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予定の見える化で安心!自閉症きょうだいの心と行動を支えるホワイトボード活用術

LITALICO発達ナビ

予定の見える化で安心!自閉症きょうだいの心と行動を支えるホワイトボード活用術

監修:新美妙美

信州大学医学部子どものこころの発達医学教室 特任助教

はじめよう、ホワイトボード生活!

「ホワイトボードを使ってみよう!」という提案は当時小学校低学年だった娘からでした。それまで、キッチンには学校の行事予定や給食の献立を貼って、家族全体の動きを確認するためのコルクボードを設置していました。でも、それは個人の持ち物やタスクを管理するものではありませんでした。娘は動画でホワイトボードを使用したお支度ボードを見て「自分もやってみたい!」と思ったようでした。

当時、娘はASD(自閉スペクトラム症)と診断されておらず、教室に行きたがらないことはあっても、基本的には通常学級の子どもたちと変わらない様子でした。私から見ても、朝の支度は自分でできていたのですが、本人が「欲しい」と言うので、ごっこ遊びのような感覚で取り入れてみることにしました。

早速、100円ショップへ。その頃はホワイトボード用のマグネットが豊富に売られていたので、すぐに必要なものを揃えられました。娘と相談しながら、小さなホワイトボードに「お支度ボード」を作り上げていきました。

だけど、お支度ボードも続けられたのは数週間程度。その後のホワイトボードは、私が仕事に行く際の連絡ボードになったり、息子が自室で配信をする際に「入室禁止」のサインボードになったりと、ホワイトボードは形を変えながら、常に私たちの生活の側にありました。

「見える化」で安心!ホワイトボードはわが家の司令塔

次にホワイトボードを活用するようになったのは、娘が高学年になり、ASD(自閉スペクトラム症)と診断された頃です。児童精神科の通院や役所の手続きも一気に二人分になり、息子のホームヘルパーに訪問看護、娘の習い事に2か所の放課後等デイサービス利用で、私自身も予定を把握できなくなってきたからです。

そこで、玄関にマグネット付きで大きめのホワイトボードを貼り、毎週日曜の夜に1週間の予定を書き込むことにしました。私自身が予定を正確に把握するためでしたが、家族みんなで共有できるようになりました。

さらに、娘が自分の予定を確認できるよう、基本的な1週間のスケジュールを書き込んだ小さなホワイトボードも併設。これにより「今日は何やったかな?お迎えはお母さんかな?放課後等デイサービスかな?」といった不安を軽減できたように思います。

その2つで運用していくうちに、やはりもう少し先の予定も分かりやすいほうがいいなと思いました。玄関にマグネットフックを取り付け小さなカレンダーをかけ、そこに1か月の予定を書いておくことにしました。リビングのカレンダーにも同じように書いてあるのですが、やはり玄関にカレンダーがあると、出る前などにパッと確認できるので便利さが違います。

とりあえず、ホワイトボードの基本的な運用方法がここで固まりました。

「自分のホワイトボード」がほしい!その設置と試行錯誤

それから約2年が経った頃、思いがけない変化がありました。普段、息子には先の予定を伝えすぎると不安やパニックにつながることが多かったため、前夜までは口頭で負担にならない程度に伝え、当日はコピー用紙に大きくマジックで書くなど視覚的にサポートしていました。しかし通信制高校に入学したことで、自分自身の予定を把握したい気持ちが強くなったようで「僕も自分のホワイトボードがほしい」と言ってくれました。

さて、ここで問題は息子のホワイトボードをどこに設置するかです。キッチンにはすでに学校の予定表や献立表を貼ったコルクボードがあり、これ以上情報を増やすとごちゃごちゃになってしまいます。リビングでは、リラックスしている時に予定が目に入ると、かえって不安を煽ってしまうかもしれません。考えた結果、息子の自室のベッドの横にホワイトボードを吊り下げることにしました。

息子の1週間の予定は大体決まっているので、私の負担を減らすため、「訪問看護」「ホームへルパー」など固定の予定はカラーのマグネットシートを100円ショップで購入し、貼り変えるだけでいいように対応しました。そこにイレギュラーで「病院」や「学校」の予定が入ります。混乱を防ぐためにそれぞれ違う色を選びました。

