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【高齢者の手の震え】原因と対策5選!本態性振戦とパーキンソン病の違いも徹底解説

「みんなの介護」ニュース

内藤 かいせい

高齢になるにしたがって、手が震えるのは自然な現象です。しかし、その原因はさまざまで、適切な対処法も原因によって異なります。

本記事では、高齢者の手の震えの主な原因と対策について、特に多く見られる本態性振戦とパーキンソン病に焦点を当てて解説します。介護をされているご家族や介護従事者の方々に、手の震えへの理解を深めていただき、適切なケアや対応につなげていただければ幸いです。

高齢者の手の震えの原因は?

高齢者の手の震えにはさまざまな原因がありますが、最も多いのが本態性振戦です。ここでは、本態性振戦を中心に、高齢者に見られる手の震えの主な原因と種類について詳しく解説します。

原因不明の手の震えは「本態性振戦」

体の一部が意思に反して動くことを「振戦」といいますが、特定の原因がなく発生する手の震えのことは本態性振戦と呼んでいます。これは高齢者に最も多く見られる手の震えの原因であり、40歳以上の約4%に見られるとされています。さらに、年齢が上がるにつれてその発症率は高くなります。

本態性振戦の特徴として、以下のようなものが挙げられます。

動作時に震えが強くなる
両手に対称的に現れることが多い
精神的なストレスや疲労で悪化する
アルコールを摂取すると一時的に症状が軽減する

本態性振戦は、日常生活に大きな影響を与える可能性があります。例えば、食事の際にスプーンや箸が使いづらくなったり、手が震えて字が書きづらくなったりすることがあります。また、コップを持つときにこぼしてしまうなど、生活の質を低下させる原因にもなります。

本態性振戦の発症メカニズムは完全には解明されていませんが、遺伝的な要因が関与していると考えられています。家族内で同様の症状が見られることも少なくありません。

パーキンソン病による手の震え:本態性振戦との違い

パーキンソン病も高齢者の手の震えの主要な原因の一つです。

パーキンソン病は、脳内のドーパミン(神経伝達物質の一種)を作るる細胞が減少することで起こる、進行性の神経変性疾患です。

パーキンソン病による手の震えは、本態性振戦とは異なる特徴を持っています。

安静時に震えが強くなる
片側から始まることが多い
「丸薬丸め運動」と呼ばれる特徴的な震え方をする
震え以外に、動作の緩慢さや筋肉の硬直などの症状を伴う

パーキンソン病の発症率は年齢とともに上昇し、65歳以上の約1%が罹患しているとされています。

本態性振戦とパーキンソン病の違いを正確に見分けるのは専門医でも難しい場合があります。そのため、手の震えが気になる場合は、早めに神経内科の専門医を受診することが重要です。

その他の高齢者の手の震えの原因

本態性振戦とパーキンソン病以外にも、高齢者の手の震えには様々な原因があります。主なものとして以下が挙げられます。

生理的振戦

誰にでも起こりうる一時的な震えで、寒さや過度の緊張、重いものを持ち続けた時などに見られます。一般的に病的なものではありません。

薬剤性振戦

特定の薬剤の副作用として手の震えが現れることがあります。例えば、喘息の治療薬や精神疾患の治療薬の一部で、このような副作用が報告されています。

甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰に分泌されることで、手の細かい震えが起こることがあります。他にも、動悸や体重減少などの症状を伴うことが特徴です。

アルコール依存症

長期的な大量飲酒や急激な断酒によって、手の震えが現れることがあります。特に朝方に症状が強くなる傾向があります。

小脳の疾患

小脳に問題がある場合、意図的な動作をしようとしたときに震えが強くなる「企図振戦」が見られることがあります。

これらの原因による手の震えは、それぞれ特徴的な症状や付随する症状があります。適切な診断と治療のためには、専門医による詳細な検査が必要です。

手の震えが起こったらどうする?

