消防士パパの「子ども用防災リュック」我が子を想い詰めたやさしさとアイデア
胆振東部地震から6年。白老町の消防士が考えた防災リュックが注目されています。
「リュック」の中身は子どもとママを思いやる「パパのやさしさ」が詰まっています。
【特集】“じぶんごと”防災
胆振の白老町に住む長谷川さん一家です。
5歳の凌工(りく)ちゃんと3歳の夕莉(ゆうり)ちゃんのために、両親が日ごろから用意しているものがあります。
それがリュック。
中には、着替えや紙おむつ、水と子ども用の食べ物が入っています。
災害が起きて避難するときに持ち出す、子どものための防災リュックです。
妻の長谷川沙也加さん(34)は「私たちは夫婦ともに仕事をしていて、子どもを両親に預けるなどしているが、そのときに災害が起きたら、このリュックを持って逃げてもらいたい」と話します。
消防士の夫「一緒にいられたらいいけど…」災害時のジレンマ
2人のパパ、長谷川秀平さん(35)の仕事は、消防士です。
6年前の北海道胆振東部地震で、白老町は震度5弱の揺れを観測。
秀平さんは真っ先に消防署に駆けつけ町内を巡回しました。
そのとき、妻の沙也加さんは家に1人。凌工ちゃんがおなかのなかにいて妊娠7か月でした。
「本当ならば、自分も家にいて一緒に過ごしてあげられればいいが、仕事柄そういうわけにはいかないので…」
沙也加さんは3か月後に無事出産しましたが…
そこに襲ったのが、「余震」でした。
秀平さんはまた仕事に向かわなければいけませんでした。
「1人で子どもを守らないといけないし、逃げなくてはいけないとなったら、準備しなくては」
沙也加さんは危機感をもったといいます。
消防士として経験や知識で家族を守る知恵を絞った秀平さん。
そのとき、はっとしたといいます。
子ども用の備えがなかった…
赤ちゃん用の「防災セット」がない。
自宅に大人用の食料や防災グッズは備蓄していましたが、産まれたばかりの子どもの備えも必要だと気づいたのです。
沙也加さんは実は看護師。そんな視点も取り入れて、防災リュックを用意。
保存がきく非常用のミルク、使い捨ての哺乳瓶、赤ちゃん用の非常食に、生理用品も入れました。
できるだけ重たくならないよう、必要最小限の防災グッズを収めています。
名前は「我が子リュック」。
「自分の子どもが、もし避難所で使うとき、何を使ったらいいのかを想像した」
「我が子リュック」は当初、長谷川さん一家の「自宅の備え」でしたが、地元消防士のアイデアにマチも動き出しました。
赤ちゃん全員に「我が子リュックを」
赤ちゃんの生後1か月訪問のときに「我が子リュック」を贈る取り組みを始めたのです。
白老町子育て支援課は藤元路香主幹は「そういうのがあるんだなという驚きと、これからは必要なのではないかな」と取り入れた経緯を話します。
「これをきっかけに、家庭で災害への備えをいま一度確認しあってほしい」と話す秀平さん。
頼れるパパのアイデアとやさしさが、子どもたちの命を守ります。
【特集】“じぶんごと”防災
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年9月2日)の情報に基づきます。