【認知症リスクを減らす】50代からでもOK!怒りの感情が湧いたらすべきことを医師が解説
現在、日本では65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。認知症になるリスクを減らすために重要なのは、食事、運動、睡眠などの「生活習慣」に気を付けることですが、見逃しがちな要因もあります。それが『慢性ストレス』。日々の「不安」「イライラ」が脳にダメージを与えているかもしれないのです。 書籍『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』(KADOKAWA)は、消化器外科医/ヘルスコーチである著者・石黒 成治氏が、医学的根拠と、過去に健康に悩んでいた自身の実践をもとに、「ストレスに屈しない」思考法や、運動、食事、生活行動など、生活習慣の予防法を網羅しています。 今回はその本の中から、石黒氏自身が実践してきた「ストレス」をはねのける方法をご紹介します。
※本記事は石黒 成治著の書籍『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』から一部抜粋・編集しました。
カーッとしたら、「感情をラベリング」する
怒りや不快な感情を覚えたときに、脳の中では瞬間的に扁桃体と呼ばれる組織が活性化します。扁桃とはアーモンドのことで、扁桃体はアーモンドの形に似た組織であることから名付けられています。ちなみに喉にある扁桃腺も同じくアーモンドのような形に見えることから名付けられています。
「恐怖」「不安」「緊張」「怒り」などのネガティブな感情がおこると、扁桃体はノルアドレナリンというストレスホルモンをいっせいに放出します。このノルアドレナリンは、脳内すべての組織をいっせいに刺激します。それに反応して視床下部はストレスホルモンであるコルチゾールを分泌するように副腎に対して命令を出します。交感神経が緊張して、血圧や心拍数が上がったり、筋肉が緊張したりといった反応を体におこします。
これは一種の戦いの反応であるために、一瞬でおこります。人の言ったことに対してカチンと来たときに、反射的に文句を言ったり、不快な表情や態度を出してしまうのはある意味仕方のないことです。人類はこの反応があったおかげで、恐怖や不安なものに対して、瞬間的に戦うか逃げるかを判断して、生き延びてきたわけです。本能のレベルで備わっている能力であり、止めることはたやすくありません。
しかし、現在の日常生活では判断が遅れると命に関わるような危険は少ないため、感情に即座に反応した行動は必要ではありません。この本能に似た反応は、自らコントロールして抑え込む必要があります。
活性化した扁桃体を抑え込む機能を持つのは、脳の前頭前野です。いわゆる前頭葉が冷静に判断できると、「自分はちょっと怒っているな」と冷静に判断したり、「まあ、こんなことで怒ってもね」とか「この人の本当に言いたいことは何だろうか?」などと考えることで、怒りや不快感をいったん抑え込み調整することができます。
しかしこの前頭前野は、年齢を重ねるにつれて明らかにその能力が衰えてくるため、年を取るにつれて、怒りっぽくなってくるわけです(Psychol Sci.2015)。怒りや、不安や、不快に対して、扁桃体の反応を抑えて前頭前野を働かせるためには、意識的にトレーニングをする必要があります。
とはいえ、怒りを覚える物事に対して「怒らない」とか「嫌だと思わない」とか、感情そのものを抑え込むと、かえってストレスは増大します。前頭葉を働かせるためにはその感情がおこっていることを自分でまず認識するというプロセスを経ることです。
怒りの感情が湧いたら、反射的に「僕は今の言葉に怒りを覚えている」などと客観視することで、瞬間的に脳の中での思考の支配が、扁桃体から前頭前野に移ります。
この方法は「感情ラベリング」(Affect Labeling)と呼ばれる方法で、ラベリングすることで扁桃体の活動が抑えられることがMRIで確認されています(Front Psychol.2014)。感情の受け止め先を扁桃体から前頭葉に移すイメージでいったん自分の感情を受け止めるクセをつけると、カーッとなって反射的に反論したり嫌味を言ってしまうことがなくなります。