成長著しい「インド経済」。今後の行方、日本や他国に与える影響は!? 専門家が分かりやすく解説
2027年に日本やドイツを抜き世界3位の経済大国へ
今回は「インドの経済」の話題です。9月3日、ロイター通信で、世界銀行が今年度のインド経済の成長率予測を従来の6.6%から7%に引き上げたことがニュースになりました。成長著しい「インド経済」についてSBSアナウンサー新城健太が日本一、元気な経済ジャーナリストとしてもおなじみの堀 浩司さんに話を聞きました。
新城:ここ数年でインド経済がかなり成長しているようですが、堀さんから見て、今のインド経済はどのように映っていますか。
堀:2000年のインドのGDP(国内総生産)は、当時世界第2位であった日本の10分の1しかありませんでした。
しかし、2024年は3兆9000億ドルと20数年で8倍以上GDPを伸ばしています。その勢いは止まらず、2025年には日本を、そして2027年にドイツを抜き去り、 世界第3位の経済大国として君臨すると予想されています。今、成長がとても著しい現状です。
新城:なるほど。20数年でGDP8倍以上になるのは珍しいことですよね。
堀:いろいろ要因はありますが、目を見張るほどの成長だと思います。
総人口は中国を抜き14億2800万人
新城:インドといえば、昨年、国別の人口でも中国を抜いて世界1位に立ちましたが、経済面でも中国を抜く勢いではないかとよく聞くようになりました。急成長の要因はどんなところにありますか。
堀:インドの人口は、国連の2023年4月のデータによると14億2800万人で中国の14億2570万人を抜いています。世界最大の人口の3分の1を占める中間層の消費拡大が大きく、経済成長に寄与してきたということなんです。3分の1と言っても4億8000万人ですからアメリカの人口よりも格段に多い層が消費を増やしていると。その一例が、2022年にインドの新車販売台数が425万台と、日本の420万台を超え世界3位の自動車消費国になったことです。しかも驚くことに、インドの一人当たりの自動車販売台数は日本の10分の1で、これからさらに確実に伸びるのは間違いないということなんです。
優秀なIT人材も成長の糧に
新城:そうなんですね。他には何か要因はありますか。
堀:近年インド経済の担い手としてIT産業が飛躍的に伸びています。国内に英語を話す優秀な理工系人材が多く、アメリカのIT業界にインド人の優秀な理系人材が多く働いていることも大きく影響しています。
新城:なるほど。成長の糧になっているわけですね。
“ユニコーン企業”のインド株にも注目
新城:最近は、日本でもインド株の人気が高まっているそうですね。投資の面はいかがですか。
堀:非常に安定していて、成長度合いがぐっと伸びて安心感があると思います。IT革命の進展とともにスタートアップ企業も急増し、アメリカから帰国したインド人ITエンジニアが、インドで起業することが増えています。
ユニコーン企業と呼ばれる、創業10年以内、未上場で評価額10億ドル以上のベンチャー企業が2022年10月時点で、インドの企業数は71社。アメリカ、中国に次いで世界3位です。インドの経済成長をにらんで今後もインド株は注目です。
新城:インド経済が成長することで、日本や他国への影響は、どんなことが考えられますか。
堀:日系企業が選ぶ中長期的に有望な国として、実はインドは首位を占め続けています。日本企業のインド向け直接投資が急速に拡大しており、2010年に700社前後だったインド進出企業も2021年には2倍の1440社まで増加しています。これは日本企業だけでなく欧米、アジア企業もインドに進出する企業が増えています。
貧困、汚職、カースト制度の見直しが今後の経済発展への鍵
新城:すでにインドに進出している日本企業はどんなところがありますか。
堀:最も代表的なのが自動車メーカーのスズキです。インドの自動車のかなりの部分を占めています。他にも自動車産業これからまだまだ成長が見込めると思います。
新城:インド経済はまだまだ成長しそうですか。
堀:インドの人口構成は、3人に1人が10歳から24歳で、これから15歳から64歳の生産年齢人口、そして、消費者人口が増える「人口ボーナス期」が30年間近く続きます。人口構成から見ても、インドの経済成長はこれからも続くと見られています。
新城:10〜24歳の人が3人に1人というのは高齢社会の日本と違って明るい兆しですね。
堀:国として活力が増してくるのは確実ですね。
新城:最後に今後の注目ポイントを教えてください。
堀:インド社会はまだまだ多くの問題を抱えています。貧困面では、インドの1人当たりの所得は、未だに年2200ドル、日本円で30万円程度と貧困の問題は深刻です。根深い差別としてカースト制度が現存していますし、「実の親と最高裁判決以外の全てはカネで買える」という冗談もあるぐらいの汚職の蔓延問題もあります。これらの問題をいかに解決していくかが今後、真の意味での経済発展につながると考えています。
※2024年9月16日にSBSラジオIPPOで放送したものを編集しています。今回お話をうかがったのは……堀 浩司さん
経済学は私たちの暮らしが良くなるためにある学問、私たちみんながわかる経済のお話を講演、ラジオ、テレビ、大学教員、執筆でアルバイトをしていたラジオ局で学生時代に音楽番組のパーソナリティを務めて以来、その出演歴は40年! 大学常任理事として大学経営にも、税理士として企業経営指導にも携わる。