映画『かたつむりのメモワール』は困惑するほどの大傑作!あらすじ・見どころを解説
『メアリー&マックス』(2009年)で知られるアダム・エリオットが手掛けた長編アニメーション映画『かたつむりのメモワール』。
この記事では、人生の悲哀をユーモアを交えて描く大傑作と評判の『かたつむりのメモワール』について、あらすじや見どころを紹介します!
『かたつむりのメモワール』あらすじ・作品概要
『かたつむりのメモワール』は、『メアリー&マックス』などで知られるアダム・エリオットが手作りにこだわり、8年の歳月をかけて作り上げたストップモーション・アニメです。
本作はアヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞のクリスタル賞を受賞し、第97回アカデミー賞でも長編アニメーション賞にノミネートされるなど、高い評価を受けています。
『かたつむりのメモワール』あらすじ
1970年代のオーストラリア。母が出産によって命を落としたグレースは、双子の弟ギルバートと父親と3人で慎ましくも楽しく生活していました。しかしある日突然父が亡くなってしまい、グレースとギルバートは別々の里親に引き取られることに。
ギルバートとは手紙で励まし合うものの、さみしさのあまりカタツムリを集めることだけが心の拠り所となっていくグレース。
そんなある日、彼女はエキセントリックなピンキーという女性に出会います。陽気でヘンなことばかり言うピンキーは、次第にグレースにとってかけがえのない友人に。しかし彼女の人生には、多くの困難が待ち受けていました。
『かたつむりのメモワール』の見どころ解説
CG・AIなし!8年の歳月をかけて制作された渾身の1作
3Dプリンタを使用し、CGやAIに頼るストップモーション作品が増えているなか、監督のアダム・エリオットは、あくまでも粘土の凸凹とその不完全さを称えたかったと語っています。彼は粘土、紙、針金、絵の具という4つの道具だけを使って、本作の世界すべてを作り上げたのです。
『かたつむりのメモワール』は、セット数200、小道具7000個、そして13万5000カットという気の遠くなるような過程を経て、8年かけて制作されました。これはエリオットのストップモーション・アニメへの途方もない情熱と愛によるものとしか言えないでしょう。
きびしくも温かい人生賛歌!自然と涙がこぼれる至極の映画体験
本作の主人公グレースは幼いころから周囲になじめず、双子の弟ギルバートとの別れによって、さらに孤独を深めていきます。何度も残酷な現実に直面する彼女ですが、ピンキーとの交流などを通して、人生を楽しむことの大切さを感じられるように。
ユーモアあふれる語り口ながら、グレースの人生は悲哀に満ちています。しかし人生は悲しいことばかりではなく、楽しいことや、輝く瞬間もあるものです。彼女の人生ももちろんそうで、苦難を乗り越えた先には驚きに満ちたよろこびが待っていました。
人生の光と影を描き出す、このきびしくもあたたかい人生賛歌に、自然と涙がこぼれます。
ギレルモ・デル・トロも絶賛のアニメーション映画
『かたつむりのメモワール』は、第49回アヌシー国際アニメーション映画祭で最高賞のクリスタル賞を受賞したほか、第97回アカデミー賞長編アニメーション賞にノミネートされるなど、世界各国の映画賞で高い評価を獲得しています。
『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017年)などで知られる映画監督のギレルモ・デル・トロは、「大好きな映画!人生を肯定する美しさとユーモアにあふれている」と本作を絶賛。また『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)など知られるジョージ・ミラーも「ハートをわし掴みにされた!これこそ“本物”だ」と賛辞を送っています。
手作りにこだわった映像と、ビターでユーモアあふれるストーリーが、多くの人の心をつかんでいるのです。
監督・脚本アダム・エリオットの一貫したテーマ!ユーモア×悲哀に満ちた人生
「私はキャラクターの内面に癖や変わった性質を加えるのが好きです。共感できて、普遍的で、リアルなズレや隠れた一面を可能な限り彼らに与えることを大切にしています」と監督のアダム・エリオットは語っています。こうしたこだわりが、たち観客にとっても、キャラクターたちをどこかで見たことのあるような、感情移入しやすいものにしているのです。
また彼が作品づくりで大切にしているのは「ユーモアとペーソス(哀愁)、光と影、喜劇と悲劇のバランス」だとか。このバランスが、彼の作品をユニークで魅力的なものにしています。
彼の代表作である『メアリー&マックス』も、本作と同様に孤独を抱えたキャラクターを主人公にした作品でした。風変わりな彼らが、ほかの風変わりな人物とつながることで、人生の輝きを見出していくという一貫したテーマは、私たちの心を強く、しかしやさしく揺さぶります。
『かたつむりのメモワール』キャラクター・キャスト一覧
グレース・パデル役:サラ・スヌーク
グレースはかたつむりをコレクションする孤独な少女です。家族を次々と失った彼女は、孤独を感じながらも、個性的な人々と絆を結ぶことによって、生きる希望を見出していきます。
彼女の声を演じたのは、オーストラリア出身のサラ・スヌーク。近年ではドラマ『メディア王〜華麗なる一族〜』(2018年〜2023年)などへの出演で知られています。
ギルバート・パデル役:コディ・スミット=マクフィー
グレースの双子の弟であるギルバート。グレースとは大の仲良しでしたが、父の死後、別々の里親に引き取られ離れ離れになってしまいました。
そんなギルバートを演じたのは、コディ・スミット=マクフィーです。「X-MEN」シリーズや『パワー・オブ・ザ・ドッグ』(2021年)などへの出演で知られています。
ピンキー役:ジャッキー・ウィーバー
グレースが出会うエキセントリックなおばあさん、ピンキー。
ピンキーを演じたのは、オーストラリア出身で『アニマル・キングダム』(2010年)でアカデミー賞助演女優賞にノミネートされたジャッキー・ウィーバーです。
パーシー・パデル(父)役:ドミニク・ピノン
パーシーは、グレースとギルバートの父親です。
パーシーを演じたのは、フランス出身のドミニク・ピノン。『デリカテッセン』(1991年)や『アメリ』(2001年)などへの出演で知られています。
ケン役:トニー・アームストロング
グレースの夫となるケンを演じたのは、トニー・アームストロングです。
オーストラリアの元フットボール選手で、多数のテレビ番組で司会者として人気を博しています。
ルース役:マグダ・ズバンスキー
ルースはギルバートの里親一家の母親です。
ルースを演じたマグダ・ズバンスキーは、「ベイブ」シリーズや『ライラの冒険 黄金の羅針盤』(2007年)などに出演しています。
ジェームズ判事役:エリック・バナ
グレースと知り合いになるジェームズ判事。
ジェームズ判事を演じたエリック・バナは、『ブラックホーク・ダウン』(2001年)や『スター・トレック』(2009年)など多数の話題作に出演しています。
イアン&ナレル役:ポール・キャプシス
グレースの里親で、夜な夜な「大人の遊び」にふけるイアンとナレル。ポール・キャプシスが一人二役で演じています。
いびつで愛おしい『かたつむりのメモワール』をぜひ劇場で!
いま世界で最も称賛を集めるアニメーション作家の1人であるアダム・エリオットが、8年の歳月と情熱をかけて制作した『かたつむりのメモワール』。ビターでユーモアあふれる人生賛歌は、観る者の心を揺さぶります。このいびつで愛おしい世界をぜひ体験してみてください。
『かたつむりのメモワール』は、2025年6月27日公開です。