焚き上げに込める祈りと感謝 釜石・八雲神社どんと祭 子どもたちが餅つきで彩り
松明けの7日、正月飾りを焚(た)き上げる伝統行事「どんと祭」が釜石市八雲町の八雲神社(成瀬幸司宮司)で行われた。参道の石段の下に焚き上げ場が設けられ、朝早くから住民らが松飾りなどを持ち込んだ。午前7時過ぎに点火され、勢いよく炎が上がると、訪れた人たちは静かに手を合わせ、新しい年の多幸や平穏を祈った。
焚き上げ場のそばに立ち、世話役と火の監視役を務めたのは同神社神和会の氏子や地元の消防団第2分団の団員たち。周辺から歩いて訪れる人、車やタクシーで駆け付ける人たちから松飾りなどを受け取り、ビニール袋を取り除いて火の中に投じ続けた。
近くに住む佐々木静子さん(79)は「秋には80歳になるので、無事に一年を過ごせたらいい。百歳体操を続ける仲間とおしゃべりを楽しみたい」と穏やかに話した。
成瀬宮司によると、この伝統行事は「神様に一年間、守っていただいた感謝を伝える祭り」という。そして、「生かされていることに感謝し、全ての人のために幸せや平和を祈る場」でもある。「ありがとう」と手を合わせた後は、「陽気に邪気をはらう」のが習わし。同神社では拝礼を終えた人たちにあたたかい甘酒、つきたての餅を振る舞った。
餅つきは新型コロナウイルスの感染拡大の影響もあって、行うのは5年ぶり。以前から子どもたちが役目を担っていて、今回も“常連”の中妻子供の家保育園(海藤祐子園長、園児59人)の4、5歳児15人が往復1.5キロを歩いて訪れ、きねを振るった。「よいしょー」。元気なかけ声が周囲の笑顔を誘った。
梅島涼成君(6)は「楽しかった」と笑い、ご褒美のきな粉をまぶした餅をおいしそうに頬張った。春には小学生になり、「ドリルをがんばりたい」と期待を膨らませた。
にこやかに見守った第2分団の柳一成分団長(68)は「これからが始まり。災害が少ない一年であればいい」と願う。昨年は元日に能登半島地震が襲った。被害状況を伝える映像を目にして、東日本大震災での被害や復旧、復興の歩みを改めて思い起こされ、「地域を守る」気持ちが深まったという。能登地震の半年後に被災地に入ったというが、「何もできなかった」と心残りがある。そして、豪雨による被害も加わった現地を思い、「今年は奥能登に行き、できることをしたい」。何か、誰かを支える活動を続けていく。