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【浜名区・方広寺】数が変わる石像「五百羅漢」 半分僧の神様「半僧坊」謎めくお寺に迫る!

テレしずWasabee

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浜松市浜名区にある方広寺には圧倒される数の羅漢像があるのですが、時々数が変わるというミステリー。さらに僧の恰好をした神さま「半僧坊」など、知れば知るほど謎めく“方広寺の不思議”に迫ります!

開山は後醍醐天皇の皇子

時は南北朝時代、南朝の後醍醐天皇が亡くなり、北朝が政権を握る危うい情勢の中、後醍醐天皇の皇子は天皇の菩提(ぼだい)を弔うため18歳で京都の建仁寺で出家しました。

皇子は修行の後に「無文元選禅師(むもんげんせんぜんじ)」となり、1371年に方広寺を開山しました。南朝方であったこの地域の豪族・奥山朝藤に招かれたと伝えられています。

寺の名前は修行した中国の天台山方広寺にちなんで。引佐町奥山の風景が中国の方広寺に似ていたそうです。

方広寺の本堂(浜松市浜名区引佐町奥山)

方広寺には、いくつかの故事や伝説、謎があります。

特に今の方広寺を語るのに欠かせないのが「五百羅漢」と「半僧坊大権現」です。

それぞれ“方広寺の不思議”と言われるエピソードがあります。方広寺・教学部長の巨島善道さんに教えてもらいました。

方広寺 教学部長 巨島善道さん

中国で出会った五百羅漢を再現

方広寺の境内には500の石像「五百羅漢」が点在しています。

羅漢とは悟りを開いた釈迦の弟子500人で、一つとして同じ表情をした像はないそうです。

山道で見られる羅漢像

方広寺・巨島善道 教学部長
石像であることと、姿や大きさ故にお地蔵様と間違えられることもありますが、お地蔵様とは違って生きていた方々がモデルになっています。お釈迦様が入滅された後、500人の羅漢様が集まり、お釈迦様が生前おっしゃっていたことを確認し合い、それが経典の元となったと言われています。

五百羅漢が方広寺に安置されたのは江戸時代。無文元選禅師が中国の方広寺にあった石橋でお茶を献じると、羅漢たちが続々と500人現れたという話を元にしています。

羅漢像が多く安置されている参道

そのため方広寺にも石橋があり、橋の上にも羅漢がたたずんでいます。無文元選禅師が中国の方広寺で見た情景を追体験できるわけです。

偶然にも無文元選禅師にも500人ほどの弟子がいたそうで、それにちなんで羅漢像が安置されたという説もあります。

方広寺・巨島教学部長
中国の方広寺にある天台山は羅漢様の聖地とも言われます。自然に形成された石像が羅漢様たちのいらっしゃる場所として大切にされてきました。羅漢様は仏様の教えを守る方々。仏様の教えを話し合い、確かめ合い、広める方々でもあったので、中国でその信仰が盛んとなり、仏法の興隆を願い羅漢像が安置されました

おすすめ羅漢見学ルート

五百羅漢は主に山門から本堂までの参道にいます。五百羅漢にまつわる不思議な話や見どころと併せて、ご案内しましょう。

境内や本堂の中を拝観するには、入山拝観料500円(大人)が必要です。

山門の拝観受付は午後3時半が最終で、本堂の最終入場は午後4時です。

入口の山門

駐車場を抜けた先にあるのが山門、参道への入口です。本堂まで徒歩約15分の道のりで、入口から羅漢たちが出迎えてくれます。

急な坂道もありますが、小川が流れ、背の高い木々に囲まれ、日常を忘れるような癒しの空間が待っています。ぜひ自然を感じながら散策気分で歩いてみてくださいね。

駐車場を進んだ先の山門

方廣寺十景

山門を進むと始まるのが参道沿いにある10カ所の景色、「方廣寺十景」です。参道にある10カ所の清浄な景観で、数体の羅漢像が集まっています。

貝、虎、亀、などと例えられている十景もあります。どのような景色なのか、面白いのでぜひ足を止めて見てくださいね。

哲学の道

しばらく進むと、本堂までの道は二手に分かれます。見どころが多いので、表参道である哲学の道の方へ進みましょう。

哲学の道は京都出身の住職の代に名付けられた道で、京都の哲学の道のように静かに歩くよう願ってそう名付けられました。羅漢像も、哲学の道沿いに集中しています。

哲学の道の入口

ここで見てほしいのが、羅漢像たちそれぞれの表情、体勢です。

穏やかな顔もあれば、怒った顔、まっすぐ立っている羅漢もいれば、寝ている羅漢もいます。

人間らしい側面が表情や体勢に現れています。

ユニークな表情の羅漢像

これも不思議な話ですが、自分に似ている羅漢像がどこかにいると言われています。たしかに、これだけの数があれば似ている羅漢がいるかもしれません。探してみましょう。

大権現の鳥居

哲学の道を進んだ先に現れる大きな鳥居です。お寺なのに鳥居がある理由は後ほど。鳥居には「奥山大権現」と書かれています。

ここから先は神域でもあります。

半僧坊大権現の神域を示す鳥居

椎河龍王権現

鳥居をくぐりしばらく進むと左手に橋と急勾配の階段が見えます。

その先のお社では「椎河龍王権現」という天竜川近くの磐田の椎河渕にいた龍神をおまつりしています。

龍神と無文元選禅師の出会いにも伝説があります。まだ開山する前に、増水のため天竜川が渡れなかった時に龍神が現れて橋となって、無文元禅師を渡してくれました。

方広寺を開山後、再び龍神は姿を現し、「蛇身(ヘビのような体)の苦しみから解脱させてください」と懇願し、経典でその蛇身をなでると昇天、その後は水の神様としてこの地を守っているそうです。

