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民社党は死なず? 「反共」と「愛国」に生きた闘士たちの解党から30年

J-CAST会社ウォッチ

民社党。その昔、民主社会主義をかかげる小政党があった。初陣の衆院選を前に社会党委員長刺殺事件が起き、自民党と社会党の谷間に新党ブームは埋没。新進党合流(1994年12月)にともなう解散まで、結成時の国会勢力を上まわることはなかった――。

藤生明 『反共と愛国 保守と共棲する民主社会主義』(中央公論新社)

日本会議、新しい歴史教科書をつくる会など保守運動を支えた面々

■藤生明 『反共と愛国 保守と共棲する民主社会主義』(中央公論新社、2420円[税込])/2025年3月7日発売

本書は、そんな民社党をめぐる物語である。ただし、政党史の類いかというと、ちがう。

筆者は民社党や、学者らの民主社会主義研究会議(民社研)、全日本労働総同盟(同盟)に関わった人々を「民社系」と括った上で、党がなくなった後も保守運動と合流、存在感を発揮している姿にフォーカス。彼らを今日まで突き動かしているものを反共と愛国の二つの言葉で読み解こうとしたのだという。

取材のきっかけは、安倍長期政権に伴走した日本会議とその一群だった。朝日新聞で右翼・右派言論を専門とする編集委員だった筆者が、集会の登壇者や裏方に目をやるたび彼らがいた。

例えば、田久保忠衛・日本会議4代目会長である。外交ジャーナリスト・国際政治学者で、民社研の後身「政策研究フォーラム」で機関誌担当の常務理事を務めた民社党ブレーン。加えて、明治節ゆかりの11月3日を文化の日から明治の日に変える祝日法改正運動をしている「明治の日推進協議会」の会長を、昵懇の塚本三郎・元民社党委員長から受け継いだ人物だった。

また、「新しい歴史教科書をつくる会」の高池勝彦会長は反共の闘士で、同盟の労働裁判を数多く手がけた民社系弁護士。櫻井よしこ氏が主宰する国家基本問題研究所の設立に田久保氏とともに奔走した。同研究所の運営には民社系の人々が数多く携わっている。拉致問題に取り組む特定失踪者問題調査会の荒木和博代表もそんな一人。民社党解散時、新進党への合流を拒否した民社党書記だった。

山谷えり子、稲田朋美、河村たかし...知られざる人脈

現職の国会議員に目を移せば、神道政治連盟の組織内候補で、ジェンダー教育や家族制度に一家言ある自民党の山谷えり子・元拉致問題担当相の国政初挑戦は民社党から。稲田朋美元防衛相はそもそも前出の高池弁護士が歴史裁判にスカウトし発掘した弁護士で、その歴史観が保守界隈の注目をあび、安倍晋三氏に一本釣りされた。自民党議員になった後も、後援会長は高池氏が務めている。

また、国政に復帰した日本保守党共同代表の河村たかし・前名古屋市長は春日一幸・元民社党委員長の秘書出身。民社党公認で愛知県議選に立候補、落選した後、さまざまな政党を渡り歩くことになった......。

つらつらと固有名詞を挙げてみたが、要するに民社党ゆかりの少なからぬ人々が保守派と共闘、または一体化し、それぞれの運動、政党の中でキーパーソンであり続けている事実が本著執筆の端緒、というのである。

物語は田久保氏の死去や、民社党・同盟OBらが集まった結党60年の懇親会から始まる。「愛国の政治」というフレーズが歌詞にある党歌の斉唱につづき、乾杯の音頭をとった塚本氏の発声は「民主社会主義こそ日本を救うところの『愛国の政治』だと大きく叫んで乾杯させていただきます。同志のみなさん、乾杯!」だった。

彼の奉じる民主社会主義とは何か。社会民主主義とはどう違い、また、息絶えだえの共産主義に今なお敵意をむき出しにするのはなぜか。懇親会の場面では、産経新聞元会長が「民社党は近い親戚のよう」とあいさつする場面などが記されているのだが、そうした冒頭の描写や筆者の問いかけが、本編の中で一つひとつ伏線回収されていく展開は読んでいて痛快である。

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