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【京都観光ではたらく】~株式会社西利~

京都観光Naviぷらす

代表取締役社長 平井誠一さん(右)清水店 店長 井上美甫さん(左)


自ら考え、行動する人が集まり、チームとなって、京漬物の魅力を発信してほしい


―代表取締役社長 平井誠一さん


京都を代表する食文化の一つ、京漬物。「京つけもの 西利」は西本願寺前の本店のほか、直営店を市内に11店舗、さらに全国に販売網を展開する食品メーカーです。製造や販売などの各部署合わせて、約320人(2024年4月1日現在)のスタッフが働いています。1940年の創業以来、日本人の食卓に欠かせない存在になっている京漬物。京都観光の人気のお土産品としても長年愛されてきた株式会社西利(以下、西利)の代表取締役社長である平井誠一さんにお話を伺いました。


旬の食材を日本の食卓へ そして、『TSUKEMONO』を世界へ


画像提供:京つけもの西利 清水店


「忙しいときもあるけれど、京漬物の良さをスタッフが一生懸命お客様に伝えてくれています。京都が好きで、京都で働きたいという方に西利は支えられています」という平井さん。取材に訪れたのは、清水寺門前の店舗。12月の朝10時、あたりはすでに観光客で賑わっていますが、春や秋より観光客は少ないのだそう。「お漬物って、一年の中でも繁忙期が変動するんです。最近は、繁忙期にスタッフを増員するのがなかなか難しくなってきたと感じています」。製造、販売ともに忙しいのは、秋の行楽シーズンから年末年始まで。以前には、学生アルバイトなどを雇用することができていましたが、近年は苦労するのだそう。「アルバイトの時給アップや休みを取りやすくするなど、待遇面の改善を行って、多くの方に興味を持ってもらえるように工夫しています」と平井さん。



京都市内に店舗を構える西利には、日本だけでなくは世界中から観光客が訪れるため、お客様とのコミュニケーションを直接担う接客スタッフの役割は非常に重要です。平井さんによると、日本人と海外からの観光客では、接客のアプローチに少し違いがあるのだとか。
「日本のお客様に特に伝えたい京漬物の良さは、季節感です。定番商品をしっかりと提供するのはもちろん、季節の移ろいをお漬物を通して楽しんでいただけるようお伝えしています」
西利では、取り組みの一つとして、二十四節気(春夏秋冬をそれぞれ6つに分け、季節を表す名前をつけた暦)に合わせた限定商品を販売しています。取材に訪れたときはさつまいもとリンゴのお漬物が販売中でした。その素材の組み合わせだけでも、自由な発想が感じられます。さらに、お漬物の活用法も積極的にアピールされています。「お漬物をさまざまな料理の食材として利用できるレシピを提案しています。お漬物は、冷蔵庫に常備しておける下味付きの食材として活用できるんです。レシピを参考に、普段の料理にもっと気軽に取り入れてもらいたいと思っています」と平井さんは語ります。
また、外国人観光客への説明にも変化があったとのこと。以前は「Japanese pickles」と英語で説明していましたが、その表現では「酢漬け」を想像されてしまい、正しく伝わらないことが多かったそう。「お漬物はバリエーション豊かで、文化的な要素も含まれているので、ピクルスとは全く異なります。そのため、『TSUKEMONO』という名称に変更し、別の食文化として説明するようにしました」。外国人観光客を対象にした試食や味の好みのアンケート調査を実施するなど、『TSUKEMONO』の認知度アップにも力を入れています。



社員からアイデアを募集し、新しい取り組みをする


さまざまな取り組みを進める平井さんがスタッフに求めるのは、自ら考える力。「西利では、基本的に個人の考える力に期待しています。それぞれが考え、店舗が一つのチームとなって、自分たちが良いと思うことを実践することを大切にしています」。社員からキャンペーンのアイデアを募り、表彰するなど、広く意見を吸い上げ、活躍の場を提供されています。これが、スタッフのモチベーションを高く保つことができる理由の一つです。
自ら考え、行動するのはスタッフだけではありません。「手ぶら観光キャンペーン」として、期間限定で2,000円以上購入すると全国一律500円で配送するユニークな取り組みを提案したのは平井さんご自身。それまでは5,000円以上の購入で無料配送でしたが、期間限定の取り組みとして、大幅な価格変更を図ったところ、利用客がかなり増加したとのこと。「5,000円だとお土産用にたくさん買うイメージがありますが、2,000円なら自分用に購入する方も増えるかもしれないと思ったんです。お客様の利便性はもちろん、混雑している観光地の現状を踏まえ、手ぶら観光を推進するために取り組みました。チャレンジには成功も失敗もあると思いますが、それも経験として活かし、みんなにも試行錯誤してもらえたらと思っています」


ベースアップや二重作業の見直しなど働く人の待遇改善にも積極的


京漬物の良さや西利の取り組みを広く伝えるスタッフの採用にも変化が見られます。「これまでは新卒採用が中心でしたが、最近では中途採用にも門戸を広げ、給与面でのベースアップを実施するなど、労働環境のさらなる充実を図っています」



