海の歴史を学び未来を考える!<海洋学習指導者養成講座 in 北九州>に参加してみた
「海洋学習指導者養成講座 in北九州」が1月25日、タカミヤ環境ミュージアムで開催されました。
若松区と戸畑区の間に広がる<洞海湾>は、かつては工業地帯として発展し、日本の近代化を支えた重要な港湾の1つでした。
現在では環境改善が進み、美しい景観や海沿いの散策スポットも魅力の1つとなっています。
そんな洞海湾の歴史についても学べる施設で開かれた同講座に参加した様子をレポートします。
海の学び場をつくろう!専門家が語る海洋学習
「海洋学習指導者養成講座」は、参加者が<海の伝え手>となり、所属するそれぞれの施設や地域活動において海を活かしたイベントや企画を実践することで、海洋環境問題や保全活動に意識を向ける人々を増やすことを目的としています。
主催は「海の環境教育NPO bridge」と「LAB to CLASSプロジェクト」で、海の指導者や海の学び場を増やすため、全国各地で地道な活動を続けています。
「海と博物館研究所」所長 高田浩二さんが登壇
この日、登壇したのは「海と博物館研究所」所長の高田浩二さん。 高田さんは、大学で海洋学を専攻し、卒業後は海洋研究や博物館の展示企画に携わる仕事に従事しています。
また、海の中道マリンワールド元館長でもあり、博物館と地域社会が連携する教育に関して多くの実践研究を行う第一人者でもあります。
「海あそび舎」代表の八木澤潮音さんによる進行
講座の司会進行を務めるのは「海あそび舎」代表の八木澤潮音さん。 八木さんは、海好きダイバーの両親に育てられ、12歳でダイバーライセンスを取得したという異色の経歴の持ち主です。
「海が好き」を原動力に福岡県遠賀郡芦屋町で海洋自然体験や海の環境教育の活動をしています。
地域にあるものすべてを教育資源に
当日は九州全域に加え、沖縄県や山口県など県内外から集まった34名が参加。講座は午前と午後の2部制で、前半は高田さんによる講義、後半は体験型海洋学習教材「LAB to CLASS」を用いたワークショップとグループワークが行われました。
地域と連携した海洋教育に関して数多くの実践例を持つ高田さんの話には、参加者全員が興味津々で耳を傾けていました。
講座を通して参加者同士の交流も深まり、海のプロフェッショナルたちならではの意見も飛び交う会場内は熱気であふれます。
講座の終盤に高田さんは、「同業者同士が集まると、ついつい愚痴をこぼす場面も出てきそうなものだけど、今日は前向きな言葉が多く聞こえてくるのが嬉しいですね」と笑みを浮かべていました。
参加者それぞれにも笑顔が見られ、とても有意義な時間となりました。
洞海湾の再生と未来 <死の海>から<希望の海>へ
北九州の海といえば、「くきのうみ」とも呼ばれる洞海湾。 幼少時代を戸畑で過ごしていた筆者にとっても、洞海湾はとても身近なものでした。
そんな長年人々から愛されてきた洞海湾にはかつて、<死の海>という異名がありました。1960年代の工業化に伴う海洋汚染で、洞海湾には公害レベルのヘドロが溢れていたのです。
洞海湾が奇跡の海として復活できたのは、多くの市民と企業・行政が力強く団結することができたからです。そこに数えきれない努力があったといいます。
海を学び、守るためにできること
北九州は環境再生都市として、そして洞海湾は奇跡の海として、世界的な注目を集めることとなりました。けれど一方では、沿岸域の藻場枯れや海岸漂着ゴミなど、新たな海洋環境課題にも直面しています。
海を守るために、環境問題と水質改善、産業と環境のバランス、観光資源の活用、防災対策など、持続可能な地域づくりが必要だと講座に参加して改めて感じました。
筆者は、この講座をきっかけに、「海を伝える」人が増え、やがて「海を守る」活動へとつながっていくことを願っています。また「海について学び、海が抱える課題について真剣に考える」講座の機会も、もっとたくさんの人に知って欲しいです。
詳しい講座の報告は「LABtoCLASS」公式サイトからも見ることができます。
※2025年3月8日現在の情報です
(ライター・Kanae Nidoi)