工場夜景ツアー15周年 元局長語る人気確信の時 鳴りやまない電話に手応え
川崎臨海部にある工場群の夜景を巡る「川崎工場夜景ツアー」が今年で15周年となる。「川崎の観光の目玉」となった工場夜景ツアーの立ち上げに携わった元川崎市経済労働局長の伊藤和良さんの感慨はひとしおだ。ツアーが始まるまでのエピソードを語ってもらった。
伊藤さんは現在、川崎ゼロ・エミッション工業団地(川崎区水江町)で事務局長を務める。
市経済労働局の管理職として市の観光行政に従事していた伊藤さんは2005年頃、工場を造形美、プラスのイメージでとらえる『工場萌え』という思想と、写真集を手掛かりに、モニターツアーを実施した。もっとも「川崎の観光と言えば川崎大師。川崎臨海部は公害の象徴、負のイメージしかなかった」と振り返る。本当に集まるのか、伊藤さんらは懐疑的だったが、募集集人数45人に対し応募者数は767人集まり「市役所の電話が鳴りやまなかった」と振り返る。この時、通常では入ることのできない工場からの夜景を見学する企画で、のちに東燃ゼネラル(現・エネオスHD)の社長となった武藤潤工場長が「クビをかけて」全面協力した。市の本気度も試されたという。
工場夜景ツアーはさまざまな企業の協力を得て現在に至る。工場群の光が放つ幻想的な光景は、時間によって見え方が変化し、それも魅力だ。さまざまなメディアやSNSなどでも紹介され、ツアーは今もって人気を博し続ける。伊藤さんは「観光とは文字通り光を観る。我々は光の部分に気づかなかったが、見直すことで価値があることを理解した」と語る。
工場夜景や臨海部を巡る産業観光ツアーは川崎市観光協会のウェブサイトで紹介されている。