生誕100年、時代の先端をとらえ続けた表現者の全貌に迫る「安部公房展──21世紀文学の基軸」
三島由紀夫らとともに現代日本文学を代表する作家の一人、安部公房(1924~1993)。ノーベル文学賞に最も近い作家と国際的に評価されていたが、突然の死によって受賞はかなわなかった。学生時代から詩作をはじめ、芥川賞を受賞した『壁』、『砂の女』『他人の顔』『人間そっくり』『箱男』などの小説、「幽霊はここにいる」「友達」「棒になった男」などの戯曲の執筆、写真、さら演劇集団「安部公房スタジオ」を発足させ、本格的に演劇活動も始めるなどその活動は多岐にわたっている。「安部公房スタジオ」の発足時のメンバーには、劇団俳優座で活躍した仲代達矢、田中邦衛、井川比佐志、山口果林など12名がおり、安部は自作の演出のほかに劇中音楽なども手がけた。安部作品は難解で寓話的要素も強いが、世界30数か国で翻訳出版されている。
▲1984年箱根の仕事場で執筆中の安部公房(写真提供 新潮社)
今年開館40周年を迎える県立神奈川近代文学館では、初公開、初展示を含む約500点の資料から、作家という肩書におさまらない表現者・安部公房の全貌に迫る「安部公房展──21世紀文学の基軸」が開催される。会期中、川上弘美(作家)と三浦雅士(評論家、本展編集委員)の対談(11/17)、映画『砂の女』の上映(11/2223)、毎週金曜日にスライドトークなどの記念イベントなども予定されている。
▲「壁─S・カルマ氏の犯罪─」原稿 「近代文学」1951年(昭和26)2月号に掲載。本作で第25回芥川龍之介賞を受賞した(写真提供:県立神奈川近代文学館)
▲どの作家も推敲を重ねるが、安部公房は加筆修正が多く、執筆にいち早くワープロを取り入れた。上記は8インチフロッピーデスクをおさめたファイル(写真提供:県立神奈川近代文学館)
神奈川近代文学館開館40周年
安部公房展──21世紀文学の基軸
会期:2024年10月12日(土)~12月8日(日)
会場:県立神奈川近代文学館(横浜・山手 港の見える丘公園内)
開館時間:9:30~17:00(入館は16:30まで)
休館日:月曜日(10月14日、11月4日は開館)
HP:https://www.kanabun.or.jp