【フローレンス】ひとり親家庭や経済的に厳しい家庭の問題、何がある?時が経って表面化する悩みも
家事に子育て、仕事……どれをとっても大変なことなのに、ひとり親だったら全てをひとりでこなさなくてはいけません。また子育てにはお金もかかりますよね。経済的に厳しい子育て家庭も多くあるでしょう。ひとり親家庭や経済的に厳しい家庭の問題は、周りにいたとしてもなかなか聞けないもの。そんな家庭の困りごとに対してさまざまな取り組みを行っている特定非営利活動法人フローレンスの高森さんにお話を伺いました。彼らから相談されても個人ではどうしようもないと思うことでも、行政やNPO法人の支援について伝えることはできるはず。この機会に、知っていくことから始めていきませんか?
ひとり親家庭の大きな問題のひとつは……?
ーーひとり親家庭の問題はどのようなものがあるのでしょうか。
高森千寿子さん(以下、高森さん):大きな問題の一つとして、“貧困”があげられます。最初に断っておきますと、経済的に厳しい子育て家庭が必ずひとり親家庭というわけでもありませんし、ひとり親家庭が必ず経済的に厳しいわけでもありません。 ただ厚生労働省の令和3年度の調査によると母子家庭の半数近くは年収200万円未満です。就労者のうち正規の職員・従業員として就労している割合は48.8%となっています。必ずしもひとり親家庭が経済的に厳しいわけではないという前提はありつつ、今の日本の実態としては、ひとり親家庭は経済的な困りごとを抱えていることが多いということになります。
ひとり親家庭に限らず、経済的な問題のある家庭にある体験格差
ーー物価高の今、経済的な困りごとを抱えている家庭はより大変なのではないでしょうか。
高森さん:ひとり親家庭かどうかにかかわらず、経済的に厳しい子育て家庭ではギリギリの生活をしている家庭も多くあります。親は1食を抜いてなんとか家計をやりくりしているという話や、月末になると残り数千円しかない中で過ごしている……という話も聞きます。物価がどんどん上がっていて、経済的な打撃は本当に大きいと思います。
ーー経済的に厳しい家庭だと、子どもへはどんな問題が生まれるのでしょうか。
高森さん:公益社団法人チャンス・フォー・チルドレン「子どもの『体験格差』実態調査最終報告書(2023)」によると、「世帯年収300万円未満の家庭の子どもは、3人に1人が学校以外で何かしらの体験をしたことがない」という結果が出ています。家庭の年収によってかなり差が出てしまっていて、“体験格差”が深刻な社会問題としてあげられます。
ーーたしかに遊び場や動物園、ミュージアムなどの施設にもお金がかかりますね。
高森さん:子どものときから、いろいろなものに触れたり、いろいろな世界があっていろいろな大人がいることを知ったりすることは、とても大事なことだと思っています。さまざまな体験は生きるために必須ではないのですが、“心の栄養”として、子どもたちには必要ではないでしょうか。また、他の子どもたちができる体験が、自分の努力とは関係なく、自分の生まれた環境によってできない……ということは自己肯定感を下げることにもつながっていきます。それが就業意欲や就労意欲の低下に、そして貧困の連鎖にもつながっていくのではないかと思います。
ひとりで抱え込んでしまう危険性
ーー特にひとり親家庭では、家事・育児・仕事の全てをひとりでこなさなくてはいけませんよね。その大変さもあると思います。
高森さん:ひとり親家庭の問題としてはもうひとつ、“時間がない”こともあげられます。仕事に行って、帰ってきたら家事・育児をこなして、仕事と家の往復だけで自分の時間が全くありません。悩みがあっても相談する相手や時間がなかったり、その悩みを自分の中で昇華する時間さえもなかったり……。パートナーがいれば家で愚痴を言うなどして、知らず知らずのうちにストレスを吐き出していることもあるかもしれませんが、それもできません。
ーーそのようなご家庭では、本当に目まぐるしい日々を過ごされているのだと思います。相談する時間も取れず、ひとりで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
高森さん:日々を目まぐるしく過ごしていると、そこから“孤立”してしまうことがあります。誰かとつながる時間もないのです。その結果、自分だけで抱え込みすぎてしまう危険性があります。もう少し早い段階で誰かとつながれていれば、大きなことにならなかったかもしれないのに……ということにもなりかねません。事が起こる前に、日常的に“つながる”相手がいるような支援も大切になります。
編集後記 ひとり親家庭や経済的に厳しい子育て家庭では、さまざまな問題があることがわかりました。その日のごはんすらも困る家庭や、目まぐるしい日々の中での孤立の問題。今回は支援の必要性が高いと思われることから伺いましたが、他にもありそうです。まずは問題を知ることが大切ではないでしょうか。
※取材は2024年12月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。