「沖縄から日本の未来を」”ジャングリアの観光革命” ブランド力の差、観光人材育成、課題解決しともに歩む街づくり…加藤健史氏”6つの取り組み”
「TSUNAGU CITY 2025 in NAGO」にて、株式会社ジャパンエンターテイメント 代表取締役 加藤 健史氏が登壇。 「いよいよ今年開業!ジャングリアが描く観光革命」をテーマに、新たに開業するテーマパーク設立の意義やコンセプトなど、テーマパークとともに歩む街づくりについて説明しました。
テーマパークとともに歩む街づくり
「JUNGLIA OKINAWA(ジャングリア沖縄)」を運営する「株式会社ジャパンエンターテイメント」の、これまでの取組みについて説明がありました。ミッションは、「沖縄から日本の未来をつくる」です。 マーケティングとエンターテイメントの力で、その土地にある魅力を、消費者が行きたい・ほしい・食べたいと思う価値に転換し、旅行者や住んでいる人の人生を豊かにしたい、という想いでミッションを掲げました。 観光立国日本の発展には、地域における発展が必要不可欠ですが、さまざまな問題に直面しています。いろいろな地域の価値を消費者がほしいと思う価値に転換するためには、やるべきことがたくさんあります。そしてブランド力を上げていく活動をしなければなりません。 しかし、ブランド力が弱かったり、素晴らしい観光施設や観光体験があっても人材不足の問題があったりと、地域にいいものがあっても、消費者に届かないといった問題があります。 また交通においては、オーバーツーリズムにより交通渋滞が発生する問題もあります。さらには、観光地や域外にいろいろな投資があっても、そのビジネスでの利益が地域に還元されない、地域にお金が落ちないといった課題もあります。 こういった課題は沖縄にもあると考え、先ほど掲げたミッションの実現に向けて解決できないか取り組んできました。
取組み01.北部に長く滞在する仕組みづくり
沖縄は、2018年にハワイと同等数の観光客数1000万人に到達し、右肩上がりで順調に観光客数獲得が進んでいます。2024年の集客においても、1000万人近くの観光客が来たと発表されています。 ブランドの観点で考えるともっと観光客が獲得でき、消費単価を上げていけるといえます。沖縄を中心に4時間圏内に20億人の人口がいるなかでの1000万人と、4時間圏内に海しかないハワイにおける1000万人の差は、まさにブランド力の差だと考えられます。 また、沖縄の消費単価はハワイの半分です。ジャングリアのような集客施設やほかの集客施設の体験、さまざまなコンテンツがまだ揃っていないなかで、長く滞在する仕組みに改善の余地や伸びしろがあります。 沖縄の観光はどちらかというと南側に重心があり、多くの観光客は美ら海水族館や古宇利島、そして周辺の施設に行ったあと南に帰ってしまう、素通り観光の実態があります。 ジャングリアは平均滞在時間を6時間ほどに設定しており、美ら海水族館の平均滞在時間は1.5時間ほどです。このふたつをあわせ、「だったら北部に1泊したい」、そういう需要を構造的に感知しながら、長く北部に滞在する構造をつくっていきます。
取組み02.沖縄のブランド価値向上
株式会社ジャパンエンターテインメントの筆頭株主である株式会社刀と沖縄県とで、沖縄県のブランド強化に関する連携協定を結びました。沖縄県は観光施策に対し、いち早くマーケティングが必要であると考え、相談を受けました。 どうやったら観光客をしっかり獲得できるのか、戦略策定に参加し側面支援をしました。沖縄県ではその後、国内・海外とも大規模な消費者調査を行い、沖縄に来る人が沖縄になにを求めているのかを特定し、今後の沖縄のブランド戦略を掲げています。 それが2024年3月に発表された「おきなわブランド戦略」です。マーケティングの内容を理解しながら戦略的にプランがねられていること自体、全国各地の行政のなかでも珍しく、本当に素晴らしいです。 特に素晴らしい点は、観光の部局だけではなく、農林水産や商工などの部局も同時に連携協定を結んでいることです。観光だけにとどまらず、旅行者が実際に体験するであろう関連部局で、同じ戦略から紐づいた価値をどうやって叶えるのか、同時に考え横展開をしています。 本来であれば、旅行者が沖縄県から去るときに本当によかったと思うためには、ひとりの旅行者に対しあらゆる産業においてずっと同じ価値のアプローチを、それぞれの方法で達成しなければなりません。 沖縄県では、「からだ充ちる、こころ踊る」価値を提供したいということをうけ、ジャングリアのコンセプトPower Vacance!!の興奮・贅沢・解放感は、沖縄県のブランドの一部を方法論として、大自然を使いご提供するという考え方です。 旅行者が求めている価値を創出することによって、沖縄のブランドが強くなっていく。そこをめざす必要があると思っています。
取組み03.高度観光人材育成構造の立ち上げ
