAD MEDiCiNE現体制最後の公演<The Quintet>が行なわれた。

2年8ヵ月にわたり歩み続けてきたMAD MEDiCiNEの集大成とも言えるこの夜、ステージに立つ彼女たちは、全力のパフォーマンスでフロアを熱狂の渦に巻き込んだ。

ファンとの絆が生んだ一体感と、切なさと情熱が交錯する瞬間の連続。圧巻の表現力とパフォーマンスが炸裂したその舞台は、まさに“最幸”のフィナーレと呼ぶにふさわしいものとなった。

彼女たちの物語に刻まれた、最終章の想いと光。そのすべてを、本記事で余すところなくお届けする。

・MAD MEDiCiNEの写真 25枚

撮影:ミヤタショウタ

“マドメドの曲があなたたちのこれからも、この人生も、ずっとずっと、寄り添っていけますように……”

那月邪夢はそう優しく語ると、《もし生まれ変わっても 見つけてくれるように》とアカペラで歌い出した。ここまで見届けてくれた、応援してくれた人たちと来世でも巡り会うために——。

2025年1月7日、MAD MEDiCiNEは2年8ヵ月に渡る現体制、那月邪夢、憑宮ルチア、Q酸素、ありすりあ、唯一むに、5人での活動を終了した。

MAD MEDiCiNEが現体制終了を発表したのは2024年10月のことだ。それからの約3ヵ月は怒涛のような日々だった。ライブパフォーマンスはもちろんのこと、その勢いも最高の輝きを放っていた。星は最期を迎える時が最も輝く、そんなことを彼女たちは教えてくれた。

ソールドアウトでオーディエンスが埋め尽くした恵比寿LIQUIDROOM。荘厳なSEが響き渡り、ルチア、むに、そしてりあと酸素が手を取り合ってステージに現れる。最後に邪夢がセンターに構えると、凛とした歌声を解き放った。「眠罪」でライブは幕開けた。

“<The Quintet>、ラストまで楽しんでいきましょうー!!”

アッパーなデジタルビートに合わせて、優美にパフォーマンスをくり広げていく5人。そのシルエットはいつにも増してエッジィにも見える。気合いは充分だ。オーディエンスもステージの5人に向かって全力で5色のペンライトを掲げ、腕を突き上げ、精一杯の声を上げる。

那月邪夢<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

“ヴォイ! ヴォイ! ……もっとぉ!”

ヒートアップしていくフロアの士気を掌握しながら邪夢が叫ぶと、「ヒステリックトリック」を投薬。しなやかによく通る邪夢とパワフルな酸素のボーカルがクロスしながら会場を差配し、むにが毒気ある歌声でオーディエンスをねじ伏せていく。アイドルらしからぬ負の感情を曝け出すメンヘラ口上の発動によって、ライブ開始早々とは思えぬカオティックな情景が拡がった。続けざまに「黒猫のダンス」へと流れ、リズムに合わせてクラップが高鳴ると、ますますボルテージは上がっていく、青天井だ。宮殿を模したステージセット、後方に構えた大きな5枚のスクリーンによる映像演出も楽曲と5人のパフォーマンスに彩りを与えていく。

1人ひとりの挨拶も早々に「MAD SiCK SHOW」が始まった。妖しく、麗しく、可愛らしく、だが、強い……コロコロと変わっていく展開に合わせてさまざまな表情で魅了していくマドメドの真骨頂である。ルチアがフランス人形さながらエレガントに立ち振る舞えば、りあがくるみ割り人形のごとく滑稽に踊る。視覚と聴覚で愉しませてくれるダークファンタジーなショーをくり広げていく……のも束の間、禍々しい重低音が会場を揺らすと、邪夢が囁くよう歌い出した。「楽飴華-ハッピィキャンディチャイニィ-」だ。オリエンタルな香りと頽廃美がクロスオーバーする楽曲に乗って、人を喰ったようにがなる邪夢とクールでニヒルなルチア、声量たっぷりで聴く者を圧倒する酸素、不気味なコケティッシュさを醸すリア、ねっとりと絡みつくようなむに……5人のボーカリゼーションがフロアの情緒をかき乱していく。さらに不穏さを掻き立てる「東京ブラックアウト」へ。突き抜けるハイトーンでもキレッキレのダンスでも最狂無双を否応なしに振り翳した、むにが叫ぶ。

