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西荻窪の中華居酒屋『オイシイ水餃子クラブ』。デザイン力がもたらすブランディングの功績

飲食店ドットコム

食の仕事人
株式会社DONOの代表取締役・岩谷虎之介氏

飲食店にとどまらず、アートやファッションなど、個性的な店が点在する西荻窪。そんな街に溶け込むように2025年2月にオープンしたのが「水餃子と創作中華、台湾烏龍茶のおみせ。」をコンセプトに掲げる『オイシイ水餃子クラブ』だ。運営はデザイン会社である株式会社DONO(ドノウ)。大学時代の同級生で、以前から飲食店経営を夢見ていたという同社代表取締役の岩谷虎之介氏、栗本勇詩氏に話を聞いた。

ものづくりに対する反応が、ダイレクトに感じられる飲食業に憧れていた

西荻窪駅南口から徒歩2分の好立地ながら、隠れ家のような佇まい。ひときわ目を引くのが『オイシイ水餃子クラブ』の店名が描かれたポップなロゴデザインだ。

ここはかつて、約20年にわたり地元住民に愛されたイタリアンレストランがあった場所。一枚板のテーブルやカウンターはその歴史を継承する形で現在も活用しながら、深いグリーンと木を基調にした店内は落ち着いた雰囲気が漂う。

かつて使われていた一枚板のテーブルやカウンターが温かい雰囲気をつくり出している(写真提供:株式会社DONO)

『オイシイ水餃子クラブ』を運営するDONOはWebデザインをはじめ、ロゴやパッケージ、各種グラフィックなど多岐にわたる分野でデザインおよびブランディングを手がけている。

「僕たちは『ものづくりで人の暮らしを豊かにしたい』という思いからデザイナーの道を選びました。ただ、どんなに思いを込めたデザインも、プロジェクトが形になるまでには時間がかかりますし、完成したあとも、お客様の反応が直接感じられる機会は多くありません。その点、飲食店は、おいしい料理やサービスを通じて、すぐ目の前でお客様の反応を受け取ることができる。その距離の近さに、ずっと憧れがありました」と岩谷氏。“ものづくり”に向き合う姿勢は、デザインも飲食も変わらないと笑顔を見せる。

立地や広さなどすべての条件がマッチしていたという現物件。情報が出た当日に申し込んだという(写真提供:株式会社DONO)

出店場所は中央線の西側を中心に半年かけて探した。

「阿佐ヶ谷から吉祥寺あたりまでで、サブカルチャーが息づき、食への関心が高い人が多く集まる街に出店したいと思っていました。西荻窪は、物件が出たらラッキーという感じで。結果的に、駅からの距離、立地、広さ、家賃、すべての条件が揃った物件とめぐり合い、すぐに申し込みました」(岩谷氏)

何しろ初めての飲食店経営。当初は何から始めれば良いものか手探りの状態だったというが、SNSによる発信が大きな助けとなったと振り返る。なかでもインスタグラムは、母体がデザイン会社である強みを最大限に活かし、雑誌の1ページのようなビジュアルと構成に。店の世界観やコンセプトが伝わるように工夫をして作り込んだことで、次第にフォロワーが増え、週末には投稿を見て足を運ぶお客の姿も見られるようになったという。

ドリンクメニュー。写真左には個性豊かな台湾茶が並ぶ(写真提供:株式会社DONO)

台湾直送の烏龍茶と、もっちりジューシーな水餃子

「水餃子と創作中華、台湾烏龍茶のおみせ。」というコンセプトには、栗本氏が台湾にルーツを持つこと、そして中華料理系の居酒屋で働いていた共通の友人が、ちょうど独立を志していたというタイミングが重なった背景がある。同店では、「台湾料理」と聞いて多くの人が思い浮かべる屋台や庶民派グルメなどのイメージにとらわれず、ポップさとカジュアルさ、そしてさりげない上質感を融合させたスタイルを提案する。

