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パーカーズ『HUG』インタビュー――やっていきたい音楽、今、鳴らしたい音楽を見つたパーカーズの強み

encore

──3月28日にタクオさんがパーカーズに正式加入しました。5人組バンドになったことで心持ちに変化はありますか?

フカツ「そもそもタクオはサポートメンバーとしての期間が長くて、対バンとかライブハウスの人にももうほぼメンバーのように思われていましたし、正式加入が決まる前からもう“この人だな”って感じがなんとなくあったので、大きく変わった感じはないです」

──前作『君にもらった愛』が“パーカーズの第二章という意識だ”と話していましたが、今回はそれをさらに音楽的に表現した感じなのかな?と思いました。

豊田賢一郎「そうですね。自分たちがやりたい“パーカーズのポップ“というのが、いろんな楽器が入った楽曲ってイメージが多いので、それを盛り込むことを意識してできたと思います」

──ストリングスやピアノが入っている楽曲の中でもどういう音楽の影響が大きいですか?

豊田「「Hug me!!」に関しては僕が好きな星野源さんの音楽が影響しています。源さんはソウルやファンクなどブラックミュージックを取り入れてやっているんですけど、自分が聴いていたエッセンスを曲に起こして今回のノリ感と言いますか…少しゴスペルっぽいパートもあったりとか、そういうのを意識して作ってみました」

──アルバムが始まるとっかかりとして「Hug me!!」は大きかったですか?

豊田「実は「Hug me!!」はmini Albumのタイトルが『HUG』に決まってから作り始めました。“新しいスタイルもやってみたい”と思ってこの楽曲が生まれたんです。今回、mini Albumを作る段階で曲を集めたら、心をいろんな角度で抱きしめてくれるような曲が多かったので、“タイトルは『HUG』が合うんじゃない?“っていうのがきっかけで作りました」

──なるほど。これまで通り豊田さんとねたろさんが出した曲が自然とそういう傾向を持っていたんですね。

ねたろ「そうですね。それをブラッシュアップしてポップにしようという感じで作ってみました」

──ねたろさんのひとりでコツコツDTMをやるスタイルは続いているのでしょうか?

ねたろ「今もやっております(笑)」

フカツ「遠隔で曲を仕上げるスピードがだんだん上がって来てる気はします。実際この「Hug me!!」を作る時も豊田が弾き語りベースでデモを20曲ぐらいバーンと出したところから1週間以内で僕とタクオとナオキで肉付けをして、それを事務所の人も含めてみんなでアレンジとかをいろいろ練りながら作っていったので、各々のスピードアップがあったからこそ生まれた曲なのかな?って感じがします」

ねたろ「僕はストリングスも勉強してみたくて打ち込んでみたり、サックスも音源を買ってやってみようかな?って今、やっているんですけど、一番難しかったのはボカロでした。いつも豊田に歌ってもらう前にガイドボーカルを自分で歌うんですけど、僕の声が聴きづらいんじゃないかな?と思ってボカロを勉強してみたんです。でも難しくて今は挫折中ではあるんですけど(笑)。どう? 歌いやすかった?」

豊田「歌いやすかった」

一同「(笑)」

豊田「いつもねたろが送ってくれる声は一オクターブ下なんですけど、それだといまいち歌い方の輪郭がわかんなくて…。で、ねたろに以前から相談していたら、ねたろがボカロをやってくれたんです。歌いやすくなったかな?という感覚はあります。ただ、人間感がなさすぎて僕も実際に歌い上げた後に聴いてみたら自分の声がAIっぽいなっていう…」

ねたろ「そこはちょっと難点です(笑)」

フカツ「ガイドをなぞっちゃうんだろうね」

──(笑)。豊田さんはかなり曲を出したんですね。

豊田「それこそ「Hug me!!」っぽいノリの曲も出しましたし、ハネの感じの「君が好き」っぽい曲とかいろいろ出したんですけど、みんなで聴いてもらった時に“「Hug me!!」がすごくいいんじゃない?”ってなりました。“新しい挑戦という感じもしっかり出ているし、相応しいかもね”ということで選んでもらって作りました。あの歌詞を書き終わったときに達成感で涙があふれ出ちゃって…」

一同「(笑)」

豊田賢一郎(Vo/Gt)

──すでに集まっていた曲に“抱きしめてくれるようなニュアンス”を豊田さんが感じていたというのは具体的に言うと?

