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天狗やだるまも!? あの妖怪や縁起物も、実は仏教につながっていた!

さんたつ

天狗だるま鬼七福神西遊記

日本に仏教がやってきて約1500年。私たちが仏教に触れるのは、お寺に行った時やお葬式・初詣の時だけではありません。長~い歴史を経て、私たちの生活の中にも仏教は入り込んでいます。例えば、昔話に出てきた妖怪や化け物だったり、縁起物として見かけるものだったり。今回は「それも仏教に関係あるんだ!」というものを、いくつかご紹介していきます!

「天狗」の神通力で仏の力を支える

静岡県『春野文化センター』の巨大天狗面。

真っ赤な顔に長い鼻で山の中に潜む妖怪といえば「天狗」です。昔話などにもよく登場し、そのフォルムは日本人にはおなじみでしょう。

平安時代に書かれた『今昔物語集』には、「天狗が、比叡山に飛んできて悪さをしようとしたが、天台宗の僧侶に懲(こ)らしめられた」という話が残されています。

また、山で修行をする修験道(山伏)との関係も。

古い時代の日本人は、自然の全てに神が宿ると考えていました。もちろん、山もその一つで、崇拝の対象だけでなく畏敬(恐れ敬うこと)の念を感じていたようで、天狗の服装は山伏のそれをなのです。

山に住むと考えられていた天狗は、信仰の対象でありながらも恐れられる「山の神」でした。

群馬県「迦葉山弥勒寺」の巨大天狗面。

天狗の山として有名な迦葉山(群馬)には、何十年も山のお寺の繁栄に尽力したお坊さんが、最後に天狗の姿になって空へ飛んで行ったという言い伝えが残っています。

他にも、高尾山薬王院(東京都)の本尊である「飯綱大権現(いづなだいごんげん)」のお付きの者も天狗です。

神通力のある天狗が、本尊の力をブーストさせるような役割をしているのです!

願掛けでおなじみの「だるま」は偉いお坊さんの姿だった

群馬県「達磨寺」に収められただるまの山。

まあるいシルエットに大きな目玉。

何かを達成したいときに、片方の黒目が描かれていないものを持って、達成したあかつきには、そこに黒目を入れるという風習。

選挙などでもよく見かける「だるま」は、縁起物として知られています。

実は、そのモデルになっているのは禅宗をはじめた「達磨大師(だるまだいし)」という中国のお坊さん。

達磨大師は、洞窟の中で9年間も座禅をし続けたとされ、そのため手足が退化した(腐ったという説も)と伝えられます。

静岡県「土肥達磨寺」にある日本最大の達磨大師像。

そんな達磨大師を模して、手足のない(もしくは手足の小さい)「だるま」の像が出来上がりました。

それが江戸時代になって、何度倒しても起き上がることなどから縁起物として重宝されるようになったのです。

目玉に意味を持たせるのは、達磨大師が9年間の坐禅の中で眠ってしまわないように、まぶたを切っていたという、ちょっとグロテスクな伝説から来ています。

「七福神」にも仏教のキャラが入っていた

愛知県「普門寺」の大黒天。

七福神といえば、筆者は親戚の家などに行くと置物や絵画として見かけた覚えがありませんか?

東京などを中心に、七福神のメンバーはいろいろなお寺に祀られていて、七福神めぐりなどをする風習も残っています。

インドや中国や日本といった東洋のいろいろな神様を集めた、「御利益アベンジャーズ」が七福神なのです!

その中の「大黒天」は仏教にも縁のある神様。元はヒンドゥー教の暗黒神だったものが、仏教に入って大黒天となりました。

財宝が入っている大きな袋に、金銀を生み出す小槌を持ち、豊作を表す俵に乗っていることから、五穀豊穣の神様として信仰され、転じて商売繁盛の御利益があるとされます。

山梨県「福光園寺」では毘沙門天の吉祥天を夫婦で安置。

メンバー「毘沙門天」は、仏教を守護する四天王のひとりで、四天王として祀られる時は「多聞天」という名前です。KinKi Kidsのときは堂本剛として活動し、ソロの音楽をするときは.ENDRECHERI.(エンドリケリー)を名乗るような感じですね。

武将のような姿から勝負運の御利益があるとされており、実は妻は「吉祥天」なのです!

