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パパ友とのおしゃべりは子育てがしんどい父親の心を軽くする 「パパ友」の作り方|清田隆之

りっすん

育児や仕事の悩み、ストレスなど「しんどい気持ち」を周囲に相談できず、一人で抱えていませんか。

今の父親たちに必要なのはゴールやアジェンダのない「おしゃべり」なのではないか。そう語るのは、自身も文筆業をしながら5歳の双子を育てており、日々「子育てと仕事の両立」の大変さを実感しているという清田隆之さん。

パパ同士でおしゃべりすることのメリットや、“パパ友"をつくるコツなどを教えていただきました。

子育ても仕事もしんどい父親には「おしゃべり」が足りていない?

💡POINT
•男性は愚痴や弱音を他者に吐き出すのが苦手?
•仕事と育児の両立に悩む男性には「おしゃべり」が効くかも

私は現在、フリーランスの文筆業として在宅で仕事をしながら、5歳の双子育児に日々奮闘しています。

双子たちのケンカ対応、いまだに続く夜泣き、終わらない締め切り……どちらかが風邪を引けば大抵リレーで体調を崩し、仕事が1週間ストップすることもざらだし、来年度からは小学生になるため、お金や教育のことなどいろいろ不安も尽きません。

妻と協力してなんとか日々を回していますが、常に気が休まらない感覚があります

育児や仕事のストレスとどう付き合っていくか──。

そのヒントになると私が感じているのが、「おしゃべり」という営みです。「おしゃべり」とはつまり思考や感情を言葉にし、誰かと共有すること

私は「桃山商事」というユニットの一員として男女1500人以上のお悩みや身の上話に耳を傾けてきた経験から、「おしゃべり」を通じて日々のストレスを発散するのは女性の方が上手な印象を受けていました。

一方で男性は「強くあらねばならない」といった規範意識の影響か、女性に比べて愚痴をこぼしたり弱音を吐いたりするのがあまり得意ではないように感じていました。

仕事や趣味の話はするけれど、「今こんな悩みを抱えてて」「さっきこんな嫌なことがあって」みたいな話をしようと思うと、なぜか途端に切り出しづらくなる。その結果「気にし過ぎちゃだめだ」「頑張って乗り切らねば」と一人で抱え込んでさらに苦しくなっていく……そんな負のループに陥った経験が、少なからぬ男性にあるんじゃないかと想像します。

かく言う私もそんな一人でしたが、「育児と仕事の両立に悩む我々男性がいま最も必要としているのは、もしかしたら『おしゃべり』かもしれない……」と考えるようになり、育児中の友達とLINEで愚痴をこぼし合ったり、友人や仕事仲間とお茶をしたりと、男同士でおしゃべりする機会を意識的に増やしてきました。

妻や女友達には話せない愚痴や弱音も「パパ友」となら話しやすい

💡POINT
•令和の今「育児をする男性」は珍しい存在ではない
  •パパ友同士だからこそ、自分を棚に上げ遠慮なく悩みが共有できる


共感ベースのコミュニケーションには不思議な心地よさがあり、パパ同士だからこそ共有しやすい悩みも少なくありません。それで「これなら子育ての悩みも楽しく分かち合えるかも」と考え、ここ数年は「パパ会」的な集いなんかもたびたび開催しています。

例えば保育園のクラスで顔見知りになったパパたちとの飲み会、自治体と一緒に企画した父親たちのおしゃべり会、桃山商事メンバーの森田と一緒に育児トークするPodcast番組『オトコの子育てよももやまばなし』……。

特に印象的だったのが、2024年3月に港区の男女共同参画センターで開催した「おしゃべりから始める令和のNEOパパ会」です。

3回にわたっておしゃべりを重ねた連続講座には、20代から50代まで幅広い世代の父親たちが集まり、下記のような悩みやモヤモヤを共有してくれました。


•平日は仕事、休日は子どもの世話で自分の時間が全くない
•妻のように「ワンオペ」を回すことができず、無力感を感じる
•妻と子どもの絆が固く、“家庭内仲間外れ”の瞬間も多くて孤独
•ローンや習い事、学費などのお金の不安
•家族との時間を大事にするほど仕事が遅れる焦りを感じる
•子どもにイライラして自己嫌悪に陥る
•子どもとどう遊んだら良いか分からず、ついついスマホに頼ってしまう 
•家族との時間を大事にしたいが、会社が定時に帰りづらい&休みも取りづらい空気


令和の現在、父親の育児参加は確実に進んでいます。育休を取る男性も増えているし、CMやドラマなどでも「育児するパパ」はもはや珍しいものではありません

一方で、「男は仕事」「稼いで家族を養うべし」という家父長的な価値観や、それを基準に構築された社会のシステムは依然として根強く、仕事と家庭の間で「板ばさみ」になっている

