初めて福井駅に行ってみたら、凄まじいことになっていた
首都圏で生活する私にとって、福井は距離以上に遠い場所だった。北陸新幹線延伸前は、金沢でサンダーバードだかに乗り換えるか、東海道新幹線で米原で乗り換え、どちらにしろ3時間半……という感じだったからだ。
2024年3月16日に金沢~敦賀間が開業して事情は変化したが、やはりイメージというものがある。北陸は新潟・富山・石川で十分っすよ(笑) その感覚のまま生きていたら、福井県を刺激してしまった。古いイメージで福井をハブっている私に、真髄を知らしめるという。
・北陸新幹線
ということで、県主催のプレスツアーで福井を取材する機会を得た。今回は上野駅から北陸新幹線で向かうことに。
発車標には「たにがわ」「かがやき」「とき」とある。「のぞみ」と「ひかり」にばかり乗りがちなので新鮮だ。今回乗るのは「かがやき」。
北陸新幹線の普通車の枕は上下に動かせる。そのうちグリーン車とグランクラスにも乗ってみたい。
こうしてシート周りを整え、浅間山を眺めたり
車内誌を読んでいたら……
到着! やはり乗り換えなしで着くのは素晴らしいことだ。スーツケースを引きずっていると、乗り換えが1回あるだけで面倒だものな。3時間切っているのもいい。東京から本当に “近く” なったなぁ。
ただ関西方面が少し不便になったようで、そちらへも早急な延伸が望まれるだろう。まあ今回は東京側からの視点ということで。
・えっ
さて、こうして降り立った、人生初の福井駅。駅舎も広くてきれいだ。とりあえず改札に向かおう。おや……何か騒がしいぞ。
!?
出迎えすげぇぇぇぇえええ!! TV局の取材まで来ているぞ!! この様子は夕方のローカルニュースで放送され、私も一瞬だけ映っていた。
・北陸DC
これは何なのか? 福井駅は常時このテンションなのか? さすがにそのようなことはなく、じつはこの日は北陸三県をお得に観光できる「北陸デスティネーションキャンペーン(北陸DC)」の初日だったのだ!
北陸DCとは福井、石川、富山の自治体とJRグループ、そして旅行会社が一丸となって仕掛ける大型の観光キャンペーン。期間は2024年10月1日から12月31日までだ。
JRも参画しているということで、敦賀~城崎温泉間に「はなあかり」という新しい観光列車がデビューしたり、21日前までの予約で新幹線eチケットの50%割引で東京~福井・金沢・富山間を利用できる「eチケット早特21」の販売など、列車関連でもお得&楽しい企画が実施されているぞ。
他にも各種旅行関連企業の参画で特別な企画や割引が実施されたり、駅レンタカーが安くなったりと、どれも観光するなら利用しない手はない凄まじい種類のキャンペーンのラッシュ。
紹介しきれないので、詳しくはJRのキャンペーン用のページや、北陸DC公式サイト、あるいは北陸DCのプレスリリース(PDF)をご覧いただきたい。
・恐竜
さて福井と言えば、ぶっちゃけ、東京には恐竜の話しか届かない。渋谷のストリートで福井についてインタビューしたら、恐竜しか出てこなくてもおかしくない。
でも福井県さん、こういうパターンだと「実は福井は恐竜だけではない!」みたいな感じで、知られざる魅力を一発目にカマして意外性を……
担当者「福井と言えば、やはり恐竜!」
恐竜かい! ストレートすぎるだろ。もう少し変化球とか使ってもいいんですよ? 駅前の恐竜は都民どころか全国のネット民が知るところ。毎年冬にSNSで、氷河期が来たってバズってますもん。
駅前にいるティラノサウルスとトリケラトプスと、2007年夏に勝山市で発見され日本で初めて学名が付けられた竜脚類のフクイティタンでしょう?
担当者「フクイティタンもいますが、まずは新しい恐竜をお見せしますよ……!」
不敵にほほ笑む担当者に連れられて向かった先に居たのはスコミムス。チョイスが渋いと思ったら、福井県ではスコミムスと同じスピノサウルス科の恐竜の、歯の化石が発見されているそう。
そして福井駅前のいくつかの大きな恐竜のモニュメントは動く。私は全て普通の像だと思っていたのだが、一部はロボットだったもよう。
スコミムスは9月30日から稼働し始めたばかりで、駅周辺の恐竜のモニュメントとロボットは、これをもって計23体になったという。
数体いるだけだと思っていたが、23体ってマジかよ……! ストレートすぎると言ったが、対処不能な剛速球ならストライクを取れるみたいな脳筋プレイだ。
そのうち人間より恐竜を多くするつもりじゃないかと危惧したが、いちおうで現時点で予定していたものはスコミムスが最後ということらしい。しかし今後どうなるかはわからない。
駅の屋上広場にも恐竜がいる。ガラス越しに新幹線のホームが見えるようになっており、フクイティタンの映えスポットや
フクイベナートルの……
唐突な越前ガニPR!! 油断も隙もないな……。
ちなみに、福井県が力を入れまくっているこれら恐竜の誘引力は侮れない。県の担当者によると、北陸新幹線の延伸に伴い、小学生くらいの子供を持つファミリー層の来訪が増えたそうだ。
恐竜博物館がそれを牽引しているのではないかと考えているそう。わからなくもない話だ。小学生はだいたい恐竜が好きな習性を持っている。
親からしても興味の対象として好ましく、小さい子供が博物館に行きたがれば、それは家族総出で来ることになる。観光資源としての恐竜は、けっこう強いのかもしれない。
・福福館
駅について触れたら、こちらも外せない。けっこう凄いと思ったのが、駅の真横のハピリンという建物2階の物産館「福福館」だ。
物産館と言えば、一般的には干物とか缶詰とか酒とか、そういう名物を売っている場所だが、ここは内部にバイキングが入っている。駅真横の物産館としては珍しいスタイルだと思う。
持ち帰りも選べる。郷土料理屋なので、手軽に福井らしい食べ物を味わえる。朝の新幹線で東京からやってきて、とりあえず昼飯となったら、ここでいいのではないかと。
地元民と思しき人々も多く、料理はそこそこなペースで減り、すぐに出来立てが補充されていた。私も料理を頂いたが、全部美味しかった。駅真横の物産館で郷土料理のバイキング。これはとても有効な一手だ。
福井のPRに来たが、まだ駅周辺から出ることなくこの分量である。もしかしたら日本で最も観光要素のある駅の1つかもしれない。
参考リンク:北陸デスティネーションキャンペーン、福井県
執筆・撮影:江川資具
Photo:福井県
▼駅もハピリンも共にガラス多めで、光がよく入るデザイン。
▼屋内にこういうスペースが多いのも好印象。
▼駅屋上のベンチにも小さい恐竜。全てちゃんと学名の書かれたプレート付きなのが素晴らしい。
▼横から見えるえちぜん鉄道。面白い構造だと思う。
▼25年にアニメ化予定のライトノベル『千歳くんはラムネ瓶のなか』も、パネルなどが置かれていた。上手く聖地化されて観光に繋がることを期待したい。