夫であるというバックグラウンドも知ると、なんだか親近感がわいてきますね。

富山県の新湊弁財天。

七福神の紅一点「弁財天」も仏教に縁のある神様です。琵琶を持った姿からも、技芸上達に御利益があるとされるほか、江の島の銭洗弁天「銭洗白龍王」でも知られる通り金運向上の神様としても人気があります。

埼玉県「聖明王院」の弥勒大仏(布袋尊)。

「布袋」は、中国の偉いお坊さんがモデルになっています。仏教が廃れるとされる56億7千万年も先の未来に現れて世界を助けるとされる「弥勒菩薩」の化身であるとされています。

福々しい見た目とウラハラに、なんだかSFなドキドキをもたらしてくれる神様ですね。

三蔵法師が旅をして持ち帰ったものとは?

孫悟空でおなじみの『西遊記』。

孫悟空・沙悟浄・猪八戒とともに、三蔵法師が旅をする物語『西遊記』。テレビドラマなどでは孫悟空達が戦う場面がメインとなっていますが、ご存知の通り三蔵法師がガンダーラに「大切なお経」を取りに行く物語です。

17年もの歳月をかけて3万kⅿもの行程を辿る旅でした。ドラマで見かける敵との戦いというのは、旅の中で訪れる「もう諦めたい」「楽をしたい」という欲求(=煩悩)との戦いを、わかりやすく表したもの。

今のようにメールやクラウドでやり取りできればこんな苦労はしなかったのでしょうが、三蔵法師の苦労があってこそ、大切なお経が今も伝わっているのです。

日本で最もポピュラーなお経「般若心経」。

多くの人には伝わっている実感がないかもしれませんが、三蔵法師が持ち帰った『大般若波羅蜜多経(だいはんにゃはらみたきょう)』という600巻にも及ぶ膨大なお経をまとめたのが、おなじみの『般若心経』なのです。

なお、真言宗の本山である「金剛峰寺(こんごうぶじ)」をなどのお寺に祀られている「深沙大将(じんじゃたいしょう)」という仏像は、沙悟浄のモデルだとされています。

地獄の「鬼」には別名があった!?

福岡県「大日寺」の閻魔像に両脇に鬼の姿。

昔話では『桃太郎』『こぶとりじいさん』などに登場し、漫画・アニメ『鬼滅の刃』でもおなじみの「鬼」。

日本古来の伝説の妖怪ではありますが、鬼も仏教にゆかりの深い存在です。

仏教の世界観では、私たちは死んだら閻魔様の裁きを受けて、極楽か地獄に行くとされていますが、地獄に落ちたものに責め苦を与えるのが鬼だいうイメージがあると思います。

仏教ではこの鬼を「獄卒(ごくそつ)」と呼びます。

獄卒に苦しめられないよう、誠実に生きていきましょうね!

静岡県「伊豆極楽苑」の獄卒(鬼)。

ちなみに、獄卒(鬼)がなぜトラ柄のパンツを履いてツノを生やした姿なのかご存知ですか?

よくないものが入ってくる方角とされる「鬼門」という言葉を聞いたことがあると思いますが、鬼門の方角は東北です。

方位にはそれぞれ干支の動物が配置されていて、東北は「虎」と「丑」にあたります。

そのため、トラ柄のパンツを履いて牛(丑)のツノを生やしているのです。

お寺に行かなくても、初詣やお葬式でなくても、私たちのまわりにはこんなにも仏教がたくさんあります。

こうして由来を知っていると、おでかけや生活が今よりもっと楽しくなるので、ぜひ覚えておいてくださいね!

写真・文=Mr.tsubaking

Mr.tsubaking
ドラマー/放送作家/ライター
Boogie the マッハモータースのドラマーで、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌など担当。BS朝日「世界の名画」の構成、週刊SPA!、週刊プレイボーイなどに寄稿・執筆。温泉ソムリエ・仏教検定1級。

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