減っていく?駅のご当地発車メロディを考える。
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今日は、駅の発車メロディが終了という話題。
JR南武線が、先週の15日土曜日からワンマン運転に切り替わり、8つの駅で使われていたご当地メロディが、各駅共通の発車メロディに変わりました。
ドラえもんが流れないと登戸じゃないみたい!!
「ドラえもんのうた」の発車メロディが変わりたての登戸駅で、地元のみなさんにお話を伺いました。
・「あ、ここの駅だなってすぐ分かるから、他から来た人も、ほら、ドラえもんの音楽が流れてるとこで降りるんだよって言ったらすぐ分かるし、だからなんか寂しいですよね。」
・「残念ですよね。やっぱりドラえもんは世界的な漫画ですからね。そこは登戸の誇りだと思います。登戸じゃないような感じがしますね、流れないと。」
・「小1です。ドラえもんの方がいいと思います。う~ん、もう一回戻ってほしいなって。」
・「あんまり気にしたことないですね。いや、全然覚えてないです、はい。発車ベルがなくなるのは困りますけど、なんか音が出てればいいかなと思いますけどね。」
・「やっぱりちょっと寂しいかなっていうのはあるんですけど、ワンマン運転になるっていうのを聞いて、人手不足解消じゃないけど、そういう今の時代にはやっぱりしょうがないことなのかなと思いながら、ちょっと寂しさを感じながら、気持ちが相反する感じであります。」
愛着もあるし、寂しがる人が多かったです。大人にも子どもにも人気。やっぱりドラえもんは強いですね!
今までは、車掌さんがホームに降りてスイッチを押して発車メロディを鳴らす、という形でしたが、車掌さんのいないワンマン運転になると運転手さんだけなので、運転手さんが、運転席のボタンを押して、車両から音が流れる形になりますが、これが、一種類なので各駅の発車メロディは無くなっていく、ということなのです。
東急東横線は2023年からワンマン運転になっていますし、JR東日本も、この3月の南武線と常磐線に続いて、26年春には横浜・根岸線、30年ごろまでには山手線や京浜東北・根岸線、中央・総武線の各駅停車、埼京・川越線も、順次ワンマン運転に切り替える方針を発表していますから、ご当地発車メロディは減っていきそうなのは確かです。
発車メロディじゃなくなったら、駆け込み乗車が減った!?
駅への愛着心を深めたり地域活性化などを目的に導入されてきたご当地発車メロディ。街の方がおっしゃるように、この音はこの駅と聞いて分かるのは確かにいいし、無くなるのは寂しいですよね。
ところが、鉄道ライターの杉山淳一さんにお話を伺うと、「寂しい」だけじゃないちょっと意外なお話がありました。
鉄道ライター 杉山淳一さん
「確かに、駅の愛着っていうことでは寂しいはあるんですけど、基本的には列車が発車する合図なので、まあメロディじゃなくてもいいんじゃないのかなっていう。本来の意味は安全のためなので、今回の措置はまあアリだろうなっていう風に思います。
例えば常磐線では、発車メロディを一回やめて車両から乗車促進音を流すという取組みを、実験を行ってるんですね。車両から流れる合図ですね、ピンポンピンポンとか、プープープーとかあるかと思うんですけど、そういう音を流して実験をしたところ、実は駆け込み乗車が減ったというデータがあるんですよ。
そうすると、発車メロディってあんまり効果なかったというか、危険なのかなっていう考え方も出て来て、無くなっていくという部分もあるかと思います。
発車メロディって結構駅の広範囲に響くんですよ。隣のホームにも聞こえたりとか、階段の上から聞こえたりとか。そうすると、あ、列車来てるんだ!っていって走り始めちゃうわけですよね。ところが発車促進音って車両のそばなのであんまり遠くまで聞こえないですよね。そうすると聞こえない人は別に急げないので、駆け込み乗車が減ると。」
発車メロディじゃなくなったら駆け込み乗車が減ったんです!
みなさん経験があるのではないでしょうか?発車メロディが聞こえると、特に急いでなくても、なんとなく走り出してしまう。(私もです。貧乏性なんですかね・・・。)
ところが、車両から流れる音に変えたら遠くまで聞こえなくなって、発車する!と走り始める人が減った。
安全のために鳴らしていた発車メロディでしたが、かえって駆け込ませていたのなら、車両から流れる方が理にかなっている、という実験結果が出ていたんですね。
発車メロディというものを、道具として「楽しいモノか便利なモノか」と考えてみると、やはり便利なモノなんです、お客さんに列車の発車を教えるためのものですから。そう考えると今回の措置はアリかな、と杉山さん。
発車メロディに列車接近メロディに、どっちなんだ!?
さらに、杉山さんは、もう一つ、発車メロディについて気になっている点があるそうです。
鉄道ライター 杉山淳一さん
「ちょっと問題だなと思うのは、発車メロディのほかに、列車接近メロディっていうのもあるんですよ。
発車メロディっていうのは、列車が発車しますから離れてくださいっていう合図なんですよ。で、列車接近メロディっていうのは、列車が来ますから早く集まってくださいっていう音なんですよね。
そうすると、初めて行った駅で音楽が流れたときに、これはホームの端に行っていいものか、離れた方がいいものか、早く乗って下さいなのか、危ないですから列車から離れてくださいなのか。
こっちの会社では発車メロディ、こっちの会社では接近メロディ、両方使ってるとこもあるので、どっちなんだろうっていうところがあるかと思います。まあみんな慣れちゃってるんで、あんまり意識しないかもしれませんけど。
安全面を考えれば、発車するという意味で、音は統一された方がいいと思います。」
発車するときだけじゃなくて、列車がまもなく来るときのメロディも、たしかにありますね!
「発車するから離れて」と「そろそろ来るからこっち来て」は指示が真逆。どっちなんだ!となりそうだし、間違えたら危険。
実際、先週メロディじゃなくなりましたが、JR南武線の登戸駅は発車メロディが「ドラえもん」でしたが、すぐ隣の小田急線の登戸駅は、接近メロディが「ドラえもん」でした。
毎日使っている人は大丈夫かもしれませんが、初めて使う人や、目の不自由な人、また、増える外国人観光客の方々のことを考えても、あまりバラバラじゃない方が安全かもしれません。
ワンマン運転への切り替えが進む中、発車メロディをどうすべきか、安全面と地域の特色と、改めて考えるいい機会かもしれませんね。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材・レポート:近堂かおり)