そして父親にも悩みや苦しみがあるのは事実だが、それは母親たちがとうの昔に通った道である可能性が高いため、妻や女友達にはなんとなく愚痴をこぼしづらい......。

そんな状況にあって「男性同士で、ある程度自分を棚に上げ、遠慮なく愚痴や悩みをこぼせること」こそ「パパ同士のおしゃべり」の強みではないか。さまざまな場で語り合いを重ねながら、私はそんな考えに行き着きました。

パパ友を作るときは「線の関係性」と「点の関係性」を意識する

💡POINT
•子持ちの友人に声を掛ける、イベントに参加するなどいくつかの方法でパパ友を作ってみる
  •1対1で深い話ができる「線」の関係性、複数人でゆるく愚痴をこぼせる「点」の関係性の重要性


弱音を吐く、ちゃんと受け止めてもらえる、共感する、ダメな部分も笑い合える──そんな時間を持つだけで心はずいぶんと軽くなるものです。

では「おしゃべり相手=パパ友」はどうやって作ることができるでしょうか。例えば以下のようなアプローチが有効ではないかと考えています。


•友人や趣味の仲間の中で、育児フェーズが近い人に声をかけてみる
•保育園や幼稚園の送り迎えで顔を合わせる人と立ち話をしてみる
•職場の中で、育児中のパパ同士のネットワークを作ってみる
•自治体やNPOが実施する父親向けの講座やイベントに参加してみる
•SNSで育児関連の発信をし、つながりやコミュニティを形成する


「共感」とは何かが重なり合う地点で発生するものなので、「接点」や「共通点」をいかに探すかというのが基本的な発想になるかと思います。

元からの友達、趣味の仲間、職場の同僚。生活圏や育児フェーズが近しいというのも立派な接点だし、子育て広場や公的な施設など、自治体が場作りを行っているケースも多々あるはず。また、SNSには育児関連の話題が常時飛び交っており、つながりを作るツールとしても利用できます

個人的にオススメなのは、「線の関係性」と「点の関係性」という2つのスタイルを持つこと。


1対1でじっくり話せて、長期的に付き合い続けていくのが「線の関係性」のイメージです。

お互いの子どもの成長や家庭の状況などを定期的に共有しながら、考え方や悩みの違いにも触れられる。安心して話せる相手が一人でもいれば、気持ちを整理する支えになります

一方で「点の関係性」とは、複数人で集まり、ゆるく愚痴をこぼし合うようなイメージです。

初対面や一期一会の関係だからこそ得られる良さも確実にあるので、「深く分かり合う」よりも「気軽に話す」ことを念頭に、適度に気を使い合いながら楽しくおしゃべりできる場もあるといいんじゃないでしょうか。

先に紹介した「NEOパパ会」のような場は「点の関係」に近いものですが、そこから連絡先を交換して「線の関係」に発展していく例もあり、きっかけ作りとしてもオススメです。

おしゃべりにはゴールもアジェンダもいらない

💡POINT
•深い話をする必要はなし。その場の思いつきで話をすることに意味がある
  •「自分だけじゃないんだ」と思える瞬間がおしゃべりの醍醐味

「線の関係性」と「点の関係性」──いずれにしても、大事なのは「深い話をしなきゃ」と気負わず、「最近どう?」「こんなことがあってさ」くらいの、ささいな会話から関係性を育てていくことだと思います。

育児をめぐるおしゃべりにはゴールもアジェンダもありません。むしろ目的もなく、その場の思いつきで話をすることに意味があるのではないか……。

漠然とした不安やモヤモヤを、ぽつぽつ語りながら誰かと共有していくことで、その輪郭が浮かび上がってきたり、「自分だけじゃないんだ」と思えたりする瞬間が生まれる。これこそが私の感じているおしゃべりの醍醐味(だいごみ)です。

こう書くと他愛ない営みに感じますが、男性にとってはまだまだ馴染(なじ)みのない文化かもしれません。でも、それが心の余白を生み、自分自身を俯瞰(ふかん)するきっかけにもなる。

「育児の話から始まり、気づけば仕事の悩みまで話していた」みたいな脱線も大いにありだと思います。仕事で求められる生産性からも、ジェンダー的な規範意識からも、一時的に抜け出して「今現在」の素直な気持ちを言葉にしていく──

もし言葉にならないモヤモヤを抱えている方がいたら、ぜひトライしてみてはいかがでしょうか。パパ同士のおしゃべりには、想像以上の癒やしと発見が詰まっているかもしれません。

編集:はてな編集部

著者:清田隆之さん

文筆家、「桃山商事」代表。1980年、東京都生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。ジェンダー、恋愛、人間関係、カルチャーなどをテーマにさまざまな媒体で執筆。著書に『自慢話でも武勇伝でもない「一般男性」の話から見えた生きづらさと男らしさのこと』(扶桑社)、『さよなら、俺たち』(スタンド・ブックス)、『おしゃべりから始める私たちのジェンダー入門』(朝日出版社)、『戻れないけど、生きるのだ 男らしさのゆくえ』(太田出版)など。

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