【福岡の立ち飲み・角打ち探訪記】老舗酒屋の角打ちから絶品ポテサラ、市場直送の刺し盛りまで(薬院オススメ3選)
西鉄と地下鉄が乗り入れる「薬院駅」の住所は実は渡辺通で、町名としての薬院の中心は「薬院大通駅」である。僕は薬院で20年ほど事務所を借りていたので、この界隈はほぼホームタウンといってよく、顔馴染みの店の多い。ここ数年は店主の高齢化などで閉店する店もあり、古いビルやアパートをリノベーションした新しい飲食店も増えている。時代とともに街が代替わりしていく中、創業90年を超える老舗酒屋が薬院六つ角にある「こば酒店」だ。
1.居酒屋顔負けのメニューが揃う、老舗酒店の角打ちスペース
昭和5年創業という「こば酒店」が角打スペースを新設したのは20年ほど前。当時、徒歩数分の場所に事務所があったので、仕事終わりによく通ったものだ。中央のテーブルはたいてい顔見知りの常連客が占めていて、まったく利害関係のない酔っ払い同士でバカ話に興じていた。久しぶりに訪れた角打ちは常連客の顔ぶれこそ変わっていたものの店の造りや雰囲気はそのままで、午後5時の開店直後から相変わらずの賑わいぶりだ。
ここは小さなザルに現金を入れてその都度支払うキャッシュオンシステムで、まずは「ちょいのみ生ビール」(220円)で喉を潤す。日本酒は一杯290円〜、焼酎は420円〜と、さすがに酒屋の角打ち価格。カウンターのワインクーラーには日替わりボトルが10種類ほど冷やされて、ときにはレアな銘柄もお目見えする。
もともと酒屋なので酒が売るほどあるのは当たり前だが、驚くべきは料理の豊富さだ。手書きのメニューには40種類以上の料理が並び、居酒屋顔負けの品揃え。名物の「あぶりホタルイカ」(300円)にはライターが付いてきて、自分で炙って食べるスタイル。こんなアテで酒が飲めるのも、角打ちならではの楽しみだ。
2.クラフトビールにナチュラルワイン、国産のジンやサワーまで
次に向かったのは、薬院大通駅近くにある三角形の古いビル。角には僕が学生の頃から通っていた「コサイン」という喫茶店があったのだが、残念ながら数年前に閉店してしまった。その他の店も最近多くが入れ替わり、なんと昨年2軒の立ち飲み屋がオープンした。その1軒が「カクウチデリカ あまの」である。店主の天野勇希さんは小倉の和食店でアルバイトしたのを皮切りに、福岡で居酒屋の店長などを歴任。昨年5月にこの店をオープンした。
まずは「国産レモンサワー」(650円)に、名物の自家製ニラ醤油をたっぷりとのせた「冷奴」(400円)を注文。このニラ醤油がバカウマで、スッキリとしたレモンサワーとの相性も抜群だ。自家製のぬか漬けやぬか炊きなど、同じ北九州出身者としては懐かしい味が食べられて嬉しい限りである。
僕は立ち飲み屋や居酒屋でよくポテサラを頼むのだが、ここの「スモークポテトサラダ」(600円)は、かなり好みの味。燻製玉子といぶりがっこを混ぜ込んだポテサラの上に、さらに燻製玉子をのせたスモーキーな逸品で、ハイボールや香り高い国産クラフトジンによく合う。クラフトビールやナチュラルワイン、珍しい国産スピリッツを使ったサワーも充実しており、立ち飲みながらじっくり腰をすえて飲みたくなる一軒だ。
3.毎朝長浜市場で買い付ける刺身は必食!
最後の一軒は同じビルの反対側に入口がある「立ち飲み モンブラン」へ。以前、UMAGAの記事でも紹介したとおり、店主の太田栄治さんは「食堂えぶりお」以来、数々の飲食店を手がけてきた料理人。昨年10月に初めての立ち飲み業態となる「モンブラン」を開店し、自らオープンキッチンに立っている。
ここで絶対に食べたいのが、毎朝太田さんが長浜市場で買い付けている鮮魚を使った刺身だ。値段はその日の仕入れによって異なるが、「刺身3種盛り」が1,100円〜というのは、ちょっとあり得ないほどのお値打ち価格。この日は玄海産の天然鯛に長崎産本マグロの中落ち、さらに当日獲れたばかりの"日戻りカツオ"など、鮮度バツグンのオンパレード! そこいらの海鮮居酒屋と比べても、これほど新鮮な魚が食べられる立ち飲み屋を他に知らない。
刺身以外の料理も、何を食べてもまず外れがない。名物の「肉厚アジフライ」や「エビフライ」などの揚げ物、「ハムエッグ」といった鉄板料理も絶品で、酒が進んで仕方なし。立ち飲みのジャンルを超えて、薬院界隈で飲み食いするならまず候補に挙げたい良店だ。
こば酒店
福岡市中央区薬院1-12-18
092-741-1504
カクウチデリカ あまの
福岡市中央区薬院2-2-2 薬院ビル1F
立ち飲みモンブラン
福岡市中央区薬院2-2-2
090-4778-0852