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山下達郎も参加した池田典代のアルバム!世界的なシティポップ・ブームで突然の高評価

Re:minder

1979年08月00日 池田典代のアルバム「Dream In The Street」発売日

近年のシティポップ・ブームで突然高評価を受けたアーティストたち


2010年代後半から盛り上がっているシティポップ・ブーム。その全盛期は1970年代から1980年代にかけてなので、今も第一線で現役バリバリの人は、ホンのひと握りしかいない。マイペースの活動にスローダウンしているアーティストも少なくないし、既にステージを降りた方、残念ながら鬼籍に入ってしまった方も…。さらにいえば、どこかに消えてしまったか、まったく消息が掴めない人だっている。

「君たちキウイ・パパイア・マンゴーだね。」の大ヒットを飛ばし、1990年代初めまで高い人気を誇った中原めいこなどは、その典型だろう。近年のブームで突然高評価を受け、本人不在のままで復刻が繰り返される珍現象も発生している。そして同じように高評価を受けているのが、間宮貴子の唯一の作品『LOVE TRIP』(1982年)、そしてココに取り上げる池田典代『DREAM IN THE STREET』(1979年)である。

熱心な達郎フリークの間で徐々に名前が知られていくことになった池田典代


今でこそ山下達郎が楽曲提供し、編曲やコーラスで参加していたことで知られる『DREAM IN THE STREET』。だが発売時の1980年はおろか、2000年代に入るまでは、ほとんど無名の存在だった。それが、2004年に編集された山下達郎ファンクラブ会員用通販アイテム『山下達郎作品集 vol.1』に、タイトル曲「Dream In The Street」が収録され、熱心な達郎フリークの間で徐々に名前が知られていくことに…。そして2012年、ようやくのCD復刻で、オリジナルリリース時から様々ないわくのついた作品だったことが明らかになっている。

山下達郎自身による作品集の解説によれば、池田典代は “私が下北沢ロフトや新宿ロフトに出ていたころの知己” で、“完成後に曲の差し換えやミックスのやり直しなど複雑な経緯をたどった末、ほとんど宣伝もなしにリリースされた” とある。そこで筆者が関係者を見つけて話を聞いてみるとーー

「のんちゃん(池田のニックネーム)は高橋ゲタ夫(b / 元スクールバンド、高中正義や松岡直也との活動で有名)とバンドを組んでいて、ダディ竹千代&東京おとぼけキャッツでもゲストで歌っていました。それですごく気に入って、デビューさせようと…」

ーー という証言が。

当時の若手有望株のミュージシャンが多数参加してアルバムを完成


1970年代の日本の実力派女性シンガーには、少し暗いイメージがあった。しかし彼女はカラリと明るく、そのキャラを活かして、ソウルとジャズにラテンが混ざったようなクロスオーバー・サウンドがフィットした。具体的には、1990年代以降のクラブシーンでも注目された伝説のフュージョンバンド “シーウインド” のポーリン・ウィルソンや、ジョージ・デューク、スタンリー・クラークらと縁深いディー・デイー・ブリッジウォーターあたりを狙ったとか。

しかし、早くから彼女の売り出しに手を上げていたレコード会社とは最終的に売り出し方針が合致せず、他のレーベルへと鞍替え。そこで創作の自由を手に入れ、達郎のバンドメンバーのほか、高中正義、松岡直也、村上 “ポンタ” 秀一、鈴木茂、森園勝敏、小原礼、山岸潤史、ジョニー吉長、佐藤博、小林泉美、鳥山雄司と、当時の若手有望株のミュージシャンが多数参加してアルバムを完成させた。

また、カシオペアのデビュー直前の野呂一生と、大橋純子&美乃家セントラル・ステーション 〜 一風堂の土屋昌巳が、プリズムのメンバーをバックにギターを弾く曲もあって、実に興味深い内容になっている。さらには、来日中のセルジオ・メンデスがスタジオを覗きに来た、なんていうエピソードが残っていて、その時の写真が関係者によってSNSに公開されたこともあった。

池田典代唯一無二の魅力を詰め込んだアルバム


ところが、自由に作っていいと許可したはずのレーベルが、“これじゃ出せない”と発売拒否。発表が暗礁に乗り上げて1年近くが過ぎるうち、新たなプロデューサーが音楽雑誌とタイアップし、歌詞を一般公募して、「恋のジャイロ」と「サマーオレンヂの恋」が生まれることになる。これを収録するべく、一部の楽曲を差し替えて新ミックスを制作。曲順やアートワークが一新され、ようやく発売に漕ぎ着けている。

池田のコケティッシュな魅力をアピールした「Dream In The Street」、アース・ウインド&ファイアーを髣髴とさせる英語曲「Love Is Like A Party」、中森明菜「ミ・アモーレ〔Meu amor é・・・〕」を先取りしたような「アディオス」、そしてミックスダウンでスタジオを訪れた達郎氏がタイトルを付けた「たたずんだ街角」など、彼女の唯一無二の魅力を詰め込みながらも、ニッチな存在に甘んじてしまったアルバムである。

そう、それこそ満足なプロモーションが行われなかったどころか、所属レーベルの閉鎖により、彼女は将来さえ閉ざされてしまう。しばらくはライヴハウスで地道に歌っていたと聞くも、その後の行方はプッツリ。もう足取りは掴めない。でもそれから45年が経過して、池田典代の存在は世界に知られるようになっている。今はその事実がご本人に伝わっていることを願うばかりだ。

City Pop on Vinylでアナログ盤として復刻


前述したように、このアルバムには、テストプレスされたものの世には出なかったオリジナル仕様と、収録曲やミックスが異なるオフィシャル・リリースの2パターンが存在するわけだが、8月初頭から開催されるCity Pop on Vinylで復刻されるアナログ盤は、そのオフィシャル盤の3度目のリプレスになる。

ちなみに、差し替えられた幻の楽曲のうち、「ガラスの虹」と「リトル・チャイルド」はシティポップ・ブームの余波を受け、2020年に7インチシングルとして日の目を見ている。とりわけ前者は、小林泉美作曲の高速サンバで、TVアニメ『うる星やつら』のサントラに流用され、その後タイトルとミックスを変えて某アイドルのデビュー曲にも提供されている。

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