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絶滅の危機から復活した奇跡の宝石。「琵琶湖真珠」をびわ博で教えてもらいました

しがトコ

【琵琶湖真珠ワークショップレポート】

真珠といえば、海の宝石のイメージですが、じつは琵琶湖でも真珠が作られているのをご存知ですか?

「琵琶湖真珠」「ビワパール」「びわ湖パール」などと呼ばれていて、海の真珠とは違い、琵琶湖で育つ真珠には、また違った個性があるんです。

しかも、琵琶湖真珠を生み出す貝・イケチョウガイは、絶滅危惧種にも指定されており、さらに琵琶湖を守る力も秘めているとか?!

その背景や魅力を探るため、琵琶湖博物館へ行ってきました。

琵琶湖博物館で学ぶ「琵琶湖真珠」

秋晴れの気持ちいい日。湖岸に建つ「琵琶湖博物館」を訪れました。
その理由は、琵琶湖真珠のワークショップが開催されるから。

このワークショップは、NEXT BIWAKO CREATORS(略称=NBC)
というプログラムのひとつで開催されているもの。
10~20代を対象にしたプログラムで、参加メンバーはみんな琵琶湖の魅力を「知りたい」「伝えたい」と考えて参加してる人ばかり。
熱い眼差しを、講師に向けています。

「これがイケチョウガイで・・・」

まず説明を始めてくれたのは琵琶湖博物館の学芸職員・菅原さん。
底生生物学分野担当として、主に貝を専門に研究されてるそう。
琵琶湖の貝を専門に研究している方がおられることに、そもそも驚きです。

「ぜひ、イケチョウガイを手にとって見てみてください」

ということで、実物が各テーブルを回されていきます。

……って、でっかい!

感覚としては手の平サイズ以上。
こんな貝が琵琶湖にいて、しかも真珠を作ってるんですか!?
琵琶湖の生態系が、にわかに信じられません。

ここから、琵琶湖真珠について、より詳しく教えてもらうことになりました。

海の真珠と琵琶湖真珠の違い

「真珠といえば白くて丸いイメージがありますが、琵琶湖真珠の最大の特徴は、形がバラバラなこと」と話をしてくれたのは、生産者と連携しながら、琵琶湖真珠を地域の特産品としてPRする「ビワコパールサプライズ」の廣瀬香織さんです。

琵琶湖真珠は一般的な真珠養殖と違い、真珠の中心となる「核」を用いないため、それぞれ形が異なる真珠が誕生します。

この同じ形が一つもない個性的な見た目が、琵琶湖真珠の人気の要因です!

琵琶湖の水と魚を守る「イケチョウガイ」

琵琶湖真珠は琵琶湖の固有種である「イケチョウガイ」から作られます。

淡水二枚貝であるイシガイ科の仲間で、1930年代から琵琶湖での真珠養殖の貝として利用されてきました。

その繁殖方法も個性的で、受精卵から生まれた幼生(赤ちゃん)はハゼ類やドジョウなどの体に寄生し、やがて稚貝として成長していきます。

そして反対にこのイケチョウガイを利用しているのがタナゴなどの魚たちです。

タナゴは貝の中に卵を産む性質があり、ふ化した魚は泳げるようになるまで貝の中で安全に過ごすことができます。

さらに水質汚染や悪臭の原因でもある、アオコといった付着藻類にとっても貝の体は絶好の生息地。

イケチョウガイに付着した藻を他の貝が食べることで、なんと、琵琶湖の水質浄化に一役買っているんです!

普段は目立たないながらも、琵琶湖の環境や魚を守るために欠かせない存在なんですね!