ありすりあ<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

“現体制ラストライブー!! みなさん悔いのないように最後まで楽しんでいきましょう”

怒涛のスラップベースと素速いパッセージのギターが織りなすオケが耳を襲った。「人肉アントルメ」だ。緻密に構築されたフレージングと、綿密に組み上がったリズムを操りながら歌い踊る5人は、フロアに向かってクラップを誘い、次々と表情豊かな声色を乗せていく。複雑なコレオグラフをダンサブルにキメると、最後は《ゴチソウサマデシタ♡》とフロアに向かってご挨拶。

MAD MEDiCiNEは2024年、急成長を遂げた。それは先述の「東京ブラックアウト」「人肉アントルメ」といった、明らかに難易度の高くなった楽曲群を見ても感じられるものだろう。さらに“現体制終了”という終着点が見えたからこそ、悔いの残らぬよう最高の輝きを見せてくれている。次に披露された「アリス心中」はそんなラストへ向かう彼女たちを象徴する楽曲。この日の同曲のパフォーマンスは、そういう意味でも最高の完成度だった。

目まぐるしく変わっていく楽曲展開と慌ただしいメロディを5人は丁寧になぞっていく。《回避するバッドエンド》《刹那すぎるファンタジー 壊れる前に保存》……現体制ラストライブで聴くそのフレーズの数々は、これまでとは違う意味に聴こえてくる。それはステージの5人も同様だろう。ドラマティックに楽曲が進んでいくも、複雑な符割りと難しいメロディながら、詞を噛み締めるよう歌っている。《さらばお元気で》と最後の節を、誇り高く美しく歌い上げる邪夢の姿は、込み上げるものがあった。

感傷に浸るのはまだ早い。「狂躁シェイプシフター」の《咲いて》《狂躁》……と、フロアともどもありったけの声を響かせあうコール&レスポンス。そして、グループ名をしっかりと歌い上げる『MAD MEDiCiNE』。楽曲と歌詞、その1つひとつが深い意味を持って、フィナーレへと向かっていくのだ。

チェンバロの音色が耽美な世界へと誘う「マスカレイド・ロンド」。邪夢とむにによる、間奏のダンスシーンで沸き上がるオーディエンス。そのまま、メランコリックな空気を漂わせる「愛執迷宮ドールハウス」へと続く。この数日前から声の不調を訴えていたルチア。万全とは言い難いかすれた歌声が、同曲の哀愁をさらに色濃くする。5人の中で1人だけ、アイドル活動を終えることを決めた彼女は、どんな想いでこの日を迎えたのだろうか。そんな彼女の手を取るよう、むにが隣に並んだアウトロに、想いを馳せる。

憑宮ルチア<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

“みんな盛り上がって! お葬式みたいなってるよ!”と、マドメド唯一の陽キャであるむにがオーディエンスを活気づけるも、“次の曲はそんな盛り上がる曲ではないので(笑)”と前置きしながらの「愛憎レイテンシー」。痙攣するようなエレクトロサウンドに寄り添いながら5人がせめぎ合う愛憎劇。間奏でルチアが邪夢を抱き寄せると、そっと口づけた。思わぬ不意打ちに本気で照れる邪夢。フロアからは悲鳴に似た歓声が上がった

唯一むに<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

8ビットサウンドが高鳴り、「MAD GAME」へ傾れ込む。邪夢の咆哮に合わせてCO2キャノンが噴射し、ラストスパートの口火を切った。ステージとフロアが見事なまでに一体化し、さらに息つく暇なく「ira=elide」へ突入する。邪夢がこれでもかと言うほどフロアを煽り続け、《ira=elide(イライラ)》のリフレインに侵されてデバフされるオーディエンス。5人は勝ち誇った表情で、「レゾンデートル」を気品たっぷりに歌い上げると、ラストナンバー「ときめきオーバードーズ」を叩き落とす。アップテンポのビートと強靭な歌声が会場全体を呑み込み、ライブは最高潮を迎えた。ステージの5人は満面の笑顔を見せ、酸素がありったけの声を響かせ、渾身のロングトーンで歌い締めた。

