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清澄白河・森下さんぽのおすすめ10スポット。コーヒーだけじゃない街の日常を感じる

さんたつ

【散歩の達人】清澄白河・森下さんぽ

知名度はすっかり全国区、今をときめく花形の街・清澄白河から、小名木川を渡って商店街の街・森下、さらに菊川へ。耳をすませば、読経に木魚の音、重機や機械の動く音、そして商う人の声から、街の日常を実感することができる。

Stranger(ストレンジャー)

『深川温泉常盤湯』3代目に引き継がれた新装銭湯[森下]

男湯の浴室を清掃する3代目の山本寛太郎さん。弟の彬善(あきよし)さんと切り盛りする。「照明を多くして明るい雰囲気になりました」。
冷蔵ケースには近所の『BEER VISTA BREWERY』の瓶ビール700円も。
ロビーには休憩できるスペースも。漢方入りの伊良コーラ300円、ここの温泉でゆでた温玉100円もある。
昭和からの宮造りの建物はそのままだよ!

創業80年を迎えて2023年にリニューアルした老舗銭湯は、宮造りや格天井など昔ながらの魅力を残しつつも設備を一新。なんと温泉も掘削し、ナトリウム塩化鉱泉が楽しめる。常盤湯といえばの43℃の熱湯(あつゆ)も踏襲し、男湯は露天風呂で、女湯は内湯の1つで体感できるぞ。入浴料520円。

・12:00~24:00、木休。
・☎03-3631-9649

『養生実験室』薬膳式の朝粥でいい一日を[清澄白河]

日頃の不調も気軽に相談できる場。
正覚院の本堂。朝粥はこの隣の建物の2階が会場だ。
白粥に漬物、食後に月替わりの養生茶付きで500円。

清澄白河を中心に、薬膳を日常に活かすための研究活動を行うユニット。正覚院では毎月第4土曜日の7時30分~9時に朝粥を振る舞っている。「朝粥は胃を働かせ、1日の調子を整えてくれます」と国際中医薬膳師の熊谷文音さん。米油を入れて炊く薬膳式の白粥に心も温まる。

詳細はInstagram:yojo.labより。

『euso bar(ユーソ バー)』爽やかな微炭酸! コンブ茶ではありません[清澄白河]

ガラス張りのカウンターバーは自家製レモンサワーやミード(ハチミツの醸造酒)など、国産ハチミツを使った飲み物が充実。ノンアルならコンブチャ(紅茶キノコ)600円をぜひ。爽やかな酸味の微炭酸で、その都度異なるお茶を発酵させて作られている。

・12:00~23:00(金・土は~翌1:00)、月休。
・☎なし
・Instagram:euso_bar

『LYURO 東京清澄 by THE SHARE HOTELS』旅行者気分で停泊したいリノベホテル[清澄白河]

宿泊者でなくても利用できるフリースペースがあるロビー。
客船のようにも見える外観。
モデレートタイプ1部屋2万2000円〜。

1988年竣工のオフィスビルをリノベーションして2017年に開業したホテルは、“流路”という名が表すように川の流れや水がコンセプト。テーマカラーの青色が印象的な館内は27室中22室が隅田川ビューだ。江東・墨田に根づいたクラフトや雑貨が買える1階ロビーの売店も楽しい。

・☎03-6458-5540

『花岡車輛 ショールーム』台車のパイオニア、ここにあり[清澄白河]

「折りたためる便利な台車もあるんです」。
ダンディポーター KAKU。
ダンディポーター WAN。

創業昭和8年(1933)、日本で初めて台車を作った会社。デザイナー出身の常務・花岡雅さんが携わり2022年リニューアルしたショールームでは、日本初の規格量産型「ダンディ」シリーズをはじめ、リフト台車や折りたたみ多段式台車など、多彩な台車を目にできる。

・9:00~17:35、土・日・祝休。
・☎03-3643-5272

『manu&bol(マヌートボル)』開いて見つけたいお気に入りの一冊[森下]

夜まで開いているので仕事帰りにも◎。

2024年春開店した絵本と写真集の店。編集者である店主・堀内太陽さんが選んだ本がほぼ週1で入荷し、1冊1冊作品のように並べられる。「絵本も写真集も開かないと分からないものだから、どんどん開いてほしい」。ギャラリーとして原画展や写真展なども時々開催。

・13:00~21:00、水休。
・☎なし
・Instagram:gallery.books.manubol

『イーストリバーサイクルズ』高い天井から自転車パーツがぶ~らぶら[森下]

「修理や自転車選びのご相談もお気軽に!」。

「スポーツ自転車の店が深川エリアにまだ少なかったので」と岡野俊介さんが2010年に開店。建具の工場兼倉庫だった建物を改装したまさに町工場のような店内には、街乗りにおすすめのミニベロ「BRUNO MIXTE」はじめ、厳選した数種類が並ぶ。試乗車もあり。

・11:00~19:00、水休(臨時休あり)。
・☎03-6676-3500

『TRI‒Tech TOKYO』床屋さんかと思いきや……[菊川]

ココナツレモンケーキ660円(左手前)、チャイ680円(左奥)ほか。

100年続いた理容店の跡に2023年に生まれたカフェは、近未来的な内装にグッとくる。地元っ子の内薗有美さん・美貴さん姉妹とバンド仲間の祖父江渓さんが「近所に落ち着くカフェがほしい!」と開店。飲み物、焼き菓子、パンと3者の得意技を集結させ役割分担もばっちり。

・9:00~20:00、月休。
・☎なし
・Instagram:tri_tech_tokyo

『Stranger』映画好きなら1日中いられる![菊川]

写真提供=『Stranger』。
マグカップ1800円。
ステッカーセット(写真は一部)580円。

「菊川会館」というパチンコ店だった昭和40年代後半の建物を活用した映画館。劇場は49席で、8時台~22時台の間に1日6回ほど上映。北米中西部や南米大陸の雰囲気を取り入れた品々が味わえるカフェも併設。一般1800円、江東・墨田区の在住・在学・在勤者は割引で1500円!

