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〈星座〉シリーズから3点も出展 ミロの傑作が世界中から集結 1966年以来の規模となる大回顧展『ミロ展』レポート

SPICE

『ミロ展』

2025年3月1日(土)から7月6日(日)まで、東京都美術館(東京・上野)にて『ミロ展』が開催中だ。

1893年にスペインのカタルーニャ州に生まれ、同じくスペイン出身のピカソと並び、20世紀を代表する巨匠に数えられるアーティスト、ジュアン・ミロ(1893~1983)。太陽や星、月といった自然界にある形を記号に変えて描いたミロは、没後40年を迎える今も世界中で再評価されており、日本でも高い人気を誇る。

本展は、そんなミロの作品の中でも傑作とされる〈星座〉シリーズや、初期から晩年までの絵画や陶芸、彫刻など100点近くを包括的に展覧するものだ。

ミロの生涯を振り返る大回顧展

19世紀末に生まれ、20世紀末に90歳で亡くなったミロは、長い人生の中で新しい技法や画題への挑戦を続けた。本展はキャリア全体を見渡すことができる大規模な回顧展となっており、ミロの日本での回顧展としては1966年に並ぶ規模となっている。

展示風景

会場は、「第1章 若きミロ 芸術への決意」「第2章 モンロッチ―パリ 田園地帯から前衛の都へ」「第3章 逃避と詩情 戦争の時代を背景に」「第4章 夢のアトリエ 内省を重ねて新たな創造へ」「第5章 絵画の本質へ向かって」という、5章からなる構成だ。

展示風景

会計の仕事に就いたものの、その後に絵画に専念したという経歴を持つミロの、フォーヴィスムやキュビスムの影響が見て取れる第1章、シュルレアリスムに身を置く第2章、戦争に巻き込まれながらも制作にのめり込む第3章、アトリエで活動を見直す第4章、そして生涯を通じて探求する様子が示される第5章と、ほぼ時系列順で作品が並ぶ。油彩やオブジェといったミロの多様な作品を、20世紀という激動の世紀の流れを味わいながら鑑賞できる構成だ。

展示風景 「第1章 若きミロ 芸術への決意」より

展示風景 「第4章 夢のアトリエ 内省を重ねて新たな創造へ」より


世界中から名品が集結 幅広く活躍したミロの軌跡をたどる

本展の展示作品は、ミロの生誕の地であるスペイン、多くのアーティストたちとの交流を持ったフランス、大きな影響を与えたアメリカ、そしてミロが愛した日本など、世界中から名品が結集した豪華な内容だ。ミロの作品の中で最初に日本で展示された《焼けた森のなかの人物たちによる構成》や、バルセロナ以外では約40年ぶりの公開となる《太陽の前の人物》など、貴重な作品が勢ぞろいしているのも見逃せない。

展示風景 左:《焼けた森のなかの人物たちによる構成》1931年 油彩/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ

展示風景 右:《太陽の前の人物》1968年 アクリル/カンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ

作品は油彩やアクリルで描いたもののほか、一部にアルミ箔を用いた《無題(夜の恋人たち)》なども紹介されており、ミロの多彩な挑戦が見て取れる。絵画のみならずオブジェや陶芸なども数多く、空想の産物が立体になっているさまを味わうことが可能だ。

展示風景 左:《無題(夜の恋人たち)》1934年 インク、グワッシュ、パステル、アルミ箔のコラージュ/紙 国立ソフィア王妃芸術センター、マドリード

展示風景

展示風景

ミロは様々なものに影響を与えながら、時代の流行も積極的に取り入れていった。例えばアメリカの抽象表現主義の画家らに刺激を与えつつ、ミロ自身も抽象表現主義の画家から影響を受け、常に作品を革新させていた。

したたり落ちる絵具に筆を重ねて描いた三連作《花火Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ》は、アメリカの若い画家たちの創作を取り入れた野心的な作品である。ほか、カンヴァスに絵を描いた後にナイフで切って火をつけた《焼かれたカンヴァス2》も挑戦的な作風だが、いずれも晩年に制作されたものだというから驚かされる。ミロが展開した豊かな画業には、飽くことのない探究心が根底にあったのだと実感した。

展示風景 左:《焼かれたカンヴァス2》1973年 アクリル/切られて焼かれたカンヴァス ジュアン・ミロ財団、バルセロナ(寄託)

展示風景 左から:《花火I》1974年 アクリル/カンヴァス、《花火II》1974年 アクリル/カンヴァス、《花火III》1974年 アクリル/カンヴァス いずれもジュアン・ミロ財団、バルセロナ


ミロの描いた抒情を味わう〈星座〉シリーズ3点

数多いミロ作品の中でも、特に傑作と名高いのが〈星座〉シリーズである。こちらは第二次世界大戦が始まった時期にパリを離れた避難先で手がけ始めたもので、物資が不足していたため小サイズの紙に描かれた。本展ではシリーズ23点のうち3点が紹介されている。

展示風景 〈星座〉シリーズ

当時、ミロは悲惨な現実から逃避したいという気持ちから創作に没頭し、バッハやモーツァルトを聴きながら夜空や音楽、星々や女性などを象徴的に描いたという。緊張状態にあったであろう鋭敏な感性から生み出された〈星座〉シリーズは、色彩の美しさ、精緻で絶妙なバランスで置かれたモチーフ、全体に流れる抒情性などが際立つ無二の傑作である。

展示風景 《明けの明星》1940年グワッシュ、油彩、パステル/紙 ジュアン・ミロ財団、バルセロナ

展示風景 《女と鳥》1940年グワッシュ、油彩/紙 ナーマド・コレクション

〈星座〉シリーズの展示空間は他の場所よりも照明が暗く、夜空に浮かぶ星々を眺めるような気持ちで鑑賞できる。なお、各作品のタイトルは詩的で謎めいており、ミロが夢見た情景や希望が静かに伝わってくるようだ。

展示風景 《カタツムリの燐光の跡に導かれた夜の人物たち》1940年 水彩、グワッシュ/厚い水彩用網目紙 フィラデルフィア美術館

本展は物販も色彩豊かなグッズがそろっている。図録はミロ作品に特徴的な赤・青・黄の3色展開で、表紙には初期から晩年それぞれの時代を代表する作品があしらわれている。トートバッグやポストカード、キーホルダーやマグネットなどもカラフルで、生活に彩りをもたらしてくれそうだ。

物販コーナー

物販コーナー

激動の20世紀を生き、常に新しい作風や技法に挑戦し、生涯に渡って創作を続けたミロの名作が一堂に会する『ミロ展』は、7月6日(日)まで東京都美術館にて開催中。

※レポート内の展示風景は許可を得て撮影しています
文・撮影=中野昭子

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