Q酸素<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)
<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)
<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

これからもずっと、この5人のMAD MEDiCiNEを好きでいてください

鳴り止まぬアンコールに迎えられ、ステージに再び現れた5人は1人ひとり、その想いを口にする。

“大変なこととかもいっぱいあると思うんですけど……むにはこのライブの時間とみんなとしゃべる特典会が、唯一すべて忘れられる時間で……”と涙ぐみながら、むにが語り出した。

“活動では正直つらいことが多かったけど、みんなと一緒にライブで盛り上がって、褒めてくれたことが救いだった”と続ける。“今日、こんな大きな会場で埋まるかなって不安だったけど、みんながマドメドのことを信じてくれて、私たちがみんなのことを信じて埋められたと思うので、今までやってきてよかった”と感謝。“本当に「濃い」時間だったなと思います。みんながいたからここまで来れたし、みんながいなかったら、むに、ダメだったから……本当にみんなのおかげです。今までありがとうございました!”。

唯一むに<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

続いて、りあ。

“私はマドメドに入る前、自分のことが嫌いで受け入れられなくて……精神的にすごく弱くて、……ああ、忘れちゃったぁ”と涙と緊張で言葉に詰まるも、“今のありすりあを知ってる人が想像つかないくらい、マイナス思考で毎日発狂していた”と振り返り、“だけど、マドメドに出会って強くなれた”と明かす。さらに“それはみんながいてくれたから私は強くなれました、これまで応援してくれてありがとうございました。そして今後もみんなに会えるように頑張っていくので、応援をよろしくお願いします”と礼を述べると、温かい拍手が起こった。

ありすりあ<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

あらかじめ書いておいたという手紙をおもむろに懐から取り出し、“どこから出すの?”と笑いを誘った酸素は、“この5人でライブ当日を迎えれらたことが嬉しい”と前置きしながら読み始めた。

“私がマドメドに入ったのは2023年の10月でした。入ったあとも今の5人体制になってからも怒涛の日々で、毎日が刺激的でした。そして現体制終了のお知らせから数ヵ月とは思えないほど、あっという間にこの日が来てしまいました”。そして、涙で言葉を詰まらせながら、“この2年間の楽しいことも大変なことも、すべていい想い出になってる気がします。それもメンバーとここに来てくれた全員のおかげ”だと述べ、“これからも5人の応援をよろしくお願いします”と読み閉じた。

Q酸素<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

そして、ルチアがガラガラになってしまった声を、涙と感情で震わせながら語る。

“マドメドに初期メンとして入ってから3年近い日々を過ごしてきたんですけど、本当にこんなに自分がやり続けることはなくて……。この5人になるまでいろいろあって……、でも今考えれば全部必要なことだったし、大切な時間だった”と振り返る。アイドルを辞めると決めた彼女は、“この5人で最後を迎えられてよかった、この5人以上に大切な人たちには出会えないと思ったから”とその決断に至った経緯を口にした。“今、1番楽しくて幸せで、たくさんみんなが会いに来てくれるライブで、こうやって素敵にアイドルの最後を迎えられて幸せを感じています。マドメドが最初で最後と決めていたから、後悔はなかったはずですけど……”と感極まりながらも言葉を続け、“みんなはこれから新しい推しメンに出会ったりしながらも、この4人を応援し続けてくれると思うんですけど、私は陰ながらみんなを見て、応援していくので、みんなも幸せになってください”と締めた。

憑宮ルチア<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

しっかりと深呼吸をしてから話し出す、邪夢。

“マドメドがデビューした最初の頃はスカスカのライブハウスで、煽っても返ってこないフロアで、特典会も1人、2人しかいないこともあったんですね。でも今はこんなに大きい会場でパンパンに、こんなたくさんの人を呼べるようになって、すごくマドメドの成長を感じています”

そう言うと、メンバー1人ひとりに向かって声をかけていく。

“むにちゃんとは、揉めたこともあったし、たくさんぶつかったこともあったけど、むにちゃんに頼ってばっかだったこともたくさんあって……。今こうして考えてみると、すごく救われてたなって思います。本当にありがとう”

