保護団体「Pooch Dog Rescue」設立のきっかけとは。代表・吉川愛さんに聞いた
ここでは、犬と、犬を取り巻く社会がもっと幸せで素敵なものになるように活動している方々をレポートします。
今回は、神奈川県逗子市を拠点に、地元に密着した犬の保護活動を行っている「Pooch Dog Rescue」の取り組みについて紹介します。
20代のころお世話が充分にできなかった愛犬への思い
保護団体「Pooch Dog Rescue(以下Pooch)を設立したきっかけについて、代表の吉川愛さんに伺うと、「私の場合、やむにやまれぬ状況でPoochを立ち上げることになったんです(笑)」とのこと。
もともと吉川さんが、犬の保護活動にかかわるきっかけとなったのは、20代のころに実家で飼っていたシー・ズーの存在でした。「当時、かわいい!と思って迎えたのですが、20代の私は仕事などで忙しくほとんど家にいることがなかったんです。そして、介護が必要な年齢になってもお世話は家族に任せきりでした。それがずっと心に残ったままで、罪滅ぼしの気持ちもあって、犬の保護活動を手伝ってみようと思うことに」。
そして、吉川さんはPoochの前身となる保護団体でボランティアを始めました。ところが、しだいにその団体の運営が立ち行かなくなり解散する事態に。でも、預かりボランティア宅には多くの保護犬たちが残されていて、なんとかしなければいけない……。そこで吉川さんが先頭に立ち、新たにPoochを立ち上げたとのこと。代表となった吉川さんは、前の団体の過ちを二度と繰り返さないよう、資金面の管理をしっかりと行い、団体の規模をむやみに広げず、レスキューする保護犬の数は自分の目の届く範囲に抑えるようにしています。
「保護団体の運営は『犬が好きだから』『かわいそうだから』といった気持ちだけでは続かないんですね。収支の管理やスタッフの確保、譲渡先のご家族へのフォローなどやることは山のようにあります」と話す吉川さん。現在は、自宅でおもに地元の飼い主さんを対象にしたペットホテルを経営しながら、保護犬の一時預かりもしています。
愛犬4頭と預かり犬たちに囲まれた吉川家の日常
取材当日、ご自宅には自身の愛犬4頭ほか、預かり中の保護犬など総勢9頭がにぎやかに過ごしていました。吉川さんの愛犬のうち3頭は保護した犬で、一時預かりをした際に、強い縁を感じたため家族として迎えることにしたそう。とくに小型犬のスブタくんはどんな犬にもフレンドリーに接することができ、一時預かり中の保護犬たちの気持ちをなごませる役割をしてくれるとか。感情に流されず、堅実に保護団体を運営している吉川さんですが、犬たちと接しているときには笑顔が絶えず、その姿からは犬たちへのあふれる愛情が感じられました。
そんな吉川さんに今後の活動について伺ってみると、現在憂慮していることがあるとのこと。
「神奈川県では、表向きには野犬はゼロといわれていますが、じつは他県で保護された野犬を神奈川県のご家族が迎えるというケースが増えているんです。Poochでも茨城県などから元野犬の保護犬を引き取っているので、他県のサポートをすることには賛成です。ただ、元野犬だった犬の習性をよく理解しないまま安易に家族に迎えることは避けてほしいです」と吉川さんは力説。なかなか人なれしない野犬を迎えた結果、手に負えなくなって飼育放棄したり、脱走させてしまったりするケースが増えているそう。そのため神奈川県で再び野犬が増えるおそれも。そのため、今後Poochでは、元野犬を迎えた家族を対象にしたしつけ教室や散歩教習の開催に力を入れていきたい、と語ってくれました。
出典/「いぬのきもち」2024年8月号『犬のために何ができるのだろうか』
写真/犬丸美絵
写真提供/Pooch Dog Rescue
取材・文/袴 もな
※保護犬の情報は2024年6月7日現在のものです。