“火星の石”の正体は…【隕石と小惑星】大阪・関西万博の展示で話題! 約1000万年前に飛来のヒミツ 科学博物館学芸員がわかりやすく解説
開催中の大阪・関西万博で展示されている「月の石」と「火星の石」。
米国パビリオンで展示される「月の石」は、1970年の大阪万博でも展示されましたが、前がアポロ12号が地球に持ち帰ったものだったのに対して、今回は72年にアポロ17号が持ち帰ったもの。月面への有人再着陸を目指すアルテミス計画や今後の火星探査などと一緒に紹介されています。
一方、日本館で展示されているのが、「火星の石」。
誰がどうやって手に入れたものなのか、知っていますか?
答えは、「空から落ちてきた」。
正確には、世界最大級の火星由来の隕石とされています。
隕石というと、「ノストラダムスの大予言」や「アルマゲドン」「君の名は。」のような地球が大災害を被る物語や映画のイメージがありますが、実はよくわからないこともありますよね。
富山市科学博物館では、この5月3・4日に「サイエンスライブ 隕石のひみつ」が行われ、宇宙から地上に落ちてきた隕石について学芸員さんがわかりやすく教えてくれました。
今回は、サイエンスライブで紹介しきれなかった話も加えて、知っているようで意外と知らない隕石のひみつに迫ります。
隕石ってなに?
そもそも、隕石っていったい何なんでしょうか?
宇宙から地球へは、たくさんのチリ(固体粒子)などが落ちてきています。
これらが大気圏に突入し、空気との摩擦熱で高温になると発光するため、流れ星になります。そのほとんどは燃え尽きてしまいますが、中には地上まで落ちてくるものもあります。
これが、隕石です。
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隕石の正体は…小惑星との密接な関係
隕石は宇宙から落ちてくるチリですが、小惑星とも密接な関係があることがわかっています。
どういうことでしょうか?
そのために、まずは小惑星について学びましょう。
太陽系には地球や火星などの8個の惑星のほかに、小惑星と呼ばれる直径数百mから数kmの天体が無数にあります。そのほとんどは火星と木星の間にあり、小惑星帯と呼ばれています。
隕石の成分などの組成を調べると、小惑星と似ているものがあることがわかっています。また、隕石の軌道を求めると小惑星帯から来ているものがあることがわかっていて、ほかの多くの隕石も同じように小惑星帯から来ているのではないかと推測されているのです。
火星と木星の間にある小惑星帯の天体が、何らかの原因でその軌道がずれてしまい、地球の軌道の内側まで入ってきた際に、小惑星やその一部のかけらが地球に衝突すると考えられているのです。
隕石にまつわる素朴な疑問
大きさは?
宇宙から地球上に落ちてきた固体の物質のうち、直径1mm以上のものを「隕石」、それより小さいものを「宇宙塵」と呼んでいます。
隕石の大きさもさまざまです。
たとえば、今から約6500万年前、メキシコのユカタン半島に巨大な隕石が落ちたことで大きな気候変動がおき、それによって恐竜が絶滅したという説があります。
このときの隕石の大きさは、直径10~15kmと推測されていて、実際、ユカタン半島の地下には、約160kmに達する巨大なクレーター地形が発見されています。そんな巨大な隕石が落ちるのは数千万年に1度と考えられています。
そのほかにも直径数m程度の隕石は世界で何例か報告されていて、数cm程度のものなら、たびたび落下しています。
スピードは?
隕石が地球と衝突するときのスピードは、秒速数十km/hという高速です。
このスピードで地球にぶつかるために、隕石は地球の空気との摩擦で、非常に高い熱を出します。
何でできている?
隕石は大きく3種類にわかれます。
大部分(90%以上)は石でできた「石質隕石」 主に鉄でできている「鉄隕石」 石と鉄が混ざり合った「石鉄隕石」
です。
石質隕石にもわずかに鉄がふくまれていて、普通の岩石に比べて重く(比重3.5くらい。一般的な岩石は2.0~3.0)、強い磁石がつきます(※つかないものもあります)。
また、隕石の表面は大気との摩擦熱で溶けた黒い皮で覆われていて、そこに浅いくぼみなどがみられます。
世界で確認されている隕石はどれくらい?
では、どのくらいの隕石が落ちてきているのでしょうか。
日本国内でこれまで確認されているのは、わずか54個。
54番目に確認されたのは、1902(明治35)年に現在の埼玉県越谷市に落下したものです。1個で重量は4.05kgの石質隕石です。
世界では約5万個の隕石が発見されています。
ただし、そのうち8割にあたる約4万個の隕石は、すべて南極で見つけられたものです。
大阪・関西万博「火星の石」は隕石?
お待たせしました。
本題の、大阪・関西万博で公開されている「火星の石」についてです。
今回展示されているものは、約1000~1300万年前に火星から飛来し、数万年前に地球に到達したと考えられています。
南極観測隊が発見した世界最大級の「火星の石」
発見されたのは、2000年。
日本の南極地域観測隊が、昭和基地から南に約350km離れたやまと山脈付近で見つけました。大きさは幅29cm、高さ22cm、重さ13.7kgで、ラグビーボールほどの大きさですが…このサイズ、小さいと思いますか? 大きいと思いますか?
なんと、火星由来の隕石としては世界最大級なんです。
この「火星の石」には、水と反応してできる粘土鉱物が含まれていて、その水の成分は地球上の水とは異なるため、かつて火星に水が存在していたことを示す貴重な資料とされています。
これによって、水や生命の起源を解明するための重要な手がかりとなることが期待されています。
「火星の石」の展示は日本館内で、ミニサンプルに実際に触れることができるコーナーがあるそうですよ。
どんな手触りなんでしょう…気になりますね。
【富山市科学博物館】
住所 富山県富山市西中野町1丁目8-31
営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)