“りあちは、ホテルの部屋が一緒でね。2人でたくさん悩んで、悩みを打ち明けあって、支えあってきたことがたくさんあるなって。一緒に闘ってきたなって思います。いつも話聞いてくれてありがとう”

“酸素ぴは、(2023年)10月から入ってきて、不安なこともあったろうに、すごい堂々とステージに立って、歌って踊って、本当に心強い存在でした。酸素ぴが楽屋でふざけてる時はすごく場が和んでね。この5人に絶対必要な存在だと思っています。本当にありがとう”

“るちゃんは初期メンとして、最初の頃はね、たくさん人が入ったり抜けたりして、つらいこともあったけど、るちゃんは本当にしっかりしていて、私にはない心の強さがあってね、私はそれに何度も助けられました。初期メンがるちゃんで本当によかったし、ずっと活動できてよかったなと思います、本当にありがとう”

そして、自分とオーディエンスに向けて言葉を続けた。

“私自身、すごくつらいことだったりとか、大きな壁にぶつかっちゃうことがたくさんあったけど、マドメドの曲ですごく救われたし、みんなも心の中に、ずっと支えになれるようにマドメドの曲が残っていってくれたらいいなって思っています。これからもずっと、この5人のMAD MEDiCiNEを好きでいてください。そして、マドメドの曲もずっと好きでいてくれると嬉しいです。ありがとうございました”

深く礼をすると、大きな拍手が起こった。その光景を眺めながら邪夢は願いを込めるよう、優しく言葉を発した。

那月邪夢<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

“マドメドの曲があなたたちのこれからも、この人生も、ずっとずっと、寄り添っていけますように”

そして、《もし生まれ変わっても 見つけてくれるように》と「この身体の傷跡は、来世でも巡り会うための目印。」をアカペラで歌い出した。5人はそれぞれの未来とこれからの居場所を確かめ合いながら歌い踊る。《さあ 何度でも生まれ変われるよ》という言葉を己に言い聞かせるように。オーディエンスとの《ラララ……》の合唱がどこまでもいつまでも響き渡った。

“最後は笑って終わりたいです! 行けんのかァー! 行けんのかァァァー!”

魔王・邪夢の導きによって「らぶぎみ」が炸裂する。最後の昂揚へ向かって、ステージもフロアも、ありえないほどの熱気を帯びていく。“死ぬ気で飛ばせ!!”と一切躊躇しない5人の扇動に必死で食らいついていくオーディエンス。えも云われぬ、とてつもないパワーをフロアから受けた5人は、銀テープとともに放たれた正真正銘最後の曲、完全無欠の「完全犯罪※420」を届ける。最幸のフィナーレを迎えた。

歌い切った5人は満面の笑顔を見せながら、手を取り合い、オフマイクで叫んだ。

“それでは以上、私たち、MAD MEDiCiNEでした! ありがとうございましたぁぁぁ!!”

気高く鬱くしい5人のMAD MEDiCiNEの物語はこうして幕を閉じた。来世もきっと迷わずに巡り会うための目印を残して。

MAD MEDiCiNEのリリースしてきた楽曲とMVは、この先も残っていく。あなたのこれからの人生に寄り添っていけるように。

<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>LIQUIDROOM(2025年1月7日)

<MAD MEDiCiNE 現体制終了公演 『 The Quintet 』>

2025年1月7日(火)
LIQUIDROOM

SE
M1.眠罪
M2.ヒステリックトリック
M3.黒猫のダンス
M4.MAD SiCK SHOW
M5.楽飴華-ハッピィキャンディチャイニィ-
M6.東京ブラックアウト
M7.人肉アントルメ
M8.アリス心中
M9.狂騒シェイプシフター
M10.MAD MEDiCiNE
M11.マスカレイド・ロンド
M12.愛執迷宮ドールハウス
M13.愛憎レイテンシー
M14.MAD GAME
M15.ira=elide
M16.レゾンデートル
M17.ときめきオーバードーズ

〜アンコール〜
En1. この身体の傷跡は、来世でも巡り会うための目印。
En2. らぶぎみ
En3. 完全犯罪※420

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