西利は業務の効率化にも積極的です。スタッフが接客に専念できる時間を増やすため、レジシステムを変更。二重になっていた事務作業を取りやめるなど、作業の見直しを図ったそう。また、スタッフ同士の連絡に、スマートフォンのチャットアプリを活用。商品移動の連絡が便利になり、スタッフからも好評を得ているようです。
忙しい時期もある観光地での仕事ですが、やりがいは大きいと平井さんは言います。「シンプルなことですが、接客は『ありがとう』って言ってもらえる仕事です。お客様の質問に答えたり、相談に乗ったり、単にお漬物を売るだけではなく、お客様のご要望をお伺いし、それに応えていく。提案が要望とうまく合えば、お客様は喜んで購入してくださり、相談に乗ると、感謝の言葉をかけていただける。私は、この仕事の一番の良さは、ありがとうと言ってもらえることだと思っています」



さらに、京漬物の今後について尋ねました。「食の多様化により、日本の家庭の食卓には、以前ほどお漬物が登場しなくなりました。だからこそ、京漬物の良さを発信し、冷蔵庫に京漬物を常備する、そんな『お漬物がある生活』を皆さんに提案できるようにしていきたい」。西利は、日本の食文化発信のために、自ら考え、行動するスタッフを求めています。


知識ゼロからスタートして店長に。自ら提案したキャンペーンに手ごたえ


―清水店 店長 井上美甫さん



2019年に入社し、2021年1月には産寧坂店の店長に、そして2024年5月からは清水店店長を任されている井上美甫さん。もともと日本文化に興味があり、大学の卒業論文でも日本食に関する研究をしていましたが、京漬物への関心はそれまではなかったそう。そんな井上さんが、西利で感じているやりがいとは?


企画からオペレーションまで担当 自ら提案したアイデアが実現


「就職活動で西利にエントリ―したのは、会社説明会で担当してくださった方の人柄や、会社の雰囲気に惹かれたから。でも、京漬物に関しては全く知識がありませんでしたし、着物を着て働くことすら知りませんでした」。入社後、新入社員研修で会社の歴史やお漬物の知識に関する知識を深め、その後はすぐに現場入られたとのこと。「実際に接客していく中で、販売方法や接客方法のコツを身に付けていきました。何も知らず不安に思っている暇はなく、最初はただひたすら、がむしゃらに取り組みました」



「今では、3人のスタッフと共に、観光客でにぎわう清水寺門前の店を切り盛りしています。清水寺のすぐ近くの店舗で、人通りが多いので、いかにお客様にお店に入ってもらえるかを常に考えています」と井上さん。
社員からのアイデアを表彰する制度があり、新しいチャレンジを試みやすい環境も西利の特徴。井上さんが提案して実現させたのが、お漬物を手軽に食べられる形での提供です。「お客様からの要望がきっかけでした。キュウリの一本串はお祭りでよく見かけますが、それ以外のお漬物はあまり見かけないですよね。そこで、商品を串に刺したり、カップに入れたりして販売することにしました。企画から店舗でのオペレーションまで、すべてに携わることができて、とてもやりがいを感じました」



店舗同士で助け合い 繁忙期でも休みはきちんと取得


京漬物という食文化を通じて、いろいろな人と交流できることが魅力だと井上さんは言います。「毎日さまざまなお客様がいらっしゃいます。私は英語が得意ではないのですが、外国の方にも伝わるように、外国語のポップを作ってお知らせしています。京都ならではのだしの風味や、ちょうどいい塩加減を、実際に試食していただいて感じてほしいなと思っています」
観光地の店舗で繁忙期は忙しいものの、休みはしっかり取得できていて、オフの時間も楽しんでおられる井上さん。「繁忙期であっても、バックアップ体制がしっかり整っているので、休みが取れないことはありません。休みの希望が重なったときは、近隣店舗や他店から、応援に来ていただくなど、店舗同士で助け合っています。休みの日は、寺院を巡って御朱印をいただくのを楽しみにしています」



現在、店長として店を引っ張る井上さん。「清水店の店長になったとき、上司から『東山エリアを任せた』と言ってもらえたんです。その期待に応えて、エリアを安心して任せてもらえるような人になりたいです」と今後のキャリアについて語ってくださいました。



平井さん―
うちは現場主義。新卒で入った人たちが順番に経験を積み、新しい仲間をみんなで見守っていく。家族的な雰囲気が会社にあります。


井上さん―
「何かあったらすぐ連絡して」と先輩には常に声をかけていただいています。時々ヘルプで上司が店に来てくれるのですが、一緒に仕事するのがとても楽しいです。この会社に入ってよかったと実感しています。



平井さん―
店舗でも積極的にお客様とコミュニケーションをとっていますね。外国人の方へのアンケートキャンペーンとか、またやりたいですよね。


井上さん―
意外な商品が好評だったり、やってみて初めてわかったことがありました。これからもいろんなことにチャレンジしていきたいと思います!


京都で働きたい人と観光事業者をつなぐメディア「京都観光はたらくNavi」
https://job.kyoto.travel/


記事を書いた人:株式会社文と編集の杜
京都で活動している編集・ライティング事務所。インタビュー、ガイドブック、書籍などジャンルを問わず、さまざまな「読みもの」に携わっている。近年は、ライティングに関するイベントの開催も。
https://bhnomori.com/

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