豊田「これは僕の感覚も大きいと思うんですけど、サウンドの壮大さとか日常に寄り添っている歌詞だったり。どちらかというとパーカーズの曲って“頑張っていこうぜ”って曲が多いかな?という印象なんですけど、今回は“弱くてもいいんだよ”というか…“自分の弱さもさらけ出していこう”といった、弱気になっている人の背中を押すのではなくて、寄り添ってあげるような楽曲が多かった印象があって。だから『HUG』っていうタイトルが僕の中ですごくしっくり来て」

──確かに「Ding Dong Dang Dong」も<雨が降って地は固まるが 心はそうではないみたいじゃん>という、慣用句の通りにはならないと歌っていますしね。

豊田「そういうことです。この詞、すごく好きなんですけど(笑)、心って本当に安定していないなと思って。日本語に気持ちをうまく落とし込めたと思います」

タクオ(Ba)

──皆さんがバンドアレンジをする上でやりがいがあった曲を教えてもらえますか?

タクオ「僕は「Ding Dong Dang Dong」です。常に動いているベースと言うか…サビはウォーキングしてますし、2番のAメロは“1回他の楽器全部を鳴らさないで“って要望を出して、で、スケールアウトして弾いて、みたいな。2Bでは賢ちゃんに”走っているようなベースを弾いて欲しい“ってリクエストをもらって何パターンか試してみたり、いろんなパターンのアレンジをしてみたので、この曲は完成した時の満足度が高かったです」

ナオキ(Gt)

ナオキ「僕は「大恋愛」かな? 気付いたんですけど、僕、バラードを弾くの得意だなって。泣きのフレーズというか…歌心がある耳に残るフレーズはずっと意識していたんですけど、バラードだとそれがより活かせると思って。「大恋愛」は抑揚の部分もあって、ギターソロは最高に泣けると思います」

──こういう曲でギターソロを弾かないでどうする?って感じですよね。

ナオキ「あとラスサビの歌の後ろでギターがちょっと暴れているんです。それをフカツさんに褒められました(笑)」

フカツ「今回はまずタクオが正式メンバーとして初めてレコーディングをするアルバムなので、最初から僕とタクオが同時に録音しています。以前まではタクオに僕達が録った音源を遠隔で送って後日納品してもらっていたのが、今回から僕のドラムと一緒に録ったので、まず、この時点でグルーヴ感が今までの楽曲と全然違うと思っていて。プラス、ストリングスやピアノを加えて楽器数がかなり増えたので、レコーディングした後のミックスもチェックするときには気をつかいました。だから、さっきナオキが“裏で鳴っていてすごく良い!”と言ったのはボーカルも殺さず、しかもストリングスもちゃんと聴こえるんだけど、そこの合間を縫ってすごくいいギターを弾いてるなって思ったからです」

タクオ「前まではレコーディングしたものが送られてきて初めて聴いて、それに数日でベースを入れて納品していたので、殆どアレンジを考える時間がなくて、弾きながら考えていたんです。でも、今回からはデモの段階から一緒に作っているので他のどの曲と聴き比べても今回のアルバムは一番ベースアレンジも凝っていると思います」

──それはすごく感じます。

フカツ(Dr)

──ちなみにフカツさんは豊田さんの曲の中では?

フカツ「やっぱり「Hug me!!」かな。今まで一切やったことがなくて触ったこともない感じのリズムの曲で、“こんな感じかな?”と思ってやってみたら“できんじゃん、すごい!”ってメンバーに言われて。リズムを考える時も“多分ここはこうだな”って浮かぶようになったので、今までパーカーズでやってきたことが全部繋がってできたんだと思いました」

ねたろ(Gt)

──ねたろさんの曲は歌詞が新機軸かな? と感じました。「トマトジュース」も「おやすみのキス」もユニークです。

ねたろ「どちらもラブソングです。「トマトジュース」は今までの自分のちょっと変な世界観…「地獄ランデブー」とか「ONSEN」、「中華で満腹」のような王道とは少し外れた世界観が新しい感じで作れたと思っていて」