琵琶湖真珠の危機

しかし琵琶湖真珠を取り巻く環境は、様々な外的要因によって脅かされてきました。

ザリガニやヌートリアによるイケチョウガイの捕食だけでなく、幼生のよりどころとして相性がいいハゼ類がブラックバスに食べられるなど、外来種による被害が深刻化。

さらにはコレクターによる売買や、赤潮の発生など様々な要因で数を減らし、イケチョウガイは現在絶滅危惧種に。

純粋なイケチョウガイは琵琶湖では絶滅し、琵琶湖真珠は中国種と交配したハイブリッド種から作られています。

真珠を作り、琵琶湖を守る

最盛期は40憶円を誇ったという琵琶湖での淡水真珠産業も、2020年には14㎏しか生産されていません。

そんな琵琶湖真珠を守り魅力を知ってもらうべく、廣瀬さんのビワコパールサプライズでは様々な取り組みを行っています。

そのひとつが「オーナー制度」。

琵琶湖博物館そばの赤野井湾にある、真珠養殖場の貝を買って、核入れ体験などをして「MYパール」を育てる制度です。

取り出した真珠は作家にオーダーし、イヤリングやピアスに加工してもらえることから、今注目を集めているのだそうです!

「琵琶湖で真珠をつくることは、美しい琵琶湖を守ること。琵琶湖真珠を通じて『自分ごと』として考えてほしい」そう廣瀬さんは話していました。

貝殻でオリジナルボールペン作りにチャレンジ!

一般的な真珠養殖と同じく、琵琶湖真珠も小さな貝から取り出された、細胞片を母貝に挿入することで作られます。

細胞片を取り出された後、本来ならそのまま廃棄処分となるこの貝も、魅力ある素材にできないかと、新たに始められた試みがあります。

そのひとつがこの貝の殻を使ったオリジナルボールペン作りです。

ワークショップの最後に、参加者も体験してみることに!

ボールペンの作り方については、天然石アクセサリーの制作体験や販売を行っているアクセサリーショップ『trois’r(トロワール)』代表の目近紗奈江さんからレクチャーを受けます!

机には細かく砕いた貝殻などのパーツがずらり。

それらをピンセットでつまみつつ、ボールペンの筒に詰め込んでいきます。

「ボールペンの色はどれにしようかな?」
「ピンセットで入れづらい……」
「指で直接詰めたほうが楽かも」

若者たちは悪戦苦闘しつつも楽しみながらチャレンジしていて、思い思いのデザインでボールペンを組み上げていきました。

そして完成したボールペンがこちら!

こんなきれいなボールペンが手元にあれば、勉強や宿題もはかどる……かも!

装飾として活用されつつある貝殻は、ほかにも中和剤や肥料としての用途も期待されています。

しかし既製品に対してコストが高く、まだまだ研究段階とのことです。

貝の活用方法について質問しつつ、取材中ずっと気になっていたことを思いきって菅原さんに尋ねてみました。

「イケチョウガイって、食べられますか?」

「泥と毒素を抜いて素材のくさみを徹底的に消せば、食べられないことはないですね」とのことでした!

貝から生まれる琵琶湖の未来

「貝は地味かもしれませんが、意外と大活躍する生き物です。琵琶湖博物館に来られた際は、ぜひ貝の姿も探してみてください」
菅原さんは最後にそう話していました。

もし琵琶湖真珠産業が活発になれば、イケチョウガイの力を借りて、琵琶湖の環境や生態系を守ることにつながるかもしれません。

真珠のように輝く琵琶湖の未来が貝から生まれてくるかどうかは、これからの私たちの行動にかかっています。

記事を書いた人結城弘/滋賀県出身。小説家・ライター。滋賀が舞台として登場する小説『二十世紀電氣目録』『モボモガ』を執筆。趣味は旅行、レトロ建築巡り、ご当地マグネット集め、地酒。noteにて旅ブログなどを更新中。各SNS⇒ X(旧Twitter)/ Instagram

※この記事は、滋賀県の「びわ湖の日情報発信事業」の一貫で、『しがトコ』が企画・取材を担当し制作しました。

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「そもそも、海の真珠と、湖の真珠は貝の種別が違ってて・・・」

琵琶湖真珠の説明を『

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