トマト、カレー、ジェノバにも変化する、真っ白い“博多クリーミー豚骨”が話題の博多ラーメン
豚骨ラーメンのジャンルはまず、博多や久留米、熊本ラーメンなど、地域の名前を冠した、いわゆるご当地ラーメンに大きく分けられます。そこから、スープの見た目や状態が特徴的なものが抜き出されて愛称のように呼ばれるカテゴライズも存在。例えば、最近よく聞く泡系、クリア系、シャバ系(スープ濃度がサラリとしている)などがそうです。今回の主役、9月14日オープンの「博多太陽一杯!!」は、大枠でいうと博多ラーメン。そして細分化したジャンルは“濃厚クリーミー系”、あるいは“ポタージュ白豚骨”と称してもいいかもしれません。博多駅前にありアクセスも至便。普段使いだけではなく博多観光で外せないラーメン処となることを予感させる新店です。
「博多太陽一杯!!」の登場は今秋、ラーメンファンの間でSNSを駆け巡る一大ニュースでした。なぜなら都市伝説的に語られる“あの超名店”創業者の息子・土井元気さんが独立するという前情報があったからです。筆者自身、取材を通じてこの親子には大変お世話になってきたゆえ伝えたいエピソードも多々あります。しかし今回は「あくまで自分の力で勝負したい」との元気さんの思いを尊重し“超名店”についての詳細はあえて伏せておきます。
「博多太陽一杯!!」は、“新たなる豚骨ラーメンの魅力を提案する店”です。店主の土井元気さん(1994年福岡市生まれ)は家業のラーメン店を幼い頃から手伝い、小学生にして漫画「ラーメン発見伝」(小学館)を愛読するなど、ラーメンに囲まれて育ってきたいわば“豚骨エリート”。しかし、そのまま道一本を突き進み開業という訳ではなく、ラーメンから離れている時期もありました。「自然な流れでもありますが大人になると、ラーメン以外の世界も見てみたいと当然なるわけです。僕は一般企業の営業職などを経験しましたが、心のどこかではやはりラーメンに対する熱がくすぶっていました」と振り返る元気さん。退職した後、再び家業の手伝いやその他ラーメン店でのアルバイトを経験する中で、ある出会いが独立開業への思いを加速させることになります。「自宅の近くにある和白『麺屋 丸福』のラーメン、店主さんの職人としての真摯な姿勢に感銘を受けました。ラーメンは一杯で人を感動させられるすばらしい料理、そしてもっと自由になって然るべきと改めて気付いたんです」。元気さんは「麺屋 丸福」での修業の後、自身の息子の名前を掲げた「博多太陽一杯!!」を開業しました。
元気さんの作る定番のラーメン「博多クリーミー豚骨」(800円)は豚骨100%の“真っ白い”スープが特徴です。この白さは“あえて”追求しているもので、独自の手法で豚骨をしっかりと乳化させることで生まれます。味わいは濃厚濃密でクリーミー。しなやかなコシのある細麺がスープを“持ち上げるような”とろみ、ポタージュ感があり、コクも深いですね。パンチがあり、臭みはない。これも大きな持ち味です。
さらに、元気さんが提唱する革新的な豚骨ラーメンの一つ「博多クリーミーカルボ」(1,000円)もいただきました。
こちらは豚骨ラーメンに香り高いとろけるチーズをふんだんに合わせたもので、真ん中には卵黄をポン! クリーミーさ、マイルドさが一段と際立ち、上に降りかかったブラックペッパーがいいアクセントになっておいしいですね。「博多クリーミー豚骨」と同じく、トマト、カレー、ジェノバの3種が用意されている味変替玉(各1玉300円)も楽しめます。個性豊かなソースを優しく受け止め、まとめてくれる豚骨ラーメンの懐の深さを感じるメニューです。
さらに、デザートも個性むき出しの一品が用意されていました。
その名も「豚骨アイス」(400円)。こちらは、元気さんが親交のある住吉「ラヴィアンローズ」のパティシエとコラボレーションしたもので、「豚骨スープの味をほんわか感じながら、しっかりとスイーツとしても成り立っている」未体験の味わいに膝を打ちました。
直球の豚骨ラーメンをしっかり押さえながら、さまざまな新味を繰り出す「博多太陽一杯!!」。「ラーメンイズフリーダム」を改めて感じさせてくれる注目店です。
冬限定で、豚骨味噌ラーメンもお目見えするそうなのでぜひ試してみてください。
博多太陽一杯!!
福岡市博多区博多駅前4-7-6
080-3984-1255
ラーメンライター 上村敏行
1976年鹿児島市生まれ。2002年、福岡でライター業を開始。同年九州ウォーカーでの連載「バリうまっ!九州ラーメン最強列伝」を機にcとして活躍。各媒体で数々のラーメンページを担当し、これまで1万杯以上完食。取材したラーメン店は3000軒を超える。ラーメン界の店主たちとも親交が深く、ラーメンウォーカー九州百麺人、久留米とんこつラーメン発祥80周年祭広報、福岡ラーメンショー広報、ソフトバンクホークスラーメン祭はじめ食イベント監修、NEXCO西日本グルメコンテストなど審査員も務めてきた。ラーメンライターとしての活躍はイギリス・ガーディアン紙、ドイツのテレビZDFでも紹介