──豊田さんの歌詞は自分の心象に近い感じですが、ねたろさんの場合、何かから連想されるものと言うか…。

ねたろ「そうですね。僕は“自分のことを書く“というよりは、”豊田がこれなら歌えるかな?“っていうことを考えて作っているんですけど、割と抽象的な部分も多い感じがします。聴いてくださった方に答えを見つけて欲しいという願いがあって」

──「トマトジュース」はパワーコードで攻める感じで、対照的に「おやすみのキス」はクラシカルな展開ですね。

ねたろ「「おやすみのキス」は自分の大切な人がいなくなってしまった時に作った曲なんですけど、“いなくなってしまったけど夢ではまだ会いたい“という未練の残った曲になっていて、それこそピアノやストリングスが入ったことによって、よりバラードの世界観が表現できるようになった曲です」

──『HUG』に収録されているねたろさんの3曲はバランスが取れていますよね? もう1曲が「ASOBO」ですし。

ねたろ「(笑)。「ASOBO」も曲を作るとき以外というか、素の自分がかなり真面目な性格なので…」

豊田「自分で言うんですね?」

ねたろ「真面目なので。“遊びたい“じゃないですけど<ASOBO>って呪文として唱えることで、”もっと気楽に生きようよ“っていう感じを取り入れたくて…それを真面目な人に伝えたかったので」

──ねたろさん曲での皆さんのアピールポイントも訊かせてください。

タクオ「僕、「おやすみのキス」がすごく好きなんです。歌詞がよくて、スタジオでプリプロとか終わって弾いている時に泣きそうになっちゃって(笑)」

ねたろ「そうなんだ(笑)」

タクオ「ストリングスや他の楽器が入るので、ベースのアレンジもそんなに激しくはしていなくて。音数が少ない方が他の部分が際立っていいかな?と思って、あまり動いたアレンジをしていないんです。いろんな楽器の音がいい。歌詞もいいしメロもいい。みたいな」

──ナオキさんはどうですか?

ナオキ「僕は王道爽やかロックな感じで「トマトジュース」ですね。さっき“バラードが得意”って言ったんですけど、王道ロックももちろん好きなので。この曲の何がすごいかっていうと2回転調するんですよ。リードギター泣かせ!」

ねたろ「(笑)」

ナオキ「2回転調すると弾いているところから2つずれて、オクターブ奏法って割と動くんです。それが半音ずつ上がってくるので途中で何をやっているかわからなくなっちゃう(笑)。でもギターソロもすごくカッコよく弾けました。歴代の曲の中で三本指に入るくらいいいギターソロが弾けたんじゃないかな? 普通にとても覚えやすくてカッコいいですし、誰か真似してくれないかな…」

フカツ「僕、転調ないから全然気持ちいいよ!」

一同「(笑)」

──(笑)。フカツさんはどうですか?

フカツ「僕は「ASOBO」かな? ドラムソロから入る曲ですけど、一番太鼓に向き合った曲かもしれません。スネアだけではなくて、“ここはタムを強く鳴らした方が鼓笛隊みたいな雰囲気のドラムが出てるかも”とか思って、2Aはフロアとバスドラだけなんです。あまりやったことがないリズムワークだったので一番考えながらやったにしては一番時間がかかっていないんです。録っている最中もこの曲の歌詞と気持ちが…ねたろと僕が同い年だからかも、なんですけど、“そうだよね、遊びたいとき遊ばないとだめだよね”みたいな感じでしっくりきて。それも考えながらレコーディングしたからか、自分の中では音楽をやっているのは仕事だけどそれはある意味、遊びでもあるというか…遊びが仕事になるというか、そういう感覚もありながら曲に落とし込めた感じはしています」

ねたろ「確かに。この曲はフカツが主役だと思って作りました。この太鼓のマーチ感というかメルヘンチックな感じを出したくて。でもフカツがちゃんとやってくれたので。ありがとうございます!」

