ライバル不在だからこそ独創性はさらに高まった、ハーレーダビッドソンの1960年代から現在まで
1960年代から徐々に頭角を現してきたのが、安価で高性能な日本車だ。そんな中、ハーレーダビッドソンはどんな歩みを見せたのか。唯一のライバル「インディアン」との違いにもフィーチャーしよう。
巨大メーカーへと成長したハーレーダビッドソン
アメリカには、かつてさまざまなバイクメーカーが存在したが、ハーレーほど巨大になった企業はない。それは1903年に第1号車を世に送り出して以降、1905年に早くもレースに参戦して性能の高さをアピールしたほか、ディーラー網を積極的に構築。そして1909年にメーカーとして初めてスペアパーツを販売するなど、サービス面も強化。加えて、米軍とのパイプを構築し、第1次世界大戦時に2万6000台、第2次世界大戦時には約9万台を納入。そうして巨大企業へと発展してきた。
ライバルとしては1901年に創業した「インディアン」が挙げられるが、最盛時の1940年代こそ世界最大規模の3000人が働いていたが、ハーレーより高級車だったことが災いし、自動車に取って代わるように販売台数が減少、1959年に会社を解散した。これ以降、ハーレーは黄金期を迎えるが、高性能な海外製バイクの台頭で大ピンチに。しかし、アメリカで進化してきたからこその独創性、そして国の助けもあって危機を乗り越えている。
【1958年~】「キング・オブ・ハイウェイ」といわれた黄金期
それまでのリジッドフレームに代わってリアにもサスを備えた「FLハイドラグライド」が登場。操縦性が飛躍的に向上したほか、インディアンの消滅に伴って、ツートーンの豪華なカラーやホワイトウォールタイヤなどで高級感をアップさせたのだ。
【1966年~】新世代エンジンを搭載し巻き返しを図った
1960年代から徐々に頭角を現してきたのが、安価で高性能な日本車だ。そこですでに型遅れ感のあったエンジンを刷新。性能はもちろん耐久性や整備性にも優れた「ショベルヘッド」を投入するも爆発的ヒットには至らなかった。
他メーカーに対抗するため、なんと国がテコ入れ!!
ハーレーもヒット作を生み出すも、当時売れまくっていた日本車には敵わず、1983年にレーガン大統領は700㏄を超える輸入バイクに対して45%の関税を課した。ハーレー社は国から手厚く守られていたのだ。
1977 XLCR
1977 FXSローライダー
唯一のライバル、「インディアン」は何が違う!?
INDIAN 1939 CHIEF1200
凝ったタンクデカールや金色のライン、そして前後フェンダーやチェーンガードの造形など、下の同年代のハーレーと比べてみると、いかにインディアンが豪華だったかがわかる。いわば“高級であること”が個性だったのだ。
インディアンの操作方法は独特で、右側にシフトレバーを備えているほか、アクセル操作は左側で行う。タンクは、ガソリンとエンジンオイルが入るようになっていた。
インディアンはもちろん、ハーレーも当初は吸気をOHV、排気をサイドバルブ方式とした「オホッツバルブ(Fヘッド)」を採用していたが、インディアンはハーレーよりも10年も早くサイドバルブエンジンを採用。これは当時ヨーロッパの数々のメーカーが採用していた方式で、そのエンジンを参考に開発したのだ。
フロントに「ガーターフォーク」を採用していることが特徴。フェンダー上部に装備された何枚もの黒い板がスプリングである。
圧巻はヘッドライト上に装備されたホーン。ネイティブアメリカンの顔が立体的にデザインされているのだ。
H-D 1939 EL
インディアンと比べるとかなりシンプルなデザインに感じるが、サイドバルブ全盛期にあって、OHVエンジンを採用するなど、性能面では一歩先を行っていたのがハーレー。上のサイドバルブと比較するとエンジンまわりの迫力がわかる。
オーバーヘッドバルブ(OHV)方式をいち早く量産化し、1936年に登場した「ナックルヘッド」エンジン。サイドバルブの採用ではインディアンに先を越されたため、それを帳消しにするほどのインパクトある進化が求められていたのかもしれない。エンジンまわりの密度がギュウギュウに詰まっていて、見るからに高性能っぽさにあふれている。
左側にシフトレバー、アクセルは右側と操作方法は標準的。オイルタンクをシート下に配置し、タンクにはガソリンのみが入る。
フロントには「スプリンガーフォーク」を装備。横にあるダイヤルによってバネの動きを制御する、摩擦式のダンパーを採用。
ライバルメーカーの復活でレースに注目が集まっている!?
2006年にインディアンが新生し、最近ではその勢いを増しているのはご存じだろう。2020年から始まった「キング・オブ・ザ・バガーズ」というレースに、ハーレーは「ロードグライド」、インディアンは「チャレンジャー」という、文字通りライバルモデル同士でガチンコ勝負を繰り広げ、ファンたちを熱くさせているのだ。