設置場所は結果的に大正解でした。朝起きた時にすぐに予定を把握できるからです。児童精神科の先生にホワイトボード設置の経緯を伝えると、「毎晩一緒に明日の予定を読み上げてあげると、もっといいかもしれませんね」と言われました。それ以来、息子のその日の体調にもよりますが、できる限り一緒に予定を確認する時間をつくるようにしています。

小さな褒め言葉が、明日を頑張る力に

これまでたくさん迷い、創意工夫しながら育ててきたホワイトボードですが、その努力が報われる瞬間がありました。娘の小学校の特別支援学級の先生や不登校の息子に会いに来てくださった特別支援学校の先生方が褒めてくださったのです。中には「参考にしたいので……」と写真を撮って帰られる先生もいらっしゃり、私にとってこれほどうれしいことはありませんでした。

こうした家庭での小さな工夫というのは、なかなか人の目に触れないですし、認められるものではありません。子どもたちの暮らしを少しでも良くするためのもので、そこに見返りなど求めてはいけないと思うからです。ですが、こうしたささいなことで「褒めてもらう」ことは、支援者である保護者にはとても必要なことだと私は思いました。乾き切った心の地面に水が染み込むと「また頑張ろう、これからもいい芽を出してもっともっと頑張ろう」と前向きな気持ちになれるからです。

ホワイトボードに限らず、子どもたちの生活が少しでも楽しく、見通しの明るいものになるように、これからもさまざまな工夫を凝らしていきたいと思っています。

わが家のホワイトボードはまだまだ成長中!

ホワイトボードは、既に多くの方が支援グッズとして活用されているし、100円ショップにも関連商品が豊富に販売されています。すでに情報は溢れていると思うのですが、何より私自身がもっといろんな運用方法を見たいし知りたいなと思い、今回この記事を書かせていただきました。

カレンダーアプリなども使用し家族共有をしていますが、やはり「玄関に一目で分かる情報がある」ことに勝るものはありません。そして、こうして自分自身が予定を手書きで書くことによって、私自身にも予定をしっかりと浸透させる、そういう作業のような気がしています。元来、私は飽き性でいい加減な人間なのですが、不思議とこのホワイトボードの習慣は続いています。それこそ、今のやり方が私たち家族に合っているのだろうと思いますし、継続の秘訣なのかもしれません。

執筆/花森はな

(監修:新美先生より)
ご家庭でのホワイトボード活用、とても素晴らしい取り組みですね。記事からは、お子さんたちの特性を理解し、安心感を大切にされていることが伝わってきます。ASD(自閉スペクトラム症)の方は、口頭での情報処理よりも、視覚的な情報提示のほうが理解しやすいことが多いと言われています。口頭の音声言語よりも理解しやすいことや、聴覚情報は一度に保持できる量が少ないのに対し、視覚情報は理解しやすく、長く残りやすく、何度でも自分で確認しやすいためです。このため、予定やタスクを「見える化」することは、不安を軽減し、行動をスムーズにする可能性がありますね。
また「家族全体で予定を共有できる仕組み」を作られた点も重要です。ホワイトボードやカレンダーを活用することで、情報が一元化され、誰が見ても一目で分かるようになります。お子さんが自分で予定を確認できることは、自立への大切な一歩になります。それを見て、息子さんも「自分のホワイトボードを持ちたい」とおっしゃられたというのは、自己管理の意欲が芽生えた証であり、とても素敵な成長ですね。
アプリなどのデジタルツールも便利ですが、少なくとも子どものうちは当面、家の中でパッと見える場所に、情報が見える化されているほうが、ほとんどのお子さんで使いやすいようです。青年期以降情報を自分で管理する際には、スマートフォンなどのデジタルツールが便利と感じて使うようになる子が多いですが、自己管理するようになるためには、カレンダーやスケジュール、ToDoリストのようなものが必要だと実感する経験を子どものうちにしっかり積んでおくことが大事で、この時期は、ホワイトボードや紙・メモ、カレンダーなどアナログツールのほうがうまくいくことが多いですね。
そして、「褒められることが力になる」というお言葉に深く共感します。家庭での工夫は、本当に地味で面倒なのに、評価されづらいものですが、その一つひとつが確実にお子さんの成長を支えています。今回の取り組みは、多くの読者さんにとって、生活のヒントやモチベーションにつながることでしょう。またいろいろ聞かせてください。楽しみにしています。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

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