Travis Japanの七五三掛龍也と吉澤閑也がW主演「緊張と同時にワクワクしています」~ミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』が開幕
Travis Japanの七五三掛龍也と吉澤閑也がダブル主演するPARCO&CUBE produce 2024 ミュージカル『ダブリンの鐘つきカビ人間』が2024年7月3日(水)、東京・国際フォーラム ホールCで幕を開けた。SPICEでは開幕前日に行われた取材会とゲネプロ(公開稽古)の様子をレポートする。公演は7月10日(水)まで同地で、20日(土)から29日(月)まで、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホールで上演される。
同作は2002年、2005年、2015年と上演を続けた伝説の舞台『ダブリンの鐘つきカビ人間』を、ミュージカル化したもの。ユーモアと切なさと残酷さが混じり合ったダークファンタジーを得意とする後藤ひろひとの作品で、ミュージカル『チャーリーとチョコレート工場』や「東京2020 パラリンピック」開会式の演出も務めたウォーリー木下が脚色と演出を担当。後藤と木下は初タッグで、9年ぶりの上演が実現した。
物語の舞台は中世アイルランドを思わせる不思議な土地。深い霧が立ちこめた山中で、立ち往生した旅行中の聡(吉澤)と真奈美(加藤梨里香)は、老人(松尾貴史)が暮らす洋館に一夜の宿を求めた。老人の話に耳を傾ける中、舞台は過去の世界へ。不思議な病が襲う村には、周囲から疎まれ孤独な醜い姿のカビ人間(七五三掛)が暮らしていた。ある日、思っていることの反対の言葉しか口にできない娘・おさえ(伊原六花)と出会ったことから、美しく悲しい物語へと展開していく――。
初日を翌日に控えた取材会では、少し緊張した様子の七五三掛が「明日初日です。今回初めて閑也とダブル主演ということで、緊張と同時にワクワクしていて、明日が楽しみです」と意気込み。カビ人間の“親友”であるハットを回すパフォーマンスについては「先生に教えてもらって難易度の高い技だったり、日常的にハットを使っているように見せるのに、2週間かかりました。帽子を持ち帰って、野球で言うところの素振りみたいに。1日50回やると決めていて、徐々にできるようになってからは、カビ人間のスイッチが入るようになりました」と自在に操れるようになるまでの苦労を明かしていた。ハットパフォーマンスの技術取得以外にも、「メイクが大変」と振り返り「カビメイクには1時間20分くらいかかるんです。メイクさんにも付けていただいているんですけど、自分でもこの小さいつぶつぶを付けているんですよ」と顔を指さし、細かく説明していた。
七五三掛の言葉を横で聞いていた吉澤は「聡はすごく閑也に近いので。性格とかも近いですし、見た目もほぼ閑也。29歳で、お芝居にちゃんと打ち込むのが初めてなので、すごく緊張はしているんですけど、ちゃんと聡に成りきれるように」と話すと、七五三掛が「まだ28歳じゃない?」と質問。吉澤は「29歳に来月なります。ツッコミがすごいな。いい29歳を迎えられるように頑張ります」と気を引き締めていた。
オファーを受けた時を振り返った吉澤は「本当に驚いて、マネジャーに『僕で良いんですか?』と言いました」と苦笑い。稽古の日々は「毎日吸収することばかりで、時間が過ぎるのが早かった」と回想。役作りについて「聡は自分に近かったので、閑也の部分を沈めて聡にしていくのが難しくて、ウォーリーさんに『閑也出てるぞ』って言われることもあって。一つひとつの仕草だったり動きに理由を付けたりっていうのは、お芝居の難しいところでもあり、やっていて楽しいところ」と充実した時間を送ったよう。
挑戦した点について問われた七五三掛は「僕たちの先輩の堂本光一さんがやられている伝統の階段落ちをやっていて、そこも見どころですね。先輩の映像を繰り返し見て勉強しました。とにかく難しかった」と力強くコメント。吉澤は「お芝居をしているんですけど、毎回演じていて泣きそうになるぐらい良いシーンがあります。普段お芝居は観ないよという人でも、すごいのめり込める作品だと思うので、このミュージカルを楽しんでほしい」と呼びかけていた。
本番と同じ形で進行する公開稽古では、ミュージカル『ハル』などでもその歌と演技を披露した七五三掛が、大切にしている鐘つきの仕事に込めた思いや、心を奪われたおさえへの気持ちを熱く歌い上げるなど、実力をいかんなく発揮。グループでは、ダンスの振り付けを提案するなど、多彩に活躍する吉澤は初ミュージカルとは思えない安定したパフォーマンスで、観客を魅了していた。
演者のパワフルな歌声、繊細な演技を際立たせるのは、ヴィオラやヴァイオリンなどの生演奏。心が躍るケルト音楽は作品の世界を豊かに盛り上げていく。羽の生えた「天使」、背中に甲羅がある「ウミガメ」、体中が光っている「電池」、落ち着きのない「戦士」など、病に冒された村人たちを象徴するユニークな衣装も目が離せない。物語の進行と共に形を変えるセットは、だまし絵のよう。建物の壁に演者が歌う歌詞が映し出されるなど、細部にまでサプライズが詰まっている。
作者の後藤は「明日初日。こんな素晴らしい劇場で美しい劇場で、美しい衣装で舞台が始まることうれしいと思っています」と声を弾ませた。ミュージカル化を提案した木下は「筋立てがしっかりしていますし、物語の寓話的な要素も、登場人物の群像劇もありミュージカルにぴったり。充実した稽古でしたので、明日の初日に120パーセント出せるよう頑張りたい」と目を輝かせていた。
取材・文・撮影=翡翠