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国立西洋美術館の「モネ展」がいろんな意味ですさまじかった! 行列よりもすさまじかったのは……

ロケットニュース24

2024年10月5日から東京・上野の国立西洋美術館で開催されている特別展「モネ 睡蓮のとき」に行ってきた。

展示は2025年2月11日までなので会期はまもなく終了なのだが、その評判はとどまることを知らず、平日も大行列。

SNSで検索すると「モネ展 混雑」とサジェストされるほどである。私は事前にwebでチケットを購入し、金曜の昼間に鑑賞へと向かった。

・チケット持ってても大行列

シャガールやゴッホ、フェルメールなど有名な絵画がくるときにはもはや行列は避けられない。事前にチケットを買って、平日なら少しはゆっくり観られるはず……と思っていたが甘かった。

会場である上野の国立西洋美術館の前はものすごい人だかり。その列は美術館の前庭から飛び出して敷地外にまで出ているではないか。しかもほぼ全員が事前チケットを購入済というのだから驚きである。

並び始めてから美術館に入館できるまでどれくらいかかるのか時間を測ってみた結果……。

並び始め……12時15分
入館時間……12時58分
チケットもぎり……13時10分

と、モネの展示室前に行けるまでになんと1時間もかかってしまった

この混雑では絵画に添えられた解説も読めなさそうなので有料の音声ガイド(650円)を借りることにしたら、さらにガイドを借りるまで10分も並ぶことになった。

無事にモネの絵が見られたのは13時18分であった。平日でこの待ち時間、モネ人気のすさまじさよ。ちなみに人が多すぎて館内はちょっと酸素が薄く感じられた。ライブハウスかよ……。

・展示室は大混雑、だが……

さあ、中に入るまでも行列なので、当然、展示室も大行列の大混雑である。ある人はSNSで「モネの絵を見る展示ではなくて人混みに行く展示みたいだった」と言っていたが、とにかく人が多い。人をかきわけて前に進み、人波の隙間からモネの絵を見る……という具合。

いかに名画とはいっても、こんなストレスフルな環境で鑑賞することは意味があるのか? と多くの人は思うだろう。

ぶっちゃけ私もそう思っていた。並んでいる時点で帰りたかったし、人の多い展示室なんて正直うんざりである。

ところが

そんな人混みの隙間から見ても……

モネの絵はとてつもなく美しかったのである。

睡蓮は泥の中にあっても美しい花を咲かせるが、モネの「睡蓮」の絵もまた人混みの中でも静謐な美しさをたたえていた。

昼から夕方へと変わる、ピンクともブルーともオレンジともつかない、ほんの一瞬の空の色が描かれた絵があったのだが、人の波の隙間から見える空の一部すら目を引くほどである。

展示室に入ってわずか5分ほどで「見にきてよかった」と思っている自分がいた。

・そもそもモネの生涯がすげえ

展示の最初にはモネの生涯を記したパネルが展示されている。人が多くてなかなか先に進まなかったのでそれをじっくり読んでいた。

今回、展示されている「睡蓮」の絵は、晩年のモネが取り憑かれたように描き続けたジヴェルニーにある睡蓮の池の連作である。

そもそも「睡蓮」のモチーフとなった自宅の庭を作り始めたのが53歳のとき。そして57歳から睡蓮の池の絵を描き始め、60歳で12点の睡蓮の池の絵の展示をしたという。

最初は庭全体を入れるような引きの構図だったのが、63歳からは睡蓮の池の水面にクローズアップした構図になった。それから86歳で亡くなるまで自宅の庭のモチーフを描き続けたという。

53歳から庭を作り始める情熱に驚きである。さらに当時、モネは日本画に影響を受けており、池の橋は日本風の太鼓橋で、庭に植える花もわざわざ日本から種を送ってもらうほどこだわり抜いていたらしい。今みたいにアマゾンでネット通販できるわけでもない。

日本画の影響を受けていると聞いて、モネの睡蓮の絵が日本で人気があり、モネの庭を模した庭園が日本各地にあるのも納得した。

展示室には四方を睡蓮の絵で囲んだ「睡蓮の部屋」があり、こちらは撮影も可能だった(個人利用に限るため掲載はできず)。

・白内障になってからの絵

ちなみに、私がもっとも衝撃を受けたのは、モネが白内障を患ってからの絵であった。

70代にさしかかり、二人目の妻と息子を立て続けに喪い、さらに白内障の悪化で視力が落ちてしまう。

モネは失意のなかでも庭の絵を描き続けるのだが、その頃の絵がすさまじいのである。白内障の影響で極端に青や黄色が強く見えたり、赤が濁って正確な色がわからなくなるが、それでも絵を描くことをやめない。

まったく同じ構図で描いた3枚の橋の絵が並ぶのだが、どんどん線は歪み、色調も赤黒くなっていく。最終的にはまるで沼のような赤い奇妙な、かろうじて橋だとわかるような絵になる。筆使いも荒々しい。かつての澄んだ青さと繊細な光が印象的だった睡蓮の面影はない。

モネは気に入らない絵はすぐに捨てていたそうだが、視力が衰えてからの作品はずっと手元に置いていたという。

自分がかつて愛した色彩がわからなくなっても、描き続けるという力強い創作へのエネルギーに胸を打たれ、なぜだか泣きそうになってしまった。

・モネの狂おしいほどの情熱

晩年のうねるような赤がうごめくキャンバスは初めて見たが「睡蓮の連作」というテーマに絞った展示だからこその迫力があり、ただ美しい絵が並ぶだけでは分からなかったモネの執念をも感じられるような作品展だった。

そもそも庭を作ったのが50歳で、亡くなるまで睡蓮と水面の姿に魅せられて筆を取り、晩年まで描き続けたエネルギーがすごい。この先、自分もそれだけ、人生を賭けて挑みたいと思えるテーマにまだ出会えるのか。

静かに光をたたえる「睡蓮」の絵を見て、心穏やかになって帰ることを予想していたが、まさか狂おしいほどの情熱に胸を打たれて帰ってくるとは。肉体や思考が衰え、自分が思うような文章を書けなくなっても、それでも書くという選択ができるだろうか……などと帰る道すがら考えてしまった。

行列と人の多さばかりが印象に残るかと震えていたが、帰る頃にはモネの絵の凄まじさにすべて上書きされていた。ありきたりな言い回しだが、これが名画の持つエネルギーなのかもしれない。

ちなみに、ミュージアムショップの入場も大行列。15分ほど並んだが、外で待たされるため寒くて途中で退散しました。

国立西洋美術館での「モネ 睡蓮のとき」の会期は2月11日まで。入場時間指定のチケットが販売中なのでチェックしてみてほしい。チケットは残りわずかなのでご注意を。

参考リンク:国立西洋美術館 モネ 睡蓮のとき
執筆:御花畑マリコ
Photo:RocketNews24.

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