観光業で働きたいと思う人は沖縄県のなかで17%ほどと、観光立県である沖縄において、将来の観光を担う人材がどんどん不足しています。コロナにより、観光産業におけるブランドイメージがかなり低下している側面があります。 ブランドのイメージを改善しなければ、観光業で働きたい人が増えていかないので、本事業としてチャレンジしていきます。 そこで産学官の連携を持ち、高度観光人材育成構造を立ち上げました。学生に観光の学びの場、そして実践の場としてジャングリアを提供するとともに、教育機関が大きなインターンシップのプログラムを準備中です。そして、国や自治体には、学生があんしん・あんぜんに生活し、プログラムに参加できるような環境整備を相談しています。 4か月から6か月の長期インターンシップを予定しており、学生はジャングリアだけでなく、さまざまなタイプの宿泊施設や集客施設でいろいろな体験をします。そしてどんな観光の方向性に自分の強みがあるかを理解するとともに、実践経験を積んで自身の価値を引き上げて世に羽ばたいていく仕組みづくりをしていきます。 また、インターンシップを受けようとすると単独ではなかなか難しいため、チーム結束して受入態勢の整備と、それぞれの事業者にあわせた学びの場所を協力しながら進めていきます。 これに賛同いただき、まずは名桜大学と包括連携協定を結びました。また沖縄県外の大学では、立命館アジア太平洋大学と連携協定を結びながら準備を進めています。そして、2025年の初年度の秋ごろに受け入れをスタートする予定です。
取組み04.やんばる観光高度人材育成教育施設
インターンシップの人が生活する環境においては、内閣府から沖縄振興推進事業の選定をいただき、研修センターをつくる予定です。やんばる観光高度人材育成教育施設として、研修施設・会議室のほかに、100室の宿泊施設も兼ねています。 ジャングリアに来る人や、ほかの施設で研修をする人が施設を使い、去ってまた新たな人が来るといった形で循環しながら、研修センターをとおしていろいろな観光人材が育成されることをめざしていきます。
取組み05.交通課題解決
沖縄県の交通では、65%もの人が主にレンタカーを利用します。一方で、沖縄の観光を体験した人から、交通渋滞や交通の不便さをぜひ改善してほしいという要望があります。 ジャングリア開業にあわせて、2020年から複数回にわたるさまざまな交通シミュレーションをとおし、改善案が多数出てきました。 今回実現すべき点は、ジャングリアに一極集中することで起こる交通渋滞の緩和です。自家用車の抑制化・分散化・円滑化が必要だと考えています。具体的にはパーク以外の場所で、駐車場を少し離れたところに獲得し、空港やリゾートエリア・港・駐車場からシャトルバスを運行し、ジャングリアをとおして循環をすることで、交通渋滞の緩和を図っていきます。 ジャングリアに来る人のみならず、周辺の施設にもたくさん訪れていただく仕組みづくりも考えています。
取組み06.稼ぐ力の向上
観光客数が右肩上がりにずっと伸びていくなかで、沖縄県民一人あたりの所得はずっと横ばいの状況です。つまり、観光の収入が沖縄県民の所得につながっていかない現実があります。 ジャングリア開業をとおしてたくさんの取引が発生したり、地域に協力いただいたりのなか、我々の観光収入が地域の人にどうやって還元していけるのかも、しっかり設計していかねばなりません。 ジャングリアの体験のなかには、我々自身でできることと、地域の協力が必要なことがあります。 そこで多くの企業からの要望もあり、2024年からいろいろな提案を受ける登録サイトを立ち上げました。すでに500もの会社に登録していただき、そのうちの250ほどが沖縄の会社です。 たとえばパークで展開するレストランでは、70%が地元の食材を使ったメニューの開発を進めており、お土産も地域の技術を使って開発しています。SPAで使うアメニティには月桃を使っていますが、年間の生産量を増やして生産していただく相談もしています。 このように、地域にある価値を消費者の価値に変えていく転換の場所としての役割を果たしていきたいと思っています。
沖縄から日本の未来をつくる
これらの課題は、日本の観光に共通する課題です。観光のフロントランナーである沖縄からこの課題を解決するというのは、まさに観光産業全体にとっても発展に寄与するものであり、ひいては日本を強くしていくものだと信じています。 ジャングリアをとおして地域にある価値を高めながら、沖縄のブランド価値を向上させていく取組みと、高度な観光人材が安定的に、持続的に世のなかに輩出されるような仕組みづくりとしての役割。さらに交通渋滞の対策、利便性の向上、そして地域の価値を消費価値に変える、そんな拠点としての稼ぐ力の向上。これらを循環させながら課題を解決していき、ジャングリアを起点に日本の観光が少しでも変わっていく一助になればと考えています。 以上のような考えをもち、観光課題の解決を含めて、沖縄から日本の未来をつくるというミッションを掲げて事業を進めていきたいと思っています。
走り続けた10年以上の月日
USJの沖縄版が北部にできるらしいと最初に耳にしたのは、2013年ごろでした。そこから10余年もの月日をかけ、紆余曲折ありながら実現までもっていく力強さと、沖縄の可能性を信じて走り続けた時間から、本当にパワフルな人たちが創り上げたテーマパークができるんだと思えます。 「沖縄から日本の未来をつくる」。この人たちなら本当にやり遂げられそうだ。そんな期待もこめて、オープンが待ち遠しいです。