花の見頃はお預けもにぎわい 「橋野鉄鉱山」で八重桜まつり 世界遺産登録10周年をお祝い
釜石市橋野町青ノ木の世界遺産「橋野鉄鉱山」で11日、八重桜まつりが開かれた。地元住民組織、橋野町振興協議会(菊池郁夫会長)と栗橋地区まちづくり会議(洞口政伸議長)が主催する、この時期恒例のイベント。遺産エリア周辺の八重桜は大型連休後半から続いた低温や降雨の影響で開花が遅れ、花の見頃はお預けとなったが、訪れた人たちは餅まきや豚汁の振る舞い、高炉場跡のガイドツアーなどを楽しんだ。橋野鉄鉱山は今年7月で世界遺産登録から10周年を迎える。
釜石観光ガイド会(瀬戸元会長、32人)による高炉場跡の見学ツアーでは、2人のガイドがインフォメーションセンターから希望者を案内し、史跡エリアに向かった。同会の川崎孝生副会長(84)は同所で鉄づくりが始まったきっかけ、1~3番高炉の稼働状況、高炉周辺にあった種砕水車場、長屋や御日払所などの役割を説明。良質な鉄鉱石の産出、燃料の木炭材料となる豊かな森林資源、高炉操業に必要な水車を回す水流(二又沢川)があったことで、一大製鉄産業が実現したことを教えた。
釜石市内から足を運んだ紺野和子さん(45)は同ガイドツアーに初めて参加。子どもたちが学校で釜石の製鉄の歴史を学び、鉄の検定を受けてきたこともあり、「子ども伝いに話は聞いていた」が、ガイドの解説でさらに理解を深めた様子。「『へえ~』というのがいっぱいありました」と声を弾ませ、「橋野は(四季のイベント開催などで)PRも頑張っている印象。世界遺産登録10周年を機に、より多くの人にここの魅力を知ってほしい」と願った。
まつり恒例の餅まきには幅広い年代が集まった。同振興協の菊池会長(70)ら地域の代表がトラックの荷台に上がり、「橋野鉄鉱山世界遺産登録10周年、おめでとうございます」との掛け声を合図に約800個の紅白餅をまいた。
同振興協女性部が調理した豚汁のお振る舞いには、今年も長い列ができた。12の具材には地元産の山菜ウルイ、ワラビ、フキも入り、春ならではの味を提供。手作りみそで仕上げた豚汁は来場者に好評で、この味を楽しみに毎年足を運ぶ人も多い。会場内では大槌町のバンド「ZENBEY絆」の演奏や釜石市の女形舞踊・尚玉泉さんの踊りもあり、まつりを盛り上げた。
大槌町の黒澤典子さん(61)は母スワさん(92)を連れて来場。「花は残念だったけど、おいしい豚汁をいただき、餅まきやバンド演奏もあって楽しめた。いい『母の日』になりました」と典子さん。初めて訪れたスワさんも「とてもいい時間を過ごせた」と笑顔を重ね、「(八重桜が)満開の時にまたぜひ」と再訪を望んだ。
同所の八重桜は1980年代に釜石ライオンズクラブが植樹。橋野鉄鉱山が世界遺産登録された2015年には同振興協が新たな植樹を行い、若木も花を咲かせている。インフォメーションセンタースタッフによると、昨年のまつり開催日(12日)は散り始めていたが、今年は開催日前1週間に寒さが続いたため、咲き始めたのは前日から。当日も曇り空で気温が低く、にわか雨や風もあって、多くがつぼみ状態だった。天気予報によると、今後1週間は最高気温が20度超えの日が続く予想で、一気に開花が進むとみられる。
同まつりは地域活性化などを目的に2007年にスタート。震災やコロナ禍での中止以外は毎年継続している。同振興協の菊池会長は「天気は悪かったが、大勢のお客さまに来ていただき、ありがたい。皆さんに愛されているまつりと実感する」と感謝。世界遺産登録10周年を迎える今年は、市主催の記念行事も多数計画される。「登録当初は年間1万人を超える来訪があったが、今は減っている。われわれ地元も市と連携しながら、少しでも来訪者増につながるよう魅力を高める取り組みを行っていきたい」と意気込む。