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世界的にも知名度の高い名作である葛飾北斎「冨嶽三十六景」の全46図に加え、若年期の版画作品などが一堂に会する「葛飾北斎 冨嶽三十六景」が2025年7月26日（土）～8月24日（日）、東京都渋谷区の『太田記念美術館』で開催される。 TOP画像＝葛飾北斎「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」

全46図に描かれた多彩な富士

葛飾北斎の代表作にして、浮世絵の代名詞ともいえる「冨嶽三十六景」は、現在もなお人々を魅了し続けている。このシリーズ全46図に加え、珍しい校合摺（きょうごうずり）や後摺（あとずり）、また同作に着想を与えた『北斎漫画』や北斎の若年期の版画作品、歌川広重や歌川国芳らの関連作品など、幅広い関連作品もあわせて展示される。

ダイナミックな波が印象的な「神奈川沖浪裏」や「凱風快晴」「山下白雨」などいわゆる「三役」をはじめ、奇抜な視点で桶の中から富士をとらえた「尾州不二見原」、吹き上がる突風を巧みに描いた「駿州江尻」など、北斎の斬新な発想と多彩な構図を堪能できる全46図が勢ぞろいする。

上席学芸員の渡邉晃さんは、「全46点の一挙公開は当館では約8年ぶりとなりますので、世界的な名作をこの機会にじっくりお楽しみください。また本展では豊富な現地写真や地形図と一緒に作品を展示します。鑑賞後に聖地巡礼をしてみるのも楽しいかも知れません」と見どころを語る。

地形から読み解く「冨嶽三十六景」や『北斎漫画』も

北斎が「冨嶽三十六景」を描く際、その構図に大きな影響を与えたと考えられるのが、描かれた場所の地形である。なかでも注目すべきは、「高低差」と「水辺」。多くの作品で、台地や山地の縁（きわ）、あるいは川や海などの水辺越しに富士をとらえており、地形が視点や構図へ巧みに生かされている。現地の写真や地形図を交えて作品を検証することで、一見するだけでは気づきにくい北斎の工夫に迫る。

また、北斎が勝川春朗を名乗っていた若い頃に手掛けた名所絵も紹介。有名な『北斎漫画』でも「冨嶽三十六景」のもととなる図をいくつか描いており、北斎が70代で描いた同作はその集大成と言える。北斎自身が描いた先行作や、「冨嶽三十六景」と同じ名所を描いた歌川広重や歌川国芳の作品など、関連資料も合わせて展覧し、北斎作品の楽しみ方が増幅する構成となっている。

学芸員によるスライドトークも開催

7月31日（木）・8月8日（金）・19日（火）、各回10時50分～約30分程度、展覧会の見どころを担当学芸員が解説するスライドトークが館内で開催される。定員50名、無料（要当日入館チケット）、受付は当日10時30分から美術館受付にて整理券を配布。

開催概要

「葛飾北斎 冨嶽三十六景」

開催期間：2025年7月26日（土）～8月24日（日）
開催時間：10:30～17:30（入館は～17:00）
休館日：月・8月12日（8月11日は開館）
会場：太田記念美術館（東京都渋谷区神宮前1-10-10）
アクセス：JR山手線原宿駅から徒歩5分、地下鉄千代田線・副都心線明治神宮前駅から徒歩3分
入場料：一般1200円、高校・大学生800円、中学生以下無料
※障害者手帳を持参で本人と付き添い1名100円引き。

【問い合わせ先】
ハローダイヤル☏050-5541-8600
公式HP　https://www.ukiyoe-ota-muse.jp/hirezakieiho/

取材・文＝前田真紀　画像提供＝太田記念美術館

前田真紀
ライター
『散歩の達人』『ＪＲ時刻表』ほか雑誌・Webで旅・グルメ・イベントなどさまざまなテーマで取材・執筆。10年以上住んだ栃木県那須塩原界隈のおいしいものや作家さんなどを紹介するブログ「那須・塩原いいとこ、みっけ」を運営。美術に興味があり、美術評論家で東京藝術大学教授・布施英利氏の「布施アカデミア」受講4年目に突入。