にしな『RUSH BALL 2025』クイックレポートーー健やかなる日も病める日も愛して「明日も良い日にしようね!」
『RUSH BALL 2025』にしな
自身初の野外音楽イベント出演と相成った『RUSH BALL 2021』から4年。ATMCのトリを任されたにしなは、言わずと知れたフジファブリックによる夏の名曲「若者のすべて」のカバーで開幕のピストルを鳴らした。折に独りごつように、時に問いかけるように、繊細なビブラートやしゃくりを混ぜ込んだ歌声が、まさしく花火が散ったばかりの会場を満たしていく。
エモーショナルを具現化したような光景を出現させたところで、月の光を彷彿とさせるライトを浴びつつ「ヘビースモーク」を畳み掛けるのだから、こんなのセンチメンタルにならないわけがない。うかつに触れれば壊れてしまいそうな澄んだボーカルで<その口に私がちゅってして拘束する><貴方以上に身体を蝕め>と吐露されるドス黒い感情は、振り返れば不幸だったかもしれないけれど、確かに愛おしくてたまらなかった日常のページをそっとめくっていった。
「余韻担当でやって参りました。最後まで燃え尽きていきましょう!」と披露した「ケダモノのフレンズ」では、クラップとアコースティックギターの音色が牽引する朗らかなダンスパーティへご招待。ATMCのトリという重役に決して臆することなく、愛する仲間と好きな音楽をプレイする心地良さに浸っているのが、その表情から伝播してくるゆえに、こちらも穏やかに終わりゆくこの時間を過ごせるのだろう。
どこか昔懐かしい安心感を包含したキーボードの音色から届けられた「わをん」は、何もかもを捨て去ってしまいたい最悪の日や、ついつい浮かれてしまうラッキーデーを繰り返す私と、いつだって健全に広がっている空を対比させ、過去現在未来全ての悲しみと喜びを抱擁する一曲だ。同ナンバーが宣誓する、はっきりと思い出せない卑近な毎日がただ重なっていくことの尊さを噛み締めようとするアティテュード。それは世界が滅ぶという予言が蔓延した時代で、不滅の愛を刻みつけんとする「1999」をも貫く態度である。
それでは、「1999」をエンディングに添えた意味とは何だったのか。それはきっと、ご褒美みたいな今日と明日が終われば、再び平常運転が始まるから。<あのよの続きをしようよ 1999>。この夜はもうすぐ終わるけれど、きっとまた共に続編を記せるはず。「明日も良い日にしようね!」と告げたにしなは、再会の約束をオーディエンスと結んだのだった。
取材・文=横堀つばさ 撮影=瀧本JON...行秀
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