迷わず助けて!消防大好き小学生4人「一日救急隊長」 学んだ救命法、伝える
消防が大好きな小学生4人が7日、釜石消防署の「一日救急隊長」を務めた。釜石市港町のイオンタウン釜石で開かれた応急手当の普及などが目的のイベント「救急ひろば」で、胸骨圧迫や自動体外式除細動器(AED)の実演などをした。「倒れている人がいたら迷わず助けて」。そんな思いを胸に抱きながら、買い物客らに「やってみて」と促した。
イベントは「救急の日」(9月9日)、「救急医療週間」(2025年度は7―13日)にちなんだもの。市民らの救急業務への理解促進に一役買ってもらおうと、小佐野小の濱田遥可さんと佐藤碧さん、鵜住居小の戸張藍さんと佐々木結萌さん(いずれも5年生)を一日救急隊長に任命した。8月にあった消防体験学習で熱心に活動する様子が釜石消防署員の目にとまり、起用された。
消防、レスキュー、救急隊員の制服姿の4人は、親子連れらに声をかけ、救助に関するクイズを解いてもらった。人形を使った胸骨圧迫や訓練用のAED操作体験も呼びかけ。「倒れている人がいたら、胸やおなかが動いているかを見る」「周りに人がいたら協力を求めて。人数は多い方がいい」「胸骨圧迫はけっこう力がいる。腕を伸ばして、しっかり押す」「心肺蘇生は救急車を待っている間、ずっと続ける」などと、事前学習で覚えたことを伝えた。
介護士を目指している濱田大地さん(遠野緑峰高3年)は、将来必要になるとクイズ、胸骨圧迫にも挑戦。「知らないことがいろいろあった。実際にやってみると大変さが分かるし、刺激にもなった」と、夢実現への力にした。
「みんなに伝えられるか不安だったけど緊張しないでできた」と話す佐藤さん。心臓マッサージ(胸骨圧迫)のやり方、AEDの使い方を知ってほしいと活動した。「手のひらの硬い部分をきちんと使う。押すときの深さは単三電池の長さ、5センチくらい。1秒間に2回のペースで繰り返す」。しっかりできたと胸を張る。消防が好きな理由は「車両も制服もかっこいいから」。レスキュー隊員に憧れ、「新しい知識をもっと増やしたい」と笑った。
戸張さんがイベントで熱心に体験活動を促した訳は「倒れている人がいたら迷わず助けてほしいから」。いざという時に動ける人が増えてほしいと願いを込めつつ、「心肺蘇生や救命の方法を覚えたら、人を助けることができてうれしいと思うし、かっこいい」とはにかむ。将来の夢は人を助ける仕事をすることで、今、一番の志望は消防士。一日救急隊長として「勉強したことを生活に生かしたい」と表情を引き締める。さらに言葉を続ける。「AEDを開けると説明があるから迷わず使って」。
同署によると、管内の救急に関する出動要請件数は年間約1500件で、平均すると1日に約4件の要請がある計算になる。救急車が119番通報を受けてから現場に到着するまでの時間は、全国平均で約10分。釜石の市街地では全国とさほど変わらないが、半島部や山間部に向かう場合はさらに時間を要する。
心肺停止状態の人には一刻も早く、心臓の動きを回復させるための処置が必要で、近くにいる人が胸骨圧迫やAEDの操作をすることで救命率は向上する。同署救急係の木村一生係長は「応急手当によって脳の酸欠状態を解消することで、命をつなぐことができる。特別なことではないことを一人でも多くの人に感じてもらいたい。行動したら、大切な人を守るためになる。イベントが救急の輪を広げる機会になれば」と期待した。