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大阪・関西万博閉幕後の万博跡地プラン。夢洲の万博跡地はどのように生まれ変わるのか

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夢洲全体の土地利用は大きく3つに分けられる 出典:大阪市「夢洲まちづくり基本方針」

184日間にわたり開催される大阪・関西万博

大阪・夢洲では、2025年4月13日から10月13日までの184日間、大阪・関西万博が開催されている。
「いのち輝く未来社会のデザイン」がメインテーマで、「人間一人一人が、自らの望む生き方を考え、それぞれの可能性を最大限に発揮できるようにするとともに、こうした生き方を支える持続可能な社会を、国際社会が共創していくこと」を推し進めている。

1周約2km、建築面積約60,000m2の世界最大級の木造建築物である大屋根リングや空飛ぶクルマ、火星の石やiPS心臓など、展示会を超えた「未来社会の実験場」として大阪・関西万博は世界的な注目を集めている。

さて、このような大規模で長期間にわたる関西万博が閉幕した後、開催地である夢洲はどのように活用されるのだろうか?
そこで今回は、2025年10月の大阪・関西万博閉幕後、万博跡地がどう生まれ変わるのかについて解説していく。

大阪・関西万博の跡地は第2期区域に該当する

夢洲全体の土地利用は大きく3つに分けられる 出典:大阪市「夢洲まちづくり基本方針」

大阪・関西万博の閉幕後、夢洲は約50haの跡地を活用した国際観光拠点として生まれ変わる計画を進めている。
2025年10月の関西万博終了と同時に、大屋根リングなど一部の施設を除くパビリオンの大半が撤去され、本格的な跡地開発が始動する予定だ。

夢洲全体の土地利用方針は、大きく以下の3つに分けられている。

・第1期区域 統合型リゾート(IR)を中心としたまちづくり
・第2期区域 万博の理念を継承したまちづくり
・第3期区域 第1・2期の取組を活かした長期滞在型のまちづくり

その中でも、関西万博の跡地利用は第2期区域に該当する。そして今回、夢洲第2期区域は4つのゾーンに分けて開発される予定だ。

夢洲第2期区域は4つのゾーンに分けて開発される 出典:大阪府・大阪市「夢洲第2期区域マスタープラン Ver.1.0」
引き続き交通インフラの整備も続いている 出典:大阪府・大阪市「夢洲第2期区域マスタープラン Ver.1.0」

さらに、関西万博閉幕後に向けて交通インフラの整備も続いている。2025年1月にOsaka Metro中央線が延伸され、大阪市内から地下鉄でのアクセスが可能になった。また、夢洲アクセス鉄道【北ルート】として、JR桜島線延伸(桜島~舞洲~夢洲)と京阪中之島線延伸(中之島~九条)が検討対象路線となっている。

大阪府・大阪市が策定した夢洲第2期区域のまちづくり方針「マスタープラン Ver.1.0」

大阪府・大阪市は夢洲第2期区域(万博跡地)のまちづくり方針として、2025年4月に「夢洲第2期区域マスタープランVer.1.0」を策定した。

マスタープランによると、夢洲全体のまちづくりのコンセプトは「Smart Resort City(夢と創造に出会える未来都市)」だ。このコンセプトで目指すのは、「リゾート」と「シティ」の要素を融合させた空間を形成して、「スマート」な取り組みを通じてまち全体の連携を高度化、国際観光拠点機能の強化を図ることである。

一方で、夢洲第2期区域のまちづくりのコンセプトは「万博の理念を継承し、国際観光拠点形成を通じて『未来社会』を実現するまちづくり」だ。夢洲第2期区域では、まちづくり方針として以下の3つを掲げている。

①エンターテイメントシティの創造
②SDGs未来都市の実現
③最先端技術の実証・実践・実装

さらに、マスタープラン Ver.1.0では土地利用方針として夢洲第2期区域を機能別に4つのゾーンへ再編する方針を示している。

夢洲駅前の「ゲートウェイゾーン」には夢洲の玄関口として商業施設や宿泊施設、来訪者の交流や回遊の拠点となる広場を整備する計画だ。

中央部の「グローバルエンターテイメント・レクリエーションゾーン」は、西側の「スーパーアンカーゾーン」と東側の「交流ゾーン」の2つに分かれている。スーパーアンカーゾーンでは、ここでしか体験できない「非日常空間」を創出するエンターテイメント機能やレクリエーション機能の導入、ファミリーで楽しめる機能の導入などが計画されている。交流ゾーンでは、ゲートウェイゾーンからの人の流れをスーパーアンカーゾーンへつなげるハブ拠点を形成する。

北側の「IR連携ゾーン」には、隣接するIR区域と連携することにより相乗効果を高めるラグジュアリーホテルやMICE施設(ビジネスイベントを誘致・開催するための施設)が配置される予定である。
東端の「大阪ヘルスケアパビリオン跡地活用ゾーン」では、ヘルスケアパビリオンの取組みを継承するために、先端医療・国際医療・ライフサイエンスに係る施設の導入が計画されている。

