無力感からの脱却、どう描写する?【プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑】
NO.26 無力感【むりょくかん】[英:Powerlessness]
【意味】
自分に力がないことがわかるとき、自分には何もできないと感じるときの虚しい気持ち。
【類語】
虚しい 虚脱 無常 空虚 自信喪失 挫折 情けなさ 徒労 諦めなど
体(フィジカル)の反応
だらだらと動くため息ばかりつく肩をすくめて俯くものや人にぶつかる手をうしろに組む椅子にもたれかかる額に手を当てうなだれる食欲がなくなる抑揚のない声で話す質問に適当な返事をする自分を卑下する言葉を吐く虚ろなまなざし遠くの一点を見つめる人との関わりを避ける人の指示に安易に従う身なりを気にしなくなる体が重くなる五感が鈍くなる
心(メンタル)の反応
やる気を感じない気弱になる物事に取り組む前から失敗した姿を想像してしまう過去の成功を思い返してつい感傷的になる体に力が入らない感覚自己嫌悪に陥る胸が締めつけられる喉が絞まる感覚空想の世界に逃避する時間の経過を遅く感じる判断を人に委ねる
「無力感」に囚われるときより脱却する理由のほうが難しい
虚脱して何もできなくなる「無力感」は、リアルな現実世界の場合、突然理由なく襲ってきたりします。
けれども物語において登場人物が「無力感」に囚われる場合は、〝なぜそうなったのか?〟理由づけが必要です。「無力感」に至る精神的ショックや物理的事故など、必然性がなければ読者は納得しません。
たとえば『ドラえもん』は尻尾がスイッチなので、誰かが引っぱると全機能停止して無力化するという確固たる理由があります。
同様に気をつけなければならないのが「無力感」から脱する方法。こちらも理由なく突然元気になってしまえば読者は納得しません。
むしろ「無力感」に囚われるより、「無力感」から脱却するほうが理由づけが難しいため、その扱いに注意しましょう。それでいて主人公が「無力感」から劇的に回復し、今まで以上のパワーを取り戻せば、読者は拍手喝采で喜びます。扱いにくくはありますが、上手に使えば物語を盛り上げるのが「無力感」の面白いところです。
このプロセスで一体何が起きたのかが物語では重要
【出典】『プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑』著:秀島迅