定年後の新たな扉を開く「T活」のススメ
あなたは「定年後」について考えたことがありますか?
様々な役割を求められる忙しい50代、日々に追われ、定年後のことを考える余裕などないかもしれません。しかし、人生100年時代と言われる現代、定年後の時間は新たな可能性に満ち溢れています。
そこで、50代から定年後の生き方を考える活動を「T活(ティーかつ。定年活動)」と名付けました。
このコラムでは、SBSラジオ「鉄崎幹人のWASABI」と連動し、T活を通してユニークな定年後を謳歌している方々を紹介します。諸先輩方の生き方を知り、定年後の夢を膨らませてみませんか?
定年後の模索:シェアハウス運営という新たな道
第1回のラジオインタビューでは、60歳で定年退職後、T活を通してシェアハウスの家守(管理人)となった静岡市在住の八木哲史さんにお話を伺いました。
八木さんは、長年ゲーム開発・販売会社に勤務後、保険会社に転職し、60歳で定年退職されました。しかし、退職後は特にすることがなく、関わる人も家族と近所の人だけ。社会から疎外されたような孤独感に苛まれたと言います。
そんな中、息子さんのシェアハウス運営を手伝ったことをきっかけにDIYに目覚め、地元静岡市内の空き家を購入し、自らリノベーションしてシェアハウスを始めるに至りました。
登録したのは、会員制シェアハウスのサブスクリプションサービス「ADDress」です。ADDressでは、家を管理する人を「家守(やもり)」と呼びます。八木さんは、その家守として家の管理や地域の紹介を始めたのです。
空き家のリフォーム費用は、無料の起業セミナーで学んだ公的資金を活用しました。八木さんは「60歳以降は利用できる公的資金が多いので、学ぶべき」と語ります。
「T活」で見つけた新たな生きがい
八木さんのT活は、単にシェアハウスを運営するだけでなく、多様な人々との交流を生み出しました。
家守としての収入は月数万円程度ですが、リモートワーカー、YouTuber、日本一周中の旅人、大学教授、登山家など、会社員時代には出会えなかった人々との交流が、八木さんの人生に新たな刺激と喜びをもたらしました。
「今までになかった価値観や世界観に触れることが、とにかく衝撃の連続」と八木さんは語ります。収入ではなく、まさにその出会いがプライスレスであり、日々が楽しくて仕方がないとのことです。
八木さんが購入した空き家は、静岡市駿河区用宗の一軒家です。空き家問題解決と地域活性化に貢献することで、自己実現と社会貢献を同時に達成できたと感じています。
訪れる人々からも「海も山も近くて環境抜群」「こんなに新鮮な生しらすを食べたのは初めて」と感動の声が寄せられています。一時期は稼働率90%と、予約が困難なシェアハウスとして知られていました。
しかし、「どんな人が泊まりに来るかわからない怖さはないのでしょうか?」という質問に対して、八木さんは「一週間も泊まって話していれば、多少個性はあっても、みんな面白い人だと思える」と答えます。
特色ある生き方の人が集まり、互いに応援し合い、また次の場所へ移っていく。一期一会の出会いを楽しむ場所、それがシェアハウスだと八木さんは言います。
定年後は自己満足でいい、これこそがウェルビーイング
最後に、八木さんからT活を始める50代の方々へアドバイスをいただきました。
「定年後は、まず好きなことをすればいい。好きなことは自己満足でいい。人の評価は気にする必要はない。良い学校を出て、良い会社に就職して、良い結婚相手と巡り合って…。これらはすべて他人目線です。定年後は、自分目線で生きることができるかもしれません。自分が好きなことを学び、好きなことをし、好きな人と付き合う。本当の意味で自分が満足する、これこそがウェルビーイングな生き方ではないでしょうか」
今回のインタビューを通して、定年後の人生は終わりではなく、新たな始まりであることを強く感じました。大切なのは、人からの評価ではなく、自分が満足できる生き方を見つけることです。
あなたも「T活」を通して、自分らしい定年後の生き方を見つけてみませんか?
このコラムが、あなたの「T活」を始めるきっかけとなれば幸いです。今後のT活コラムにもご期待ください!
<参考情報>
八木哲史さんの著書:『家守が見た!多拠点生活がもたらすこれからの7つの生き方 プラスワン』(Amazon Kindleで入手可能)