「外来種なのに日本の天然記念物に指定?」大陸原産の『チョウセンブナ』の不思議
現在、我が国には多くの外来種が生息しており、外来生物法により取り扱いが厳しく規制されている特定外来生物も少なくありません。しかし、中には一部の地域で天然記念物となっている外来種がいることをご存知でしょうか?この記事では長野県飯綱町で天然記念物に指定されているチョウセンブナについてご紹介します。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
チョウセンブナとは
チョウセンブナ(トウギョ)は体長5~6cmの氾濫原性魚類です。
本種は名前に「フナ」と付くものの、コイ目魚類ではなく、スズキ目ゴクラクギョ科に属する淡水魚。比較的、近縁なグループではキノボリウオやベタなどが知られています。
チョウセンブナの原産地は中国と朝鮮半島ですが、現在、東北、関東、東海、四国など日本各地から記録がある外来種です。
日本のゴクラクギョ科はチョウセンブナの他にタイワンキンギョが琉球列島から知られていますが、タイワンキンギョは在来種である可能性も示唆されています。
チョウセンブナ移入の経緯
日本各地で記録があるチョウセンブナですが、1914年に朝鮮半島から観賞魚として東京都の金魚養殖場へ持ち込まれました。
その後、洪水・冠水で逸出し利根川水系へ分布を拡大。1937頃には分布が最大になったと言われており、11の都県に分布していたそうです。本種は湿地モンスーンに属する日本の気候に適していたと考えられています。
しかし、近年、チョウセンブナは個体数を激減させており、その姿を見ることはほとんど見られません。実際、2000年代以降、チョウセンブナの記録があるのは岡山県、長野県、愛知県、千葉県、茨城県の5県のみで、このうち岐阜県の記録は2022年と割と最近のものです。
また、岐阜県で採集されたチョウセンブナは河川の流入がないため池であったことから、本種は人為的に持ち込まれた可能性が高いといえます。
天然記念物に指定された外来種
天然記念物に指定される生物の多くは全国的または地域的に稀少である種であり、通常であれば在来種が指定されることがほとんどです。しかし、チョウセンブナは外来種にもかかわらず町の天然記念物に指定された珍しい魚として知られています。
長野県飯綱町ではチョウセンブナとその生息地が天然記念物に指定されており、本種の関する研究や調査が行われており、過去には学校ビオトープ作りも行われたそうです。
確かにチョウセンブナはかつて多くいた魚でありながら近年数を激減させており、希少魚としてのイメージが付いているのも事実と言えるでしょう。さらに観賞魚として需要もあることや在来生態系への影響が少ないと言われていることから、安易に放流が行われる恐れがあるとも言えます。
チョウセンブナはオオクチバスやチャネルキャットフィッシュなどと異なり侵略性が低いとされていますが、外来種が在来種と生態系に及ぼす影響は未知数であるため、放流・拡散は防止すべきでしょう。
参考文献
(琉球列島の陸水域の魚類とその面白さ)
(岐阜県で確認された外来魚チョウセンブナ (ゴクラクギョ科)の記録)
(チョウセンブナ(ゴクラクギョ科)-茨城県)
(長野県上水内郡飯綱町のトウギョ(チョウセンブナ))
(日本列島における外来魚チョウセンブナの分布の拡散と退縮)
<サカナト編集部>