高齢者の手の震えを適切に管理するためには、正確な診断が不可欠です。ここでは、手の震えの種類を見分けるポイントや、専門医による診断の流れ、そして専門医への相談が必要なタイミングについて解説します。

手の震えの種類を見分けるポイント

手の震えの種類を見分けるには、以下のようなポイントに注目します。

震えが起こるタイミング 動作時振戦:特定の動作をしているときに震えが強くなる
安静時振戦:じっとしているときに震えが強くなる
姿勢時振戦:特定の姿勢を保っているときに震えが現れる
震えの部位と左右差 両側性か片側性か
手以外の部位(頭、声など)にも震えがあるか
震えの頻度と大きさ 細かい震えか大きな震えか
震えの速さ(1秒間に何回程度震えているか)
震えに影響を与える要因 精神的なストレスで悪化するか
アルコール摂取で一時的に改善するか
震え以外の症状の有無 筋肉の硬直や動作の緩慢さがあるか
バランスの悪さや姿勢の変化があるか

これらのポイントを観察することで、本態性振戦とパーキンソン病、その他の原因による震えをある程度見分けることができます。しかし、最終的な診断は専門医によって行われる必要があります。

専門医による手の震えの診断

手の震えの診断は、通常、神経内科の専門医によって行われます。診断の流れは以下のようになります。

①問診

医師は患者さんやご家族から、以下のような情報を詳しく聞き取ります。

震えの発症時期と経過
震えの特徴(上記の見分けるポイントに関する情報)
日常生活への影響
家族歴
服用中の薬剤
その他の症状の有無
②神経学的診察

医師は、実際に患者さんの震えの様子を観察し、以下のような検査を行います。

震えの観察(安静時、姿勢保持時、動作時)
筋力検査
反射検査
協調運動検査
歩行状態の観察
③画像検査

必要に応じて、以下のような画像検査が行われることがあります。

脳CT検査:脳の構造的な異常を確認
脳MRI検査:より詳細な脳の構造を確認
DATスキャン:パーキンソン病の診断に有用な特殊な検査
④血液検査

甲状腺機能や肝機能、ビタミンB12の欠乏などを確認するために血液検査が行われることがあります。

⑥その他の検査 筋電図検査:筋肉の電気的活動を測定
神経伝導検査:神経の伝導速度を測定

これらの検査結果を総合的に判断し、専門医が最終的な診断を行います。

専門医への相談が必要なタイミングと準備

手の震えが気になる場合、以下のようなタイミングで専門医への相談を検討しましょう。

日常生活に支障が出始めたとき 食事や書字が困難になってきた
趣味の活動ができなくなってきた
社会生活に支障が出始めた
震えが徐々に悪化しているとき 震えの頻度や強さが増してきた
震えの範囲が広がってきた(例:手だけでなく頭や声にも震えが現れてきた)
震え以外の気になる症状が現れたとき 動作が遅くなってきた
姿勢が前かがみになってきた
バランスが悪くなってきた
不安や心配が強くなったとき 震えの原因が気になって日常生活に支障が出ている
将来の生活に不安を感じている

専門医の診察を受ける際は、以下のような準備をしておくと、より適切な診断につながります。

症状の記録 震えの特徴(いつ、どのような状況で起こるかなど)
震えの程度や頻度の変化
日常生活への影響
服用中の薬剤リスト 処方薬だけでなく、市販薬やサプリメントも含める
家族歴の確認

パーキンソン病のほとんどは非遺伝性(孤発性)で、遺伝はしませんが、5〜10% の患者さんには家族歴があり、これを家族性(遺伝性)パーキンソン病とよびます。最初に出る症状は歩行障害が多く、ふるえはあまりありません。睡眠によって症状の改善がみられるという特徴があります。

親族に同様の症状がある場合は伝える
動画撮影(可能な場合) 震えの様子を動画で撮影しておく
質問事項のメモ 診察時に聞きたいことをあらかじめメモしておく

専門医への相談は、適切な診断と治療につながる重要なステップです。早めの受診を心がけ、症状の進行を抑えたり、生活の質を維持したりすることが大切です。

高齢者の手の震えに対する治療法と日常生活での対策

高齢者の手の震えに対する治療法は、原因によって異なります。ここでは、最も一般的な本態性振戦の治療法を中心に、難治性の震えに対する治療法、そして日常生活での対策について解説します。

