1988年の春~ 小説家・清水晴木「晴れ、ときどき懐う(おもう)」
千葉県習志野市出身、在住の小説家・清水晴木さん。累計4万部突破の『さよならの向う側』シリーズなど多数の執筆した小説の数々は千葉を舞台にしています。そんな清水晴木さんが著作と絡めて千葉の思い出をつづります。
清水晴木さん
1988年生まれ。東洋大学社会学部卒。2011年函館イルミナシオン映画祭第15回シナリオ大賞で最終選考に残る。2021年出版の『さよならの向う側』はテレビドラマ化して放送。『分岐駅まほろし』『旅立ちの日に』『17歳のビオトープ』など著作多数。
1988年の春
春にふさわしい咲き誇る桜の表紙が目印の著作『旅立ちの日に』が今年2月に文庫化された。
富津市にある金谷港を舞台にした作品で、2023年の東京都立高校入試の問題にも選ばれている。
物語の中で描かれるのは金谷に住む人たちの出会いと別れの物語だ。
そして平成という一つ前の時代の中で話は進んでいく。
平成という時代を描こうと思ったのも、私が1988年の生まれで、平成が2年、3年になれば、私も2歳、3歳となるというような、平成と同じ速度で年を重ねてきたことが理由だ。
学生の青春時代を平成の真っただ中で過ごし、30歳になってから令和を迎えた。
しかし厳密にいえば、1988年生まれの私はギリギリ昭和生まれである。
なので年上の先輩方と話をする時は「僕も同じ昭和生まれですから」と言って親近感を装い、年下の後輩たちと話す時は「同じ平成を生きてきたからさ」と都合のいいことを言ったりする。
私の学年は、昭和63年と64年、平成元年生まれが混在する年代なのだ。
そんな1988年であるが、ふと振り返って調べてみると、4月8日に季節外れの大雪があったことを知った。
4月に雪が降ること自体まれだが、東京都心でも9センチの積雪があったというから驚きだ。
私はもちろん母親のおなかにいた頃なので知る由はないが、出席番号が1番だった同級生は既にその雪を実際に体験していたのかもしれない。
ちなみに小学校の出席番号が誕生日順なのは、都道府県の中では千葉県が唯一というのも最近知ったから驚きだ。