ペアローンってどんなローン?メリット・デメリットや注意点を専門家にインタビュー!
家づくりをする際に重要となるのが、ローンの組み方。無理のない範囲で返済計画を立てることが、安心して新居で暮らすことができるカギになります。
今回は、ローンの中でも「ペアローン」に注目。ローンに詳しい専門家へ、ペアローンで注意したいことなどを取材してみました。ペアローンを考えている方や、どんなローンにすればよいか分からない方はぜひ参考にしてみてくださいね!
お話を伺った方:
神野 裕太さん
熊本銀行 営業推進部 総合営業支援グループ
保有資格:FP2級、簿記2級、ITパスポート、SDGs・ESG金融
ペアローンとは
最近よく聞く「ペアローン」という言葉。そもそも通常のローンとどのような違いがあるのでしょうか。また、ペアローンと類似している「収入合算」との違いも併せてお聞きしました。
ペアローンと通常のローン、何が違うの?
ーペアローンとはどんなローンを指しますか?
ペアローンとは、ご夫婦や親子などで住宅ローンを2本に分けて借り入れるローンを指します。通常のローンでは借り入れをする方は1人となり、1本でのローンです。しかしペアローンでは、借り入れる方を2人に増やすことができます。
ー4000万円の借り入れであれば、2000万円ずつで返済を分けるというイメージでしょうか?
たとえば夫婦であるAさんとBさんが借り入れるとしましょう。双方同じような収入の場合、Aさんが2000万円の債務者でBさんが連帯保証人、もう一方はBさんが2000万円の債務者でAさんが連帯保証人という債務形態にて借入できます。
ーお互いが債務者であり、連帯保証人でもあるのですね。借り入れる金額は双方で偏りがあってもよいでしょうか?
構いません。割合を自由に設定できますので、たとえばAさんのほうが収入が多くBさんのほうが少ない場合で、団体信用生命保険の保障額を収入の割合に合わせたいという要望があれば、Aさんが3000万・Bさんが1000万と借入額に傾斜を付けることもできます。
収入合算との違い
ーペアローンと似た言葉に「収入合算」というものもありますが、どういった点が異なるのでしょうか?
ペアローンは2人が債務者となって借り入れるため2本のローンとなる一方、収入合算の場合はあくまで1本のローンとなります。
ー1本のローンということは、通常のローンと変わらないのでしょうか?
いえ。収入合算とは住宅ローン債務者の年収に、配偶者や親・子の年収を合わせることを指します。債務者の方お一人の年収では借り入れが難しい場合、収入合算を用いることで収入面で住宅ローンの審査を有利に進めることが可能です。
収入合算の場合、1本のローンを「連帯債務」もしくは「主債務者/連帯保証人」という債務形態で借り入れることになります。ペアローンでは2本のローンを「主債務者/連帯保証人」の組み合わせで借り入れるため、この点が大きな違いとなります。
ーそのほか、双方での違いは?
団体信用生命保険の掛け方が大きく異なります。ペアローンを希望される方の多くは、「ローンを借り入れる2人が各々で団体信用生命保険に入りたい」という思いを持っています。収入合算の場合は債務者1人にしか団体信用生命保険を掛けられません。
一方で、ペアローンの場合は返済用の口座も2つに分かれるため、管理が面倒なケースもあります。どちらか一方の返済が滞ったら双方の返済履歴に良くない情報が残るというリスクもありますね。
ペアローンを組むメリット
ペアローンと収入合算の違いを学んだところで、ペアローンのメリットについても確認していきましょう。ペアローンを組むことで生じるメリットは主に4つあります。
借入金額を増やせる可能性が高くなる
ーペアローンを組む際のメリットとして、まず何が挙げられますか?
1人の収入で住宅ローンを申し込むよりも、借入金額を増やせることです。Aさん・Bさんの収入を合算して審査できるため、1人の収入では手が届かなかった借入金額でも2人の収入を合算することで借入申込が可能になります。最近は土地や建物などの価格高騰により、夫婦もしくは親子で借りるというケースが増えている印象です。
住宅ローン控除を2人で受けられる
ー控除にも影響するのだとか。
はい。Aさんのみが債務者になっている単独債務の場合、Aさん以外の人が住宅ローン控除を受けることはできません。しかしペアローンではローンが2本になるため、債務者1人1人で住宅ローン控除を受けられます。詳細は所管の税務署や税理士にお尋ねください。
団体信用生命保険の保障内容を2人で受けられる
ー減税制度などの部分で恩恵を受けられるのですね。
それだけでなく、住宅ローンに欠かせない保険についても、保障内容を2人分受けられます。その最たる例が、団体信用生命保険です。
ー団体信用生命保険(以下団信)とは何ですか?