本態性振戦の治療法:薬物療法を中心に

本態性振戦の治療は、主に薬物療法が中心となります。ただし、軽度の場合や日常生活への影響が少ない場合は、経過観察のみで様子を見ることもあります。

主な薬物療法には以下のようなものがあります。

βブロッカー

プロプラノロールなど のβブロッカーは、本態性振戦の治療に最もよく用いられる薬剤です。約50-60%の患者さんで効果が見られるとされています。

作用機序:交感神経系の働きを抑制することで震えを軽減
主な副作用:低血圧、徐脈、めまい、疲労感
抗てんかん薬

プリミドンやトピラマートなどの抗てんかん薬も本態性振戦の治療に用いられることがあります。

作用機序:神経の過剰な興奮を抑制することで震えを軽減
主な副作用:眠気、めまい、吐き気、認知機能への影響
ベンゾジアゼピン系薬剤

クロナゼパムなどのベンゾジアゼピン系薬剤は、短期的な使用で効果が期待できます。

作用機序:神経の働きを鎮静化することで震えを軽減
主な副作用:眠気、めまい、依存性

これらの薬物療法は、個々の患者さんの症状や全身状態に合わせて選択されます。高齢者の場合、副作用のリスクが高くなる傾向があるため、慎重な投与が必要です。また、効果が現れるまでに時間がかかることもあるため、医師の指示に従って継続的に服用することが大切です。

3-2. 難治性の震えに対する外科的治療法

薬物療法で十分な効果が得られない難治性の震えに対しては、外科的な治療法が検討されることがあります。主な外科的治療法には以下のようなものがあります。

脳深部刺激療法(DBS: Deep Brain Stimulation)

脳深部刺激療法は、震えに関与する脳の特定の部位に電極を埋め込み、微弱な電気刺激を与える治療法です。

適切な患者さんを選択した場合、70-90%の症例で震えの改善が見られるとされています。

集束超音波治療(FUS: Focused Ultrasound Surgery)

集束超音波治療は、頭蓋骨の外から特殊な超音波を照射し、震えに関与する脳の一部を熱凝固させる治療法です。適応となる患者さんでは、70-80%程度の震えの改善が期待できるとされています。

これらの外科的治療は、薬物療法で十分な効果が得られず、日常生活に著しい支障がある場合に検討されます。ただし、高齢者の場合は全身状態や認知機能の状態によって適応が慎重に判断されます。また、これらの治療法は専門的な医療機関でのみ実施可能です。

工夫次第で手の震えがあっても快適に過ごせる!

手の震えがある高齢者の方の日常生活をサポートするため、以下のような対策や工夫が効果的です。介護者の方は、これらの点に注意しながら支援を行いましょう。

食事時の工夫 重みのある食器を使用する:軽い食器よりも震えの影響を受けにくいです。
滑り止めマットを使用する:食器の下に敷くことで、安定性が増します。
食器のエッジを高くする:専用の食器や食器エッジガードを使用することで、こぼれにくくなります。
スプーンやフォークの柄を太くする:握りやすくなり、コントロールしやすくなります。
飲み物を飲む際の工夫 ストローを使用する:直接口に運ぶ必要がなくなります。
両手でカップを持つ:安定性が増します。
こぼれにくい蓋付きカップを使用する:専用のカップを利用することで、こぼれる心配が減ります。
着替えの工夫 マジックテープやスナップボタンを活用する:細かい動作が必要なボタンの代わりに使用します。
前開きの服を選ぶ:かぶる服よりも着脱が容易です。
滑り止め付きのハンガーを使用する:服が落ちにくくなります。

日常生活での全般的な工夫 電動歯ブラシを使用する:手動のものよりも効果的に歯磨きができます。
タッチパネル式の電化製品を選ぶ:ボタン操作よりも簡単に使用できます。
音声認識機能を活用する:スマートフォンやタブレットの操作が容易になります。
環境整備 手すりの設置:バランスを取りやすくなり、転倒リスクを軽減できます。
滑りにくい床材の使用:転倒予防に効果的です。
十分な明るさの確保:視認性が向上し、動作がしやすくなります。

これらの工夫や対策は、個々の状況に応じて適切なものを選択し、徐々に取り入れていくことが大切です。また、介護者の方自身の健康管理も忘れずに行いましょう。

介護者の方は、高齢者の方の自尊心を傷つけないよう配慮しながら、これらの対策や工夫を提案し、一緒に試してみることが重要です。また、定期的に医療機関を受診し、症状の変化や新たな対策の必要性について相談することをおすすめします。

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