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江角マキコの痛快コメディドラマ【ショムニ】主題歌はSURFACE「それじゃあバイバイ」

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1998年04月15日 フジテレビ系ドラマ「ショムニ」放送開始日

「ショムニ」の鮮烈なオープニング、オープニング曲はSURFACE


1998年、私は「音楽にナンパされる」という体験をした。それはドラマ『ショムニ』のオープニング。いつものように茶の間でボーッとしていたら、テレビから、私に向かって駆け寄ってきたのだ、「♪ダ・ダダンダン、スッチャチャチャッチャン!」というイントロが! そこから畳み掛けるように、「♪虫も殺さぬ顔してーッ、キツイ事を平気で言―ぅ」

調子の良いヴォーカルにガッと腕を掴まれた(気がした)。オープニング曲はSURFACEの「それじゃあバイバイ」。弾むようなリズムとチャラい声は、絶妙に聴き心地がよかった。当時江角マキコに特に興味もなくドラマもノーマークだったが、私はまんまと彼らの音楽に誘われ、テレビ画面に注目することになったのである。

オープニング映像は、商社ビルを歩く会社員、もしくは来客の目線で、カメラワークが進んでいく。江角マキコや京野ことみといった主要キャストたちと通路やエレベーターですれ違いながら、カメラはずんずんと会社の下の階へと進んでいき、最後には、くたびれた森本レオ(課長役)に遭遇し、会社の一番奥にある “庶務二課” までたどり着く。

そのまま入るのかと思いきや、扉は閉められてしまう。そして私をナンパしたSURFACEの歌も、調子のいいまま、「♪それじゃあバーイバーイバーイ」という歌詞で終わってしまった。

オイオイ、ここまで引っ張っておいてバイバイはないだろう! 私は引っ込みがつかなくなり、そのままドラマを観たのだった。それがすこぶる面白く、2003年の『ショムニ FINAL』まで、スペシャルを含め、全シリーズ見続けることになった。このオープニングは今も鮮烈に覚えている。SURFACEの歌パワー、おそるべしである。

出世やスキルアップとは逆のベクトルで描かれた幸せ


『ショムニ』のストーリーは、満帆商事株式会社で「女子社員の墓場」「会社の掃き溜め」と呼ばれる総務部庶務二課に所属する6人が、時にだらだらしつつ、事件に巻き込まれつつ、自分らしく伸び伸びと会社で過ごす―― 。そんな物語である。ざっくりと言い過ぎの気もするが、そうなのである。

お仕事ドラマではあるが、出世やスキルアップとはむしろ逆のベクトルで幸せを描いていた。リーダーシップ、予知能力、知能、色気、情報収集など、それぞれ個性豊かだしスペックは高いのだが、それは自分の楽しみのために活かす。仕事は、今日やる業務をするだけでOK、という感じだ。江角マキコ演じる坪井千夏が脚立を軽々と抱え、蛍光灯をドヤ顔で変えていく姿は、ひたすら清々しい。

ⓒ共同テレビジョン / 原作 安田弘之「ショムニ」(株式会社KADOKAWA)

このドラマが放送された1998年は、まさに日本経済は底の底。1991年以来のバブル景気の崩壊で生じた様々な問題が十分に処理されないまま時が過ぎ、様々な業種が減収減益、日本列島が総不況に陥っていた。世の中切羽つまり、自殺者も増えていたころだ。

だからこそ、努力も仕事も大事だが、自分の身や心をすり減らすのは違う、と言ってくれるこのドラマは本当に爽快だった。同時期、不良教師鬼塚が暴れまわるドラマ『GTO』がブームを起こしていたのもまさに同じ理由だろう。

タイトスカートの仁王立ちは、生命力のアンテナ


「ショムニ」のメンバーも、リストラ対象者という設定だったが、彼女たちは堂々、そりゃもうしなやかに生活を楽しんでいた。タイトスカートの仁王立ちは、生命力のアンテナみたい。坪井千夏の名言に、こんな言葉がある。

「地球は誰のためにまわってると思う? 自分のためだよ!」

そしてSURFACEも「それじゃあバイバイ」で歌う。

「♪自分らしく生きてますか」

私はポンポンと肩を叩かれた気分になった。そして、アップアップしていた呼吸が楽になったのだ。

SURFACEの持つ “絶妙な距離感”


SURFACEは、ヴォーカルの椎名慶治とギターの永谷喬夫によるユニット。彼らの楽曲の魅力は、「調子に乗っているけどやさしくていいヤツと会話してる」感である。

ダジャレで励ましてくれる「ゴーイング my 上へ」や、一緒に愚痴を言って “お互い、もがこうな” と握手してくれるような「なにしてんの」は、特にいつ聴いても心のそばにいてくれる超名曲。浮かれているようで、実は周りをよく見ているやさしい主人公がありありと想像できるのだ。

飲み会とかで輪に入れない人を見つけると「ねえねえ、そこ空いてる?」とか言いつつスッと隣に座り、なにげない話をする。そして、話が弾んでくると「自分むっちゃオモロイやん」とみんなに紹介してくれる、という気配りが無意識的にできる “ナチュラルボーン・エエ奴” が!

パンチのある声とスコーンと明るいメロディが、絶妙な押しつけがましくないバランスを作り、とてもラクチンにエールが受け止められる感じ。彼らの楽曲がドラマの主題歌として最高に相性がいいのもよくわかる。

SURFACEのデビューは「ショムニ」放送と同じなので、今年25周年を迎えているはず。公式サイトを訪れてみると、やはり! 思わずこちらまで口角が上がってしまうような、2人の最高の笑顔がデデンと出てきた。SURFACE 25th Anniversary Live TOUR のタイトルは「It’s OK!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」。この「!」の多さ、もしかして…… とカウントしたら、やっぱり25個だった。

なにしてんの! と突っ込みたくなるが、やりたい放題で楽しそうだ。ああ、やっぱりこの浮かれ具合、嫌いじゃない。悩んだって、凹んだって、浮かれたってOK。そんな自分が主役と思い出させてくれるから。

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