Stranger(ストレンジャー)
住所:東京都墨田区菊川3-7-1 菊川会館ビル/アクセス:地下鉄新宿線菊川駅から徒歩1分

『The Local Pub 竹の湯別館』公共浴場のように気軽にひと飲みしたい[菊川]

開店は2022年末。「水色の壁の塗装は湯をイメージしてるんです」。
おつまみは北上野『湯葢』のマグロの佃煮350円、東向島『Otis』のサラミ550円、のりチー330円などあり。
北海道や山形のワインも。1杯900円~。
ガラス戸で見やすい店内。

銭湯のコインランドリー跡地に開かれたコの字カウンターのバー。店主・橘実里さんは『清澄白河フジマル醸造所』出身というだけあって、ワインの品揃えが魅力的だ。「扱う子たちは日本の作り手さんのナチュラルワインも多いんです」。ワインを“子”と呼ぶ愛情深さ!

・17:00~23:00(土・日・祝は16:00~)、火・不定休。
・☎なし
・Instagram:takenoyu_bekkan

街も人も、こざっぱりして懐が深い

スケッチブックの製本専門の『どうち製本所』(旧村山製本)では、オリジナルのスケッチブックも販売。

清少納言風に言うならば、「清澄白河はつとめて(早朝)」。

週末の観光地化に辟易(へきえき)したら、やうやうにぎやかになりゆく前に街へ繰り出そう。早起きしても楽しみはある。たとえば朝粥。読経が響く正覚院の境内で国際中医薬膳師が丁寧に炊いた白粥に、朝からホッ!「よい1日を」と温かく送り出されたらそのまま寺巡りもいとをかし。そう、ここは寺町。街の地図で数えただけでも32寺。カフェに負けぬ多さでは?

清澄長屋と親しまれる昭和3年(1928)築の「旧東京市営店舗向住宅」。

「寺や公園は自然があるのでハチミツも採れるんです」と耳にしたのは『euso bar』。都内で養蜂を行うオーナーいわく、平面的で低層の小規模工場が多いこと、通年どこかで花が咲き農薬も外敵も少ないことから、江東区は養蜂に適しているとか。まさかこの地でハチ談義を聞けるとは。

清澄白河で目を引くリフォーム会社のユニーク看板。
歯神さまを祀(まつ)る圓隆院。備え付けの歯ブラシで磨いて歯の健康祈願!

工場で目につくのは、金属加工に食品、ガラス、そして印刷、断裁、折本、製本といった紙関係。フォークリフトはもちろん台車も引っ張りだこで、「うちの台車も見かけます。音で分かりますね」と『花岡車輛』の花岡雅さん。さすがはプロ、感覚が違う。

『LYURO 東京清澄』のウッドデッキから清洲橋を望む。
朝の深川資料館通り。

そんな働く人たちの汗を流し、近隣に集まる相撲部屋の力士たちをリフレッシュさせてきたのが森下の『常盤湯』。最近、「深川温泉」と冠されグレードアップした銭湯でのんびり昼湯を満喫だ。気分爽快の湯上りはロビーでご近所ブルワリーのクラフトビール。ほろ酔いで散策すれば小粋な本屋『manu & bol』が待っていた。「子供の成長に絵本を、大人の癒やしに写真集をと2本柱にしました。でもギャラリーもしっかりやりたい。アートの街・清澄白河のそばですし、感度の高い人が多いんですよ」と堀内太陽さん。『森下文化センター』も漫画とアートが特徴だしね。

昭和8年(1933)築の震災復興住宅『清洲寮』。

「森下文化センター、曲作りや練習でヘビーユーザーです」と笑って教えてくれたのは『TRI‒Tech TOKYO』の内薗有美さん。都外出身の祖父江渓さんは、「ここら辺の人はこざっぱりして懐が深い。それにお祭り好き。2024年の深川神明宮の本祭りは6年ぶりで、店の前もお神輿(みこし)が通るので楽しみです」とうれしそう。夏の祭りも外せない街の魅力だ。

『森下文化センター』の1階では約8000冊の漫画を閲覧できる。

さて、勢い余ってたどり着いた菊川。実はノーマークなこの街に楽しい変化が起きている。旧パチンコ店からミニシアターが生まれたり、コインランドリー跡がワイン好き店主によるコの字バーに変身したりと、既存の建物を生かした個性的な店がひょこっと顔を出すのだ。ゆるやかながらも、この勢いは言ふべきにあらず!

高橋から見た新小名木川水門。

取材・文=下里康子 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2024年7月号より

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