フカツ「(笑)」

──そしてこれは訊いておかないといけないのが豊田さんの「大恋愛」の着想です。

豊田「これはですね…自分の恋愛経験とかももちろん歌詞にのせましたし、タイトルを「大恋愛」に決めたときに、恋愛の楽しい時期だけを切り取る曲ではなくて、小説みたいな作品にしたいと思いました。Aメロから最後のラスサビに行くまで、メロディが同じセクションに来ても少しずつ違うようにして時間の流れも表現しつつ、自分の中では“壮大な小説が作れた”と思える楽曲になりました」

──恋することの楽しさの先を感じさせますね。

豊田「どちらかというと“恋”ではなくて、たぶん“愛”なんです。“愛”を書きました」

──人生、とまで言うと大き過ぎますけど、少しそんなニュアンスもあったりしますか?

豊田「確かに。恋愛じゃなくて別の物語にも…確かにそうですね。すごく好きな曲ができました」

──そして前回のEP『君にもらった愛』にも収録されていた「Zoo」と「旅するココロ」も『HUG』に収録されています。

豊田「mini Album『HUG』と親和性がある2曲だとすごく思っていて。ねたろが書いた「Zoo」は“みんな違うけどそれぞれ良さがあるから前を向いて生きていこう“というメッセージが詰まった曲だと思うんですけど、それってすごく心を抱きしめてくれますし。で、僕の中では「旅するココロ」という曲は…例えばなんですけど、ねたろが僕に合わせて歌えそうな曲を作ってくれるっていうことをよく言っているんですけど、それってひとつの思いやりであって愛でもあると思っていて…こういうもらった愛を自分はいろんな人に返していきたいよっていう曲です。それもすごく『HUG』と親和性が高いと思っていて、入るべくして入ったと思います」

──『HUG』が完成したことで前作以上の第二章感はありますか?

フカツ「あります。タクオが入ってから初めてのmini Albumですし、明らかに楽器も増やして、ライブに来ていただいた人に耳でも視覚的にも、もう違うパーカーズにはなっていると思うので、本当にここからが第二章だと思います。この『HUG』でいろいろ先がモヤモヤしていたのがはっきり見えたと思います。僕個人なんですけど「Hug me!!」はレコーディングし終わったときに“これだ!”ってなりました。ライブでお客さんの反応を見ていてもやっぱり「Hug me!!」をすごい笑顔で聴いてくれていると思ったので、そういう意味でも、“見つけた”という意味でも、第二章のスタートって言えると思います」

豊田「やっていきたい音楽、今、鳴らしたい音楽というのはしっかり今回で見つけられたので、そういう意味ではすごく明確になったような気もしますし、より“POPS日本代表”って胸を張って言えるようになったと思います」

──だからといってジャンルが増えていくことが目的じゃないと思いますし、そこが絶妙でパーカーズらしいと思います。

タクオ「パーカーズは5人なので。ギターは3本いるし…みたいな。いずれ賢ちゃんがギターを持たなくなったりするビジョンはありますし、同期を増やしたりいろんな音を入れたいとも思っています。でも、ギターが聴こえなくなってしまうバンドってかなり多いじゃないですか? いろんな楽器を入れると、リードギターはいるだけど耳を澄まさないと何を弾いてるかわからない…みたいになるのではなく、あくまでナオキのリードギターはちゃんと前にいるし、だけど他の楽器が後ろでしっかり鳴ってくれていて、今回のmini Albumみたいな少し壮大な世界観を感じてもらえるように、と思っています」

(おわり)

取材・文/石角友香

RELEASE INFROMATION

2025年10⽉1⽇(水)発売
NOIS-013/2,420円(税込)

パーカーズ『HUG』

LIVE INFORMATION

2025年11月21日(金) 下北沢 Mosaic
2025年11月23日(日) 札幌 SUSUKINO810
2025年11月29日(土) 新潟 GOLDEN PIGS BLACK
2025年11月30日(日) 仙台 enn 2nd
2025年12月6日(土) 広島 CAVE-BE
2025年12月7日(日) 高松 TOONICE
2026年1月10日(土) 静岡 UMBER
2026年1月12日(月・祝) 福岡 CB
2026年1月16日(金) 大阪 JANUS
2026年1月17日(土) 名古屋 SPADE BOX
2026年1月30日(金) Zepp Shinjuku

Hug me!! TOUR

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