龍王権現のお社

以来、この地は一度も水不足で悩むことはなく、雨の恵みを祈って参詣する人が絶えないお社になっています。

数が変わる!? 石橋の羅漢像ミステリー

少し戻って参道の分岐点あたりに、前述の石橋があります。この場所には羅漢像の数が変わるというミステリーがあるんです。

通常は5体ですが、巨島さんが最近見た時は3~4体だったそう。筆者が行った日は写真を撮るのが分かっていたのか、全員そろってくれていました。

数が変わると言われる石橋の羅漢像

方広寺・巨島教学部長:
羅漢様が石橋にいらっしゃらない時は、世のため人のために、人助けに出向いているかもしれません。通常は橋の上から見守っていますが、迷い苦しみの世界にいる人々が迷い苦しみのない世界へ行けるよう、橋をかけに行っていると考えられています。羅漢様は過去の人たちではなく、今も迷える者を救う聖者なのです

みなさんが参拝に行くときは、何体でしょうか。数えてみてくださいね!

本堂の中の羅漢像

羅漢像は参道を登りたどり着いた先の本堂の周りや、本堂の中でも見られます。

本堂前の羅漢像

拝観受付は本堂右手にあります。靴を脱いで中に入りましょう。

木造としては東海地方トップクラスの大きさを誇る本堂では、貴重な品々が展示され、指定文化財の数々が見られます。

釈迦三尊像は国の重要文化財で、水戸光圀が信仰していた仏像だと言われています。

拝観コースは羅漢像以外にも見どころがたくさんあるので、隅々まで必見です。

拝観受付と入口

本堂の裏側の斜面は「らかん乃庭」で、羅漢たちが本堂を守るように並んでいます。

こちらの羅漢たちも一体一体違う表情や姿勢です。

道中で自分に似ている羅漢像を見つけられなかった方、ぜひこちらもよく見てみてくださいね。

本堂裏のらかん乃庭

実は1000体もあった五百羅漢

ずっと羅漢像を見ていると、500体より多いのでは?と思うかもしれません。

実は、現在方広寺には約1000体の羅漢像があります。

本堂裏の通路

江戸時代に安置された五百羅漢に加え、平成に入ってから始まった羅漢奉納事業で新たに奉納された羅漢像もあります。

ただ、江戸時代と平成の羅漢には違いがあり、平成の羅漢は江戸時代の羅漢より白に近い明るい色で、少し小ぶりです。江戸時代の羅漢像は全て手作り、一つ一つの違いがはっきりしています。

無文元選禅師に弟子入りした神様「半僧坊大権現」

最も奥にあるのが「半僧坊真殿」です。

半僧坊大権現は、無文元選禅師に弟子入りした山の神様です。神だけど修行を経て半分僧になったので、半僧坊という名前になりました。

見た目は鼻が天狗のように高く、目はぎょっとするほど大きく、異人のような顔の神様ですが、半分僧なので袈裟を着ていると言われています。

半僧坊大権現の姿(方広寺パンフレットより)

なぜ神様が半僧坊となったかというと、これにも無文元選禅師が深く関わっています。

無文元選禅師が中国から帰国の際、船が沈没寸前になり、必死に観音経を唱えていると天狗のような異人が現れました。

その異人は、「私は禅師が正法を伝え広められるために、無事に故国に送り申します」と船を守り、無事博多まで送り届け姿を消したと言われています。

外からも参拝できる半僧坊真殿

その後、無文元選禅師が方広寺を開いた時に、再び同じ異人が現れ、「困った人を助けたい」と無文元選禅師に弟子入りしました。

無文元選禅師が亡くなった際には、「私はこの山を守り、このお寺を守り、世の人々の苦しみや災難を除きましょう」と言って山の中に消えたそうです。その異人の正体は山の神様だったと言われ、それ以降方広寺を守る大権現となりました。

真殿の中

方広寺・巨島教学部長:
半僧坊大権現の本殿である方広寺から、京都府の金閣寺、神奈川県の建長寺、埼玉県の平林寺など全国のお寺や、御嶽山にご分身がまつられています。火伏、厄難などを祈願できる大権現として、全国各地で信仰を集めています

お札とお守り

半僧坊大権現のご利益に預かりたい方は、拝観受付でお守りやお札が受けられます。

龍神の姿をした女神、椎河龍王のお札もあります。

御朱印も受付でお願いできます。

拝観受付で受けられるお札

羅漢たちのように話し合う姿勢、半僧坊が誓う災難や苦しみのない未来。無文元選禅師の教えを具現化しているのが方広寺です。

方広寺は、幕末の山岡鉄舟や勝海舟が無血開城を祈願したお寺でもあります。話し合いで誰も血を流すことがないよう災難を避け、無血開城を果した2人。

なぜ方広寺だったのか、今なら分かる筆者です。

■施設名 臨済宗方広寺派大本山 方広寺
■住所 浜松市浜名区引佐町奥山1577-1
■拝観時間 9:00~16:00
■問合せ 053-543-0003
■入山拝観料 大人500円 子供200円 
 ※2025年10月より大人700円・子供300円に改訂 

取材/麻衣子

【詳しく見る】方広寺のホームページ

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