上越市総合防災訓練に柿崎区の住民約2000人 想定は自然災害と原子力事故重なった「複合災害」
防災の日(9月1日)に合わせ、新潟県上越市は2025年8月30日、同市柿崎区で総合防災訓練を行った。同区が東京電力柏崎刈羽原子力発電所から半径5〜30km圏の避難準備区域(UPZ)にあることから、今年は自然災害と原発事故が重なった「複合災害」の発生を想定して実施され、参加者たちは万が一の有事にどう行動するかなどを学んだ。
《画像:柿崎コミュニティプラザに避難してきた住民たち》
「あらゆる災害に備える」をテーマに、複合災害発生時に住民が自ら適切な避難行動を取れるようにすること、災害に対する応用力の向上、市民の防災意識の高揚、関係機関の連携などを目的とした。柿崎コミュニティプラザをメイン会場に、同区51町内から住民約2000人をはじめ、9行政機関、25の民間団体など、合わせて約250人が参加した。
《画像:会場を視察する中川市長(右)》
この日は「大雨警報に続き、土砂災害前ぶれ注意情報を発表。七ヶ地区と下黒川地区に『警戒レベル3 高齢者等避難』を発令している中、地震が発生し、上越、柏崎両市で震度6強が観測した上、県内に「大津波警報」が発表された。柿崎区の山間部で複数の土砂崩れが発生しているほか、 柏崎刈羽原子力発電所では、原子炉の炉心冷却機能に異常が生じている」という、大雨・土砂崩れ・地震・原発事故が重なる想定で訓練が展開された。
《画像:子供たちも大勢参加した》
訓練では、緊急情報の一斉伝達やドローンを使った情報収集、住民避難、指定避難所や福祉避難所の開設や運営、住民、ペットの受け入れ、自衛隊車両による炊き出し、消防による中高層建物からの要救助者救出、土砂崩れによる孤立住民の救出など、多岐にわたる内容が実施された。防災資機材や各種車両の展示や起震車や消火器などの体験ブースも設けられた。
《画像:消火器体験ブース》
《画像:起震車も登場》
住民避難訓練は避難指示を聞いた住民たちが、徒歩で指定避難所へ続々と訪れた。コミュニティプラザでは地震による津波の心配もあるため、施設3階が避難所となった。到着した住民が名簿に記入するなどした。杖をついた高齢女性は家族と参加し、「3階まで歩いての避難は大変だったが、手すりがあったからなんとか昇ることができた」。住民とともに避難してきたペットの受け入れも行われた。犬2匹を連れて訪れた女性は「人が多くて(犬が)ちょっとパニックになっている感じ。(これからどう行動するのか)わからないので係の方の指示を待ちます」と話した。
《画像:避難指示を聞き、徒歩で避難してきた住民》
《画像:飼い主とともに犬も避難》
上越消防による中高層建物からの要救助者救出訓練は、多くの住民たち見守る中で実施された。地震の影響で建物内に取り残された人を救出する想定で、隊員たちがはしご車で屋上に上がり、要救助者を迅速に救い出した。
《画像:上越消防による要救助者救出訓練の様子》
炊き出し訓練では自衛隊車両で炊かれた白米で握られたおにぎりが参加者に配られた。
《画像:自衛隊車両による炊き出し》
原子力災害避難訓練は同区の黒川・黒岩地区の15町内を対象に行われ、住民19人が市が用意したバスで退避経由所となる頸城区のユートピアくびき希望館に避難した。同館では、東京電力の社員が放射性物質の付着を調べるスクリーニング(避難退域時検査)を実施。基準値を超えた場合に行う、ウエットティッシュを使った簡易除染も体験した。参加した男性は「原子力災害の訓練は初めてで、内容を町内の住民にどう伝えたらいいか悩む。これまで以上に調べて説明できるようにしたい」と話していた。
《画像:東京電力の社員によるスクリーニング》
訓練を終え、中川幹太市長は「地元町内、関係機関が連携し確認でき、一歩前に進んだ訓練だった。これからも繰り返していかないといけない」と述べた。