売上高1兆円の大台に向けた「無印良品」の静かなる快進撃
「無印良品」を国内外で展開する良品計画が発表した2025年8月期第3四半期決算は、営業収益・営業利益ともに過去最高を更新した。アパレルや家具、食品、コスメといった複数の領域で事業を展開する「無印良品」が、改めて支持を集めている。
良品計画は7月11日、2025年8月期の第3四半期の決算を発表した。売上高にあたる営業収益は前年同期比19.2%増の5889億円、営業利益は同39.9%増の479億円と、いずれも同期間として過去最高の水準に達した。
アパレル、家具、食品、コスメなど多岐にわたる商品群を展開する「無印良品」だが、今回の業績好調の背景には、ライフスタイルに対する価値観の変化があるとされる。ブランドを過剰に主張しないトーンや、環境・社会への配慮、手に取りやすい価格帯が、静かに共感されているのだ。
その象徴が、2023年に刷新されたスキンケアシリーズだ。必要最低限の成分設計と、無駄を省いたパッケージデザインで支持を拡大。スキンケア市場での存在感を高め、好決算を牽引するヒット商品となっている。
無印良品は単なる商品提供ではなく、「暮らしのあり方」そのものを提案しているブランドだ。その姿勢が、クオリティ・オブ・ライフ(QOL)を重視する層に響いている。特に海外では、「過剰なものを持たない日本的なライフスタイル」が普遍的な価値観として受け入れられ始めており、「無印良品」にとって追い風となっている。
実際、今回の決算では全地域で増収増益を達成している。消費低迷が懸念される中国市場でも売上・利益ともに計画を上回っており、グローバル展開が順調に進んでいることが明らかになった。
2024年11月に発表された良品計画の中期経営計画では、今期の営業収益目標を7340億円としていたが、実績ベースでは420億円の上振れ着地が見込まれている。前年比17.4%増の成長率がこのまま続けば、2027年8月期に営業収益1兆円という大台も視野に入る。
こうした好調を背景に、株価も右肩上がりで推移。2025年上半期だけで91.5%上昇し、6月30日時点では年初から3,309円高の6,925円を記録した。
一方で、不安材料も残る。それが、500円以下の商品を中心に展開する新業態「無印良品500」だ。2023年12月に東京・秋葉原駅のホームに出店したが、2025年5月13日にわずか1年半で閉店した。同店は交通量の多い立地だっただけに、持続可能なモデルかどうかが今後の焦点となる。
良品計画は、同業態を「MUJI Kitchen」などと組み合わせて、将来的に2000店舗規模まで拡大する計画を掲げているが、立地や商品構成の再検討が求められそうだ。