弱者男性は男性社会のどこにいる? 女性への「差別的行動」や「ミソジニー的考え」が発生する場所とは
「弱者男性」という言葉を知っていますか? いまや日本人の8人に1人が該当するというこの言葉は、インターネットの世界から生まれた「独身・貧困・障害」などの「弱者になる要素」を備えた男性のことを指します。 弱者男性は偏見にさらされることが多いうえに、弱者男性から抜け出すことも困難と言われています。弱者男性を取り巻く環境の「リアル」とはどのようなものなのか? ライター・経営者のトイアンナ氏の著作『弱者男性1500万人時代』から、その実態を見ていきましょう。
※本記事はトイアンナ著の書籍『弱者男性1500万人時代』(扶桑社)から一部抜粋・編集しました。
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
よく男性が同性だけのコミュニティをつくり、「仲間である俺ら」で結束した結果、女性をバカにしたり、権力を独占したりする現象がある。恋愛などは私的なものであるため女性や同性愛も否定され、男性同士の友情をよしとする。たとえば昭和時代の喫煙所や宴会芸のある飲み会、週末のゴルフなどを想像していただければわかりやすいだろう。このように女性蔑視(ミソジニー)や同性愛嫌悪(ホモフォビア)といった考えのもとで生まれた、男性同士の深い結びつきや絆を「ホモソーシャル」と呼ぶ。ホモソーシャルな場では男性が公的な立ち位置を占め、社会を独占しようとする。
これまでホモソーシャルな場で業務時間外に重要な決定が下されることが、女性を排除する差別的な行動として批判されてきた。しかし、この「ホモソーシャル」に入れるのは強者男性だけである。典型的なホモソーシャルの場は体育会系の部活動、会社のイベント、上司や先輩との飲み会、そしてキャバクラなど、基本的に女性が客として想定されていない場所がほとんどだ。こうした場所で楽しく同性と交流できる男性が「弱者男性」といえるのだろうか。
弱者男性の立ち位置とは
とても絶望的な話だが、弱者男性には異性だけに限らず同性の友人も少ない。他者と交流するための交際費を払う余裕がなく、またコミュニケーションスキルも低いからだ。そんなかれらが、「おい、男ばっかりで飲んでてむさ苦しいから、誰か女呼べよ」と、女性をモノのように接待役として扱うホモソーシャルの場に参加できるとは到底考えられない。
それよりも、ミソジニーの考え方にハマるのは「より若い男性」であることが、海外の研究で明らかになっている。男女平等へ向けた施策が急ピッチに進められていくなかで、若い男性であればあるほど、女性と比較して「自分の地位を脅かされるのではないか」と怯える。そして、自分が失職したり、正規職を得られなかったりするのは女性のせいだと考えやすくなるのだ。つまり、ある程度何か失うものを持っている男性ほど、女性を憎むのであって、もともと失うものが少ない人は女性を憎みづらい。そして、弱者男性は「持ち物が少ない人」である。そのためか、一方的に「女性が悪い」とはならないのであろう。
「それもこれも女が悪い」神話
弱者男性を自認する人を対象とした『SPA!』の調査によれば、自分が弱者に追いやられた原因は「自分自身」にあると、なんと75%もの男性が答えている。
対して、「女性」のせいだと答えた男性はわずか3.6%にすぎない。実際のアンケート結果では、大半の弱者男性が自分自身を責めているのだ。SNSで女性差別的な言動を見かけてうんざりしている方は、その多くが「弱者男性ではない」ことを理解するべきだろう。「モテない貧乏なやつが女を叩いているのだ」という思想こそが、弱者男性差別である。