ただし、このように役割に応じてゾーニングするものの、隣接する区域やゾーンの境界部分は、水やみどり、広場や歩行者空間を配置して、一体性のある空間を目指している。

大阪府・大阪市が選ぶ万博跡地活用の優秀提案2案

株式会社大林組大阪本店の提案 出典:大阪市「報道発表資料 「夢洲第2期区域マスタープランの策定に向けた民間提案募集」における優秀提案を決定しました」

2025年1月、大阪府・大阪市では万博跡地の活用方法について、株式会社大林組大阪本店と関電不動産開発株式会社からの2つを優秀提案とした。
この2案は、それぞれ異なるアプローチで夢洲の魅力を最大限に引き出す戦略を掲げている。提案内容を詳しく見てみよう。

株式会社大林組大阪本店の提案は「The heart of OSAKA」をコンセプトに、モータースポーツを核とした大規模エンターテインメント拠点の構築を目指すというものだ。中心となるのは、F1誘致も視野に入れたサーキット場で、エリアの大部分を占める規模で計画されている。国内外からの集客が見込まれる大型アリーナも併設する計画だ。

さらに車をテーマにしたアミューズメントテーマパークやラグジュアリーホテルを配置し、モータースポーツファンから一般観光客まで幅広い層の集客を狙う。万博のシンボルである大屋根リングは一部をモニュメントとして保存し、部材をリユースして万博レガシーを継承する計画である。

夢洲第2期区域は4つのゾーンに分けて開発される 出典:大阪府・大阪市「夢洲第2期区域マスタープラン Ver.1.0」

関電不動産開発株式会社の提案は、世界最高水準のラグジュアリーリゾート創出に重点を置いている。ラグジュアリーホテルとウォーターパークを中心とした複合リゾート施設を配置し、通年型のアクティビティで安定した集客を目指すものだ。駅前ゲートゾーンには、夢洲の玄関口にふさわしいホテルや商業施設などの商業機能を集約し、来訪者の利便性を高める構成となっている。

大阪府・大阪市は今後、この案を基に2025年度の後半に開発事業者を募集する予定だ。

万博レガシーの継承もひとつのテーマ

大屋根リングの活用案 出典:大阪府・大阪市「夢洲第2期区域マスタープラン Ver.1.0」

万博跡地の活用の中で欠かせないのが、万博レガシーの継承である。
特に「大屋根リング」「静けさの森」「大阪ヘルスケアパビリオン」は、万博の理念「いのち輝く未来社会のデザイン」を次世代に伝える重要な遺産として位置づけられている。

大屋根リングの活用方法として、2つの優秀提案でそれぞれ異なる方法が示された。株式会社大林組大阪本店は一部をモニュメントとして残置改修し、万博のシンボル性を直接継承することを提案した。一方、関電不動産開発株式会社は解体した木材部材をベンチやパーゴラなどの街路設備にリユースし、来訪者が日常的に触れられる形での継承を提案している。

これらの提案を踏まえて、大阪府・大阪市はマスタープランver.1.0を作成した後に、大屋根リングの北東側約200メートルを原型に近い形で現地に保存する方針を2025年6月に正式決定した。このモニュメントは人が登れる状態で保存され、万博期間中と同じように大屋根の上から会場全体を見渡せるようになる予定だ。ただし、建築基準法上の取り扱いや維持管理コストなどの課題が残されているため、最終的な保存方法については今後募集される開発事業者との協議で決定される見込みである。現在、関係者との協議結果を踏まえ、マスタープランVer.2.0(案)を作成している段階だ。

静けさの森の活用案 出典:大阪府・大阪市「夢洲第2期区域マスタープラン Ver.1.0」

静けさの森の継承では、両提案とも中央緑地の樹木を活用した新たな緑地空間の創出を盛り込んでいる。大林組案では静けさの森を拡張してアート展示スペースを整備し、関電不動産開発案では樹木を移設した新公園の設置を計画している。

大阪ヘルスケアパビリオンの跡地活用では、建物の一部を残し、健康・医療関連の実証フィールドとしての機能を継承する方針が示されている。マーケットサウンディングの結果を踏まえ、民間事業者との連携による運営体制の構築が進められている。

万博閉幕に向けた動きと今後の課題

今後、大阪府・大阪市は2025年夏頃にマスタープランVer.2.0を策定し、2025年度後半に開発事業者の募集を開始する予定だ。

並行して進むIR開発は、2030年秋頃の開業を予定している。第2期区域の開発とIRの開業時期が重なるため、両プロジェクトの連携が鍵となるだろう。

ただし、埋立地ゆえの地盤改良・液状化対策コストの増大や交通アクセスの拡充など、課題も残されている。大阪が世界で注目され続ける都市を目指すためにも、今後の動きに注目したい。

■参考資料・記事協力
大阪市「夢洲まちづくり基本方針」
https://www.city.osaka.lg.jp/osakatokei/page/0000473459.html

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