簡単に言うと、ローンの債務者に万が一のことがあった場合に残りのローン残高を0にするという保険のことです。通常は住宅ローンとセットで加入するもので、所定のがんにり患したら住宅ローンの残高が0になる「がん団信」など複数の種類があります。
たとえば4000万円の借り入れで、AさんとBさんそれぞれ2000万円で借り入れるとします。Aさんが亡くなった際には、Aさんの借り入れ分のローン残高が0円になります。
ーBさん負担分の残り2000万円分は保障を受けないのですね。
そこがメリットでもあり、デメリットでもありますね。団信は保障内容が手厚いものも多くあるため、要望に応じた割合で借入額および団体信用生命保険の保障を分け、リスクを分散できるというメリットがあります。
金利の種類を分けて借りられる
ーそのほか何かありますか?
ペアローン特有のものではありませんが、金利の種類を分けて借入できます。Aさんは変動金利、Bさんは固定金利でそれぞれ借り入れることが可能なため、柔軟に対応できます。
ペアローンを組むデメリット
ペアローンを組むことで、借り入れる金額を上げたり団信やローン控除の点でもメリットがあると分かりましたね。しかしペアローンを組む際には、いくつかのデメリットやリスクもあります。しっかり押さえておきましょう。
団体信用生命保険の保障が分かれてしまうこと
ーペアローンを組む際のデメリットを教えてください。
先ほども挙げたように、団信が分かれてしまうことです。AさんとBさん双方で借り入れてどちらか片方に万一のことがあっても、団体信用生命保険の保障で残高が0円となるのは片方のみのローンです。そのため万一のことがあっても、1人だけで返済を続けられるかどうかは見極める必要があります。
ー保険を分けるメリットでもあり、デメリットでもある部分ですね。
まさしくそうですね。このような特性があるため、借り入れる2人の年収に偏りがある場合、ペアローンで保険を分けるメリットはあまりありません。ペアローンで組む場合は、2人でローン返済を行う「2馬力」でなく「1馬力」になったとしても返済できるイメージをできるかどうか?がきわめて重要になります。
事務手数料や登記費用が2人分かかること
ーローンを借り入れる手続きなども2人分になるのですか?
2人分の住宅ローンを組むため、事務手数料や登記費用なども2人分かかります。どちらの費用も2倍かかるかどうかは金融機関によって異なるためケースバイケースです。
離婚した際のリスクがある
ーそのほかペアローンを組む際に気を付けておいた方がよいことはありますか?
注意しなければいけないのが、離婚したケースです。今後のローン返済をどうするか協議しないといけないことが多くなるため、注意が必要です。
たとえば2000万円ずつ借り入れているAさんとBさんが離婚した場合、Aさんは繰り上げ返済で2000万円を完済したとしましょう。その場合、Bさんのローンについて何も責任を負わないで済むかというと、そうではありません。AさんはBさんの連帯保証人になっているため、万が一Bさんがローンの支払いをできなくなった場合、Aさんが代わりに返済しないといけない事態にもなりえます。これがペアローンならではの「2人でローンを返す」という仕組み故のリスクと言えるでしょう。
ペアローンがおすすめなケースは?
ペアローンには多くのメリットがある一方、デメリットや大きなリスクがあることも分かりました。それでは、メリット・デメリットを踏まえた上でどのようなケースではペアローンがおすすめになるのでしょうか。
手厚い保障を2人で分けたい方
ーペアローンがおすすめなケースを教えてください。
住宅ローンを双方で借り入れ、手厚い保障を双方で分けたい方に向いています。またリスク分散の観点から、双方が同水準の収入であるケースが良いでしょう。仮にAさんは年収が多く、Bさんはそこまで多くないという場合は、収入合算で住宅ローンを1本で借入し、収入が多いAさん1人に団体信用生命保険をかけられる方が多いです。
金利上昇リスクを避けたい方
また他のリスク分散として、金利の種類を変えられるのも大きなポイントです。「ローンをまるまる固定金利で借りるのは金利の負担が大きいため避けたいが、すべて変動金利にすることで今後の金利上昇が怖い」というケースでは、ペアローンが向いています。
ローンを組むタイミングで、保険の見直しも行うと〇
ーローンを組む際は、たくさんの可能性を考える必要があるのですね!
くまもとローンセンター所属のファイナンシャルプランナー・徳永富士子(とくなが・ふじこ)さん
そうですね。住宅ローンは家族のお財布にとって大きなターニングポイント。住宅ローンに付随する団体信用生命保険に新規加入することで、既加入の生命保険やがん保険等も含めた保障内容のバランスが大きく変わります。保障内容のリバランスにより、支払保険料を軽減しつつ保障内容を適切な形にできるケースも多いため、これを機に保険を見直す…という方も多い印象です。当行ではファイナンシャルプランナーという保険のスペシャリストが在籍していて保険についてお客様はなんでも気軽に相談できるのですが、ペアローンの説明と合わせて保険について話を聞きたい!という方も多くいらっしゃいます。
たくさんの「もしも」を想定しながら、ご家族に合う選択が出来ると良いですね。
まとめ
今回は、ペアローンのメリット・デメリットやペアローンを組んだ方が良いケースなどをご紹介しました!ローンの組み方に正解はなく、家族ごとに大きく異なります。家族で話し合い、時には専門家に相談しながら、納得のいく返済計画を立てていくことが大切ですね。
※2024年5月現在の内容です。