メニューの1ページ目に並ぶのは、多彩な台湾烏龍茶。使用する茶葉は、栗本氏の母のつてをたどって台湾から直輸入しているハイグレードのもののみ。「台湾茶割り」(各825円)として楽しめるほか、ノンアルコールドリンクとして、「温茶」(各1100円)、エスプーマを使って泡状で提供する冷たいお茶「香香烏龍茶(シャンシャンウーロンチャ)」(各715円)も用意する。また、スタッフの中にはバーテンダーが在籍しており、「今日の料理に合うカクテル」といった個別のオーダーに柔軟に対応するなどの工夫も見られる。

ひと言で烏龍茶といっても香りも味わいも様々。「自分好みの一杯を見つけてほしいと」栗本氏(写真提供:株式会社DONO)

料理の主役はもちろん、一つひとつ手包みしている水餃子だ。水餃子だけでお腹いっぱいになってしまわないよう、皮はほどよい厚みでもっちりとした食感、あんは豚ひき肉、キャベツ、白菜、ニラのシンプルな構成で、ラードを加えることでジューシーさをプラスしているのが特徴。

フードメニューは季節ごとに少しずつ入れ替わる(写真提供:株式会社DONO)

「プレーン水餃子」(500円)に加え、エビの殻でうま味をプラスしたピリ辛味の「海老香る紅油(フォンユ)」、沙茶醤や卵を合わせたタレに水餃子をくぐらせる「台湾すき焼き」、黒ニンニクで香り高く仕上げた「ニンニク醤油」(各660円)などが定番メニューにラインナップ。ここでしか味わえない変わり種3種を盛り合わせた「名物水餃子3種食べ比べ」(990円)は訪れる人のほとんどが注文するまさに名物となっている。

「名物水餃子3種食べ比べ」(写真提供:株式会社DONO)

水餃子以外の料理にも、随所に台湾のエッセンスを盛り込んだ。山椒の香りが際立つ「本格麻婆豆腐」(1,019円)は、人気メニューの一つ。このほか、四川風シビ辛ソースの「赤」と、バジルやニンニク、ショウガなどを合わせた台湾三杯鶏(タイワンサンベイジー)ソースの「緑」の2種類を展開する「よだれどり」(880円)、台湾で親しまれる香味油「木姜油(ムージャンユ)」を用いたカルパッチョといった具合だ。

掲げたコンセプトを確実に軸に据えながらも、トレンドやニーズを押さえ、オリジナリティを加えるスキルは、デザインと通ずるものがあるのだろう。彼らがデザイナーとして培ってきた経験は、飲食店のブランディングや経営にも確かに寄与しているといえそうだ。

台湾料理との相性を考えてセレクトされた自然派ワイン(グラス990円~)なども揃い、幅広い楽しみ方が可能

店の歴史はまだ始まったばかり。地元に根ざす店を目指して

現在の客単価は約4,000円、オープンから順調に売上を伸ばしているが、「まだまだいけるはず」と岩谷氏は意気込みを見せる。7月からは「昼飲み」と題して、土日祝日限定で13時から営業を開始した。特に女性のグループ客を中心に好評で、昼間からゆったり料理とお酒を楽しむ新たなニーズを掘り起こしている。

ワインの造り手を招いたメーカーズディナーなど、新しい取り組みにも挑戦している(写真提供:株式会社DONO)

一方で、課題として感じているのは「水餃子の店」と掲げることで、食事がメインの店だと認識されがちな点だという。「もちろん、ありがたいことなのですが、平日は23時まで、週末や祝日は24時まで営業しています。遅い時間帯にもふらっと立ち寄って、お酒が楽しめる場所だということを広めていけたら」(栗本氏)

目指しているのは、上質な料理やサービスを提供しつつも、肩肘を張らずに過ごせるほどよくゆるい雰囲気の場所。「地域の人に長く愛される店になれたら」と両氏は語った。

『オイシイ水餃子クラブ』
住所/東京都杉並区西荻南3-8-16
電話番号/03-5941-8484
営業時間/月~木17:00~23:00(L.O.22:00)、金・祝前日17:00~24:00(L.O.23:00)、土日祝13:00~24:00(L.O.23:00)
店休日/不定休
坪・席数/20坪・30 席
https://www